「クプルムの花嫁」感想&評価(ネタバレ注意)~新潟県の燕三条地域を舞台に紡がれる鎚起銅器職人とギャルの婚約ストーリー~


 今回は「ハルタ」で連載中、寡黙な職人の青年とギャルの婚約生活を描いたラブストーリー「クプルムの花嫁」を紹介します。

 この作品は金属加工で有名な新潟県燕三条地域を舞台に、鎚起銅器職人の青年と婚約したギャルが立派な職人の妻となるべく奮闘する物語。

 ちなみにクプルムとはラテン語で「銅」を意味しています。

 柔らかく丁寧な描写と物語が非常に魅力的で、主人公二人の距離感に思わずニマニマしてしまう作品となっています。

「クプルムの花嫁」あらすじ

職人とギャルの婚約から始まる物語

 高校を卒業して大学生になったばかりのギャル・しいなは、ある日鎚起銅器職人の彼氏・富川修から「結婚しないか?」と告げられます。

 唐突なプロポーズと職人の妻となることの大変さに混乱し、思わず逃げ出してしまうしいな。

 修とそうした関係になるのはやぶさかではないものの、不安の方が先に立ってしまいます。

 一方の修も先走ってプロポーズしたものの、祖父の言葉を受け、まだまだ職人としては未熟で、結婚は早いと思い直していました。

 しかし今更プロポーズを撤回されるのは、しいなとしても納得がいかず、「婚約」という形で関係を進展させることに

 

 まだまだ自分が職人の妻となることに実感の湧かないしいなでしたが、修の祖父母や先輩で金槌職人の咲ちゃんたちに支えられながら、少しずつ成長し、修への想いを深めていくのでした。

(捕捉・解説)物語の舞台・新潟県燕三条地域と鎚起銅器

 新潟県燕三条地域とは、新潟県の「燕市」と「三条市」からなる地域で、古くから「金物の町」として知られています。

 特に有名なのが作業道具などの刃物と爪切り、そして鎚起銅器。

 昨今は実際に職人たちの技術を見学・体験する観光地としても賑わいを見せています。

 本作の主人公の一人・修が作る鎚起銅器は地域の名前をとって燕鎚起銅器とも呼ばれ、一枚の銅板を槌で叩いたり伸ばしたりして形をつくる銅器。

 江戸時代に燕地域が銅山で栄えたことがきっかけで起こった産業で、1981年には通商産業大臣から伝統的工芸品の指定を受けています。

 特に玉川堂さんという工房が有名だそうです。


「クプルムの花嫁」主な登場人物

しいな

 本作の主人公の一人にしてヒロイン。

 狐の尻尾のような色合いの金髪が特徴の天真爛漫なギャルで、現在大学一年生。

 かねてより鎚起銅器職人の富川修と付き合っていたが、プロポーズを受けて婚約者となる。

 礼儀作法にはやや難があるが、彼氏にデコ弁を差し入れるなど最低限の家事能力は備えている(ただし修の祖父母基準ではまだまだ)。

 人懐っこく誰からも愛される少女で、番台向きと評される。

富川修(とみがわしゅう)

 本作の主人公の一人である鎚起銅器職人の青年。

 黒髪無表情のさっぱりした雰囲気の持ち主で、年齢は20代前半(しいなと中高が被っていなかったことから、3歳以上年上であることは確か)。

 無口で黙々と銅を叩く様子から「妖怪銅叩き」と呼ばれている。

 4年前に事故で父親を亡くしており、父のような職人になることが目標。

 中々の天然で、朴訥そうに見えて大胆な愛情表現でしいなをドギマギさせる。

咲(さく)

 しいなの先輩で修の後輩にあたる女性。

 しいなからは「咲ちゃん先輩」と呼ばれ懐かれている。

 外見は黒髪ロングの大人っぽい女性だが、数年前までは髪を染めた典型的なギャルだった。

 現在は金槌職人として働いており、修の金槌を作ったのも彼女。

 しいなと仲が良すぎることで、昔から修は咲を苦手としている(というか敵視?)。

富川総一郎(とみがわそういちろう)

 修の祖父で鎚起銅器職人の師匠。

 白髪で強面の爺様で、見た目通り非常に頑固で厳しい。

 しいなのことは爺さんなりに気に入っているが、しいなからは無口なのとその見た目で怖がられている。

 甘党。

 妻の雪とは大恋愛で、当時東京銀座の六越百貨店で働いていた彼女に一目惚れし、初対面でお付き合いを申し込んだ。

富川雪(とみがわゆき)

 修の祖母。旧姓は井村。

 厳格な雰囲気の婆様で、しいなからは鬼ババと呼ばれ恐れられている。

 しいなのことは、職人の妻として色々足りないものを感じてはいるが、婆様なりに可愛がっている。

 というか、しいなを逃すと修は一生結婚できないんじゃないかと真剣に心配している。

 若い頃は美人。


「クプルムの花嫁」感想&評価

地元の空気感を丁寧に描いたほのぼのラブストーリー

 この作品はラブコメであると同時に「お仕事もの」で、鎚起銅器職人だけでなく、舞台となった新潟県燕三条地域の空気感までもが非常に丁寧に描かれた作品です。

 作中では方言や実在する店舗、地元の名産品お菓子なども登場しており、この地方の魅力がふんだんに描かれています。

 アニメ化とか人気に火が付けば聖地巡礼なんかもあり得るんじゃないでしょうか。

 作中で登場した「沼ネコ焼」という米粉を配合したお菓子なんかも美味しそうで、機会があれば是非一度食べてみたいですね。

 

 勿論、主人公のしいなと修も非常に初々しくてかわいくて良いのですが、それだけならどこにでもある単なるイチャイチャ話。

 地に足のついた暮らしの息吹、丁寧に描かれた空気感があるからこそ、より二人の生き方が魅力的に映る作品なんだろうなと感じます。

こんな人におすすめ

 男女年齢を問わずおすすめできる作品ですが、特に旅行好きの方にはおすすめです。

 何度も述べていますが、新潟県燕三条地域の雰囲気が非常に丁寧に描かれており、地元の魅力が作品全体から伝わってくる作品です。

 今後行ってみたい目的地に、新たな候補地が加わるのではないでしょうか。

 また、ほのぼのした日常ラブコメなので、日頃ストレスを感じて癒されたいなぁ、という方にもおすすめ。

 完璧に出来上がったカップルなので、非常に安心してストレスなく読むことができると思います。



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