「限界煩悩活劇オサム」感想&評価~読み切り「腐女子除霊師オサム」が連載化、作者は新人じゃない?~


 今回は「ジャンプ+」で好評連載中のギャグ漫画「限界煩悩活劇オサム」について紹介します。

 「限界煩悩活劇オサム」は「腐」の怨霊を祓うことに特化した腐女子陰キャオタク系除霊師・乾オサムの活躍(?)を描いた物語。

 除霊をテーマにしている割に暗い要素は欠片もなく、オタクとオタクが自分のクソデカ感情をぶつけ合う非常にコミカルな作品となっています。

 作品としてのクオリティが高く、読み切り掲載時には作者の経歴にも注目が集まっていました。

 本記事では「限界煩悩活劇オサム」のあらすじや主な登場人物の解説を交えつつ、その魅力を語ってまいります。

「限界煩悩活劇オサム」あらすじ(概要)

 「怨霊」それは荒ぶる感情の塊。

 この春から一人暮らしを始めたギャル系女子高生・春山カイカが住むアパートの一室では、ある女の荒ぶる魂が怨霊となって暴れていました。

 除霊師を頼んではみたものの、彼らは猛り狂う怨霊に匙を投げて逃亡。

 途方に暮れたカイカは、雑誌で自分と同じ高校の女生徒が除霊師として特集されている記事に目を止めます。

 除霊師の名は乾オサム。

 カイカはオサムに相談を持ち掛けますが、話してみるとオサムは凄腕除霊師とは思えない気弱な陰キャオタクでした。

 実際、オサムは自分が除霊師としては出来損ないで、対処できるのは「一部の特殊な怨霊」だけなので恐らく役に立てないと説明します。

 しかしカイカから怨霊が発している謎の言葉「ゲキメン」「バン」「ヒスバン」を聞いたオサムは態度を一変。

 自分がその怨霊を除霊することを決意します。

 実はオサムが除霊できるのは「腐女子」に代表される「腐」の怨霊。

 そして「ゲキメン」とはオサムが愛する少年漫画「撃叩メンカーバン」の愛称、「ヒスバン」とはその主人公・バンとライバル・ヒスイの妄想腐カップルの呼び名でした。

 要は腐女子は腐女子を知る、というやつですね。

 肝心の怨霊がオサムとは逆カプ者だったり、些細な(?)食い違いはあったものの、オサムは作品とキャラへの愛を拳と共に怨霊とぶつけ合い、見事除霊に成功。

 それが切っ掛けでオサムは霊媒体質のカイカと親しくなり、その後も様々な怨霊トラブルに巻き込まれていくことになります。

 ただし登場する怨霊が抱えた感情は非常に俗っぽく、

・ソシャゲガチャ
・推し作品布教
・公式の激エモ展開供給過多
 →供給不足
・新刊落ちそう

 ……まあ、要するにオタクのクソデカ感情が怨霊になって、オタクがワキャワキャ騒ぐだけのギャグマンガです。


「限界煩悩活劇オサム」主な登場人物

乾オサム(いぬいおさむ)

 本作の主人公であり、世にも珍しい「腐」の怨霊に特化した腐女子系除霊師。

 16歳女子高生で名前は漢字で書くと「乾収」。

 見た目は巨大なおさげ髪が特徴の小柄なチンチクリン少女。

 典型的な根暗陰キャオタクであり、人と話すのが苦手。

 ただし気を許した相手や自分の得意ジャンルに関しては途端に饒舌になるタイプの厄介オタ。

 今のお気に入り作品は「撃叩メンカーバン(通称:ゲキメン)」で、その主人公・バンとライバル・ヒスイの妄想腐カップル「ヒスバン」の信者。

 この世界での除霊は怨霊が何に怒っているのか聞き出す必要があるとされているが、オサムは基本的にコミュ障のため、ほとんどの怨霊とコミュニケーションが取れず、オタク系、特に「腐女子」の怨霊を祓うことに特化している。

 除霊スタイルは対腐女子霊専用除霊ナックル「カタライ」により、同じだけの怨念を拳にこめて殴り合うステゴロスタイル。

春山カイカ(はるやまかいか)

 オサムと同じ高校に通うギャル系女子高生でオサムの友達。

 所謂「非実在ギャル(=オタクに優しいギャル)」。

 ただしギャルという設定がまともに活かされているのは序盤だけで、途中からは単にコミュ力の高い明るい良い娘と化している。

 霊媒体質で怨霊絡みのトラブルに巻き込まれやすい。

 この作品のツッコミ役を一手に引き受けているが、オタク界隈の常識に欠けるため、妄想腐カップルの解釈について出版社に問い合わせをするという暴挙に出そうになったこともある。

坤みしん(ひつじさるみしん)

 オサムの幼馴染の除霊師。

 高飛車お嬢様系キャラで、普通の除霊師としてはオサムの何倍も優秀。

 「傀儡ぬい」なる”ぬいぐるみ”を操る術の使い手で、主にひつじのぬいぐるみを駆使して除霊を行う。

 オタクのオサムを見下し、反面教師にして幼い頃から厳しい修行を積んできた。

 そのため娯楽に対する免疫が薄く、作中ではオサムと怨霊の手によってオタク沼に沈められることになる。

天逆だんご(あまさかだんご)

 流浪の同人作家。

 オサムの同人オタクの師匠であり、オサムが腐の沼に沈む切っ掛けを作った女性(ただしオサムには元々素質があった)。

 伝説の同人サークルの作画担当で、その界隈ではかなり有名らしい。

 見た目はワイルドな雰囲気で、左目を前髪で隠した美女。

 その隠れた左目は「ヒトのカップリング妄想」を視ることができる。

雲居灯雁(くもいひかり)/蜘蛛子

 オサムやカイカと同じ高校に通う女子高生。

 蜘蛛子というHNで同人活動を行っている。

 初登場時は即売会の原稿を落としそうになり、生霊となってオサムたちの前に現れた。

 かなりのマイナーカップル推しで「美青年✖おじさん」好き。

 生身の姿はショートカットの美少女で、大人しくて人見知り。


「限界煩悩活劇オサム」作者「ゲタバ子」はどんな人?

 「限界煩悩活劇オサム」は、その作者「ゲタバ子」先生に関してもSNS上で話題になっていました。

 「ゲタバ子」先生の名前が初めて世に登場したのは「限界煩悩活劇オサム」の読み切り版「腐女子除霊師オサム」。

 普通に考えれば「ゲタバ子」先生はデビューしたての新人ということになります。

 しかし「腐女子除霊師オサム」は作品としてのクオリティがあまりに高く、とても商業誌経験のない新人とは思えない出来。

 早くからファンの間では「既にプロとして活躍していた作家が別名義で活動しているのでは?」との意見が根強く流れていました。

 その候補として名が挙がっているのが、同じ「ジャンプ+」で「とけだせ! みぞれちゃん」を連載していた「足袋はなお」先生。

 画風、作風はそっくりですし、ペンネームも「ゲタバ子」と「足袋はなお」で”履物”に関連。

 恐らく同一人物で間違いないとは思うのですが……今のところ公式からこれに関する反応はなく、真偽は不明。

 また、同一人物だとすると敢えて別名義で活動する理由も良く分かりません。

 媒体や作風、ジャンルを変えるのならまだ分かるのですが……単純に気分を一新したかった?

「限界煩悩活劇オサム」の感想(ここが面白い)

 「限界煩悩活劇オサム」は非常にオタク心に刺さる作品です。

 除霊師と名乗ってはいますが、やっていることはオタクとオタクのクソデカ感情のぶつけ合い。

 何というか、日頃我々がやっていることと大きな違いはありません(断言)。

 個人的に一番刺さったのは、第3話の「推し作品布教失敗の無念と絶望」の怨霊。

「トリアエズ10カンマデデイイカラーッ」

 まんま私がワールドトリガーで友人にやっていることですね。

 先日は妹の職場の同僚に怨霊と全く同じセリフ付きで「ワールドトリガー25巻セット+BBF」を送りつけてやりました(妹にクッソ怒られた)。

 きっと「ゲタバ子」先生もワ民なのでしょう。

 腐女子系のワードが結構出てきますが、腐女子でなくとも分かりやすく、その解説の言葉選びが非常に秀逸。

 「受け攻めの役割が逆」を「競馬で人が馬のせて走ったらもう別の競技ですよね」と解説されたのには、思わずうなってしまいました。

 ギャグ漫画ではありますが絵もキャラクターも可愛らしく、作品としてのクオリティも高水準。

 オタクであれば読んで損のない作品と言えるでしょう。



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