今回は週刊少年チャンピオンで不定期連載(?)された奇跡の問題作「水曜どうでしょう~大泉洋のホラ話~」を紹介いたします。
この作品はHTB(北海道TV)の人気バラエティ「水曜どうでしょう」内で語られた大泉洋のホラ話を漫画化したもので、ジャンルは分類不能、内容も正直意味不明(まあホラ話だし)。
大泉洋氏本人のリクエストにより超劇画調、体毛マシマシで描かれたそれは、もはや凡人には長時間直視困難な代物に仕上がっています。
どう説明すればいいのか非常に悩ましいのですが、本記事では作品紹介と併せて忌憚のない感想を述べさせていただきます。
「水曜どうでしょう~大泉洋のホラ話~」とは?
「水曜どうでしょう」とは(恐らく解説不要)
「水曜どうでしょう」とは、今や知らぬ人のいない人気俳優にしてエンターテイナー、大泉洋を全国区へと押し上げた北海道ローカルの伝説の深夜番組。
レギュラー放送は1996年から6年間に渡って放送され、以降も数年に一度のペースで新作が放送されています。
サイコロを振って行き先と手段を決定し、東京から北海道まで帰るという「サイコロの旅」シリーズが人気を博したことを切っ掛けに、極めて特殊な旅番組(旅以外もやっていますけど)として人気を博すこととなりました。
この番組の特徴は大きく二つ。
一つはメインキャストの一人、大泉洋が事前に行き先を全く知らされないまま(時に騙されたまま)日本各地・世界各地を連れ回されること。
大泉洋と言えば忌憚のない「ボヤキ」が特徴ですが、そのスタイルが醸成されたのはこの「水曜どうでしょう」の理不尽さあってのことでしょうね。
そしてもう一つは、ディレクター陣が撮影中もガンガン話に参加してくることです。
番組初期はまだしも、後半になると一番喋っているのがキャストじゃなくチーフディレクターということも珍しくありませんでした。
「喧嘩太鼓」「チャタレイ夫人との恋」など、番組中のホラ話を漫画化
「大泉洋のホラ話」というのは、そうした旅の中で大泉洋が口にした愚にもつかないホラ話を星野倖一郎先生が話を膨らませ漫画化したものです。
具体的にどんなホラ話を口にしたかと言うと、
・大泉洋は東映ニューフェイスで松方弘樹の同期。代表作は「喧嘩太鼓」。
・大泉洋は各地に女がいて、かつて未亡人のチャタレイ夫人と熱い恋に落ちた。
ちなみに、夫人とは何故か一心不乱に卵をぶつけあう。
・チューハイはオランダ人のチューハイムが江戸時代に長崎出島に持ち込み、伝わった。
・大泉洋の本名は「チンギス・洋・ハーン」。
モンゴルの家には「うずまき」と呼ばれる1000人のメイドがいる。
・大泉洋は登山家。かつて立山連峰に挑んだ。トロリーバスは危険。
・ヘミングウェイは「男と酒(原題:Men and Alcohol)」という作品を書いた。
・大泉洋は伯爵家出身で、ワニを飼っている(餌は小鹿)。
……改めて書くと意味わかんないですね(他にも色々ありますが書ききれない)。
大泉洋は番組中、移動中の間を持たせるために周囲から半ば強要される形でホラをふいていたわけですが、基本は一言二言適当なエピソードを口にするだけです。
それをこの「大泉洋のホラ話」では具体的な物語にアップデートし、荒々しさと体毛マシマシで漫画化しています。
当然主役は大泉洋。どうでしょう軍団の藤村さんは主に悪役、嬉野さんは老人役、ミスターは意味不明なオッサンとしてちょこちょこ出演しています。
第二巻には安田顕さんも人質として出演する完全新作ホラ話「チャンピオンロード」(いわゆる男塾系)も収録されていて、いっそう楽しめる内容となっていますよ。
「水曜どうでしょう~大泉洋のホラ話~」どうでしょう軍団
大泉洋
「水曜どうでしょう」におけるメインキャスト2人の内の1人。
番組中では主に「大泉君」「大泉さん」と呼ばれるが、ディレクターの藤村氏からは「スズムシ」「にょういずみにょう」などと呼ばれることもある。
今や押しも押されぬ全国区の人気俳優だが番組開始当初は大学生で、どちらかというとアシスタント的な立ち位置だった。
忌憚のないボヤキとトークセンスで爆発的な人気を博し、この番組を皮切りに本格的に俳優・タレントとしての活動を始める。
ただし人気となった今でも、どうでしょう班の中では一番の若手で、騙され弄られるというポジションには何ら変化がない。
鈴井貴之(ミスター)
「水曜どうでしょう」におけるメインキャスト2人の内の1人。
番組中では主に「ミスター」「ミスタさん」などと呼ばれているが、その由来は彼が「カントリーサインの旅」において「この番組を象徴する不運を引き起こす男」、つまり「ミスターどうでしょう」だと大泉洋が言い出したことにある。
別に長嶋茂雄氏の口癖にちなんで番組タイトルが付けられたとかではない。
大泉洋が所属する北海道の芸能事務所「CREATIVE OFFICE CUE」の会長(2012年までは社長)であり、俳優、映画監督、放送作家となんでもこなすマルチタレント。
やる気と能力はあるが全くもって運に恵まれないダメ人間であり、「サイコロの旅」シリーズなどでは彼がとんでもない目を出して旅が滅茶苦茶な方向に進んでしまう。
彼が男を下げる度、番組が盛り上がっていくという稀有な才能の持ち主。
藤村忠寿(魔神、ヒゲ)
「水曜どうでしょう」のチーフディレクター。
番組中では主に「藤村さん」「藤やん」などと呼ばれるが、大泉洋との罵り合いでは「ヒゲ」「ゲンゴロウ」などと呼ばれることもある。
通常TV番組では「ディレクターは撮影中は静かにしているもの」というのが常識だが、この男はカメラを回している間もグイグイ喋る。
番組開始当初はまだいくらか遠慮していたフシもあるが、中盤以降はその方が面白いと判断したのか誰よりもベラベラと喋り、キャスト陣のリアクションを奪い、番組進行は大泉洋と藤村氏の掛け合い、罵り合いがメインとなっていった。
レギュラー放送後半では「対決列島」という、甘味が苦手な鈴井貴之と甘味大好きな藤村氏による日本各地の甘味大食い対決と言う自重も大人げも投げ捨てた企画が放送されており、そのあまりの様子から「魔神」とも呼ばれている。
漫画ではしばしば悪役として登場しているが、概ねその配役は正しい。
嬉野雅道(うれしー)
「水曜どうでしょう」の撮影担当ディレクター。
どうでしょう班最年長ではあるが、番組中では主に「うれしー」「嬉野先生」と呼ばれ親しまれている。
要はカメラマンであり、その立ち位置もあって流石に藤村氏と比べれば口数は少ないが、さりとて模範的なTVクルーかというとそんなことはない。
旅企画の最中は、キャスト陣の様子よりもなんて事のない風景をひたすら撮影することを好み、キャスト陣(主に大泉洋)がどれだけアピールしても見向きもしないこともしばしば。
また、長期の撮影の際はカメラを回したまま眠ってしまい、その様子がそのまま放送されることもある。
また、撮影中も「黙ったままだと自分の立場が悪くなるばかり」だと、番組が進むにつれて遠慮なく口を挟むようになっていく。
まあ、前述の3人にまっとうな人間が付き合えるはずがない。
「水曜どうでしょう~大泉洋のホラ話~」感想&評価
藩士(どうでしょうファン)なら読め! そうでないなら……うん。
「水曜どうでしょう~大泉洋のホラ話~」を読んだ忌憚のない感想を言えば……藩士(どうでしょうファン)なら間違いなく楽しめる作品です。
逆にそうでない方が読むと、あまりにも意味不明過ぎてついていけないと思いますから、お勧めはしません。
読むなら先にDVDとかで水曜どうでしょうを観てからにした方が、絶対に面白いです。
大泉洋の「荒々しく」という要望に、作者や周囲が悪ノリして出来上がった作品ですから、ある程度お約束が分かっていないと……ねぇ?
何故、大泉洋が無駄に荒々しく体毛マシマシで描かれているのか、何故あちこちで藤村氏が悪役として登場しているのか、それはやはり「水曜どうでしょう」という番組を知った人でないと理解できないし、十全に楽しめはしないでしょう。
面白いとかつまらないとか打ち切りだとかそういう次元じゃない
そうした「水曜どうでしょう」のお約束を理解した上で、この「大泉洋のホラ話」がどうかというと……やはり面白いとかつまらないとか、そんな次元で語れる作品ではないですね。
この漫画単品で面白いかというと、お約束を理解していたとしてもかなりぶっ飛んだ内容ですし、正直首を傾げます。
いや、面白くないわけじゃないんですけど、なんというかファンブックのおまけ漫画を読んでいる感覚というか、内容云々より読んでいること自体が嬉しいというか……
「水曜どうでしょう」ファンとして、こういう形で作品が広がっていくことが嬉しい、と言ったらいいんでしょうかね。
この記事を書いている時点(2021年7月)ではコミックス3巻まで発売され、週刊少年チャンピオンでの連載はいったん終了している状態です。
とは言え、別に打ち切りと言うわけではないでしょうから、また人気が出れば次のシーズンが始まるのではと期待しています(ホラ話はまだまだありますしね)。
藩士の方は勿論、そうでない方も藩士となって、是非一緒にこの「大泉洋のホラ話」を応援していきましょう!
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