今回は「週刊少年マガジン」で連載中の長編SFファンタジー「不滅のあなたへ」について紹介したいと思います。
本作は2021年4月にNHKでアニメ化された人気作ですが、同時に読者を選ぶ作品でもあり、「つまらない」「意味不明」といった感想をいだく方も決して少なくありません。
何故こうも評価が二分されるのか、内容の紹介とともにその理由について迫っていきたいと思います。
不滅のあなたへのあらすじ(ネタバレ注意)
第一部 前世編
物語の始まりは、ある世界に観察者を名乗る存在によって『球』が投げ込まれたことでした。
『球』はあらゆる存在の姿を模倣する力を持っていました。『球』は石、コケ、狼へと姿を変え、そしてその狼の飼い主である少年と出会います。
少年は豊かな土地を目指して旅をしますが、その半ばで命を落としてしまいます。『球』は少年の姿を得て、より多くの刺激を受けるために旅をするのです。
やがて『球』はマーチと呼ばれる生贄の少女と出会い、彼女によって『フシ』と名付けられます。
フシは旅の中で人々と触れ合い、多くの出会いと別れの中で少しずつ自我を獲得していくこととなります。
そしてフシを狙う謎の怪物ノッカーとの遭遇と、フシをこの世界に落とした観察者との対話。
ノッカーによって襲われ、大切な人たちを失いながらフシは放浪の旅を続けます。
ノッカーは人々を肉体から解放したいと願うファイという魂のような存在によって作られた怪物で、彼らにとって不滅の存在であるフシは受け入れられない存在でした。
やがて人々を襲い始めるノッカー。フシは仲間たちの助けを借りてノッカーを退け、ノッカーを撲滅するため世界中に根を張り、眠りについたのでした。
第二部 現世編
そして数百年が経過し、現代の地球と見間違うような世界でフシは目を覚まします。
フシはかつて死した仲間たちを生き返らせ、ハッピーエンド(?)。
とはまだいきそうにありません。
ファイ、観察者にまつわる謎は残っています。観察者に至っては何故が人間になっている有様。
平和そうな世界で人々の心に巣くう闇、姿を変えたノッカーの影。
苦しいフシの戦いはまだまだ続きそうです。
よみがえった仲間たちと再会し、笑い合える日が来るといいのですが……遠そうですね。
不滅のあなたへ、主な登場人物
フシ
主人公にして正体不明の物質。外部から刺激を受けることで、その性質や姿を模倣することができる。また、不死身そのものの再生能力を持つ。
狼の飼い主である少年の姿を取ることが多い。
滅びゆく世界を保存するために作られた存在らしいが未だに謎が多い。
観察者
黒いローブを着た人物で、フシを送り込んだ存在。
フシ以外には見えないし干渉することもできない。
ノッカー
正体不明の怪物で、フシに敵対している。
寄生した存在を支配する力を持ち、また、フシが獲得した姿を奪う力もある。
ファイ
魂、幽体に相当する存在。ノッカーを送り込み、人々を肉体から解放しようとしている。
マーチ
フシに名前を付けた少女。大人になりたいと願っていたが、オニグマの生贄に選ばれてしまう。
フシによって救われるが、後に家族のように思っていた少女を庇って命を落とす。
ハヤセ
フシの力に執着を見せる女性。何度もフシたちと戦い、ノッカーに寄生される。
死んだと思われていたが生き延びており、後に何人も子孫が登場する。
本当にとてつもない数の登場人物が存在するため、中盤以降の登場人物紹介は割愛させていただきます。
ハヤセの子孫のカハクとか、ボン王子とか、非常に魅力的な人物ばかりなので残念なのですが、語りだしてしまうときりがないので。
気になる方は実際に本作を手に取ってみてください。カハクの最後とか、本当に泣けるんです。
不滅のあなたへの感想、つまらないと言われる理由は?
さて、非常に面白い作品なのですが、冒頭でも申し上げたようにこの作品は読む人を選びます。
その理由を幾つか挙げていきましょう。
感情移入しにくい
フシは徐々に自我が芽生えてきますが、基本的に普通の人間ではありません。
自己投影とか感情移入がしにくいというのはあるでしょう。
また、気に入ったキャラクターがいても、基本すぐに死んでしまうのはきついですね。
展開が単調? 現世編で雰囲気が変わり過ぎ?
人によっては、旅をして、出会って、そして別れての繰り返しなので、展開が単調で面白みに欠けるという感想を抱く場合もあるようです。
個人的には決して単調だとは思わないので、正直、これは好みの問題でしょうね。
逆に、現世編に入ってからはそれまでの時代や国を渡り歩く展開からガラッと雰囲気が変わってしまうので、前世編を面白いと思っていた人が離脱するケースもあるようです。
……まあ、確かにそこは筆者自身、多少違和感を感じた部分でもあります。
とにかく難しい!
世界観が複雑で、一度読んだだけでは中々理解しづらいというのは確かでしょう。
コミックで一気読みするならまだしも、週刊連載で間をあけて読んでいる読者は、前を読み直さないと展開が理解できなくて、途中離脱してしまうという気持ちは、正直分かります。
私自身は、そうやって繰り返し読んで考えるのが楽しい、と思う派なので苦痛ではなかったのですが、このあたりは確かに人を選ぶでしょうね。
合わないかもしれないけど、まずは読んでみて!
今の時代、試し読みをする方法はいくらでもありますので、まずは読んでみてください。
合う合わないは読んでみないとわかりません。
個人的に、SF的な世界観が好きな人には合うと思っているので、そういった方には是非読んで頂きたい作品ですね。
コメント