「百姓貴族」感想(あらすじ含む)~銀の匙の作者、荒川弘先生のリアル農家エッセイコミック、担当イシイさんがかわいい~


 今回は「鋼の錬金術師」「銀の匙」などのヒット作で知られる人気作家、荒川弘先生がウイングスで連載中のリアル農家エッセイコミック「百姓貴族」について紹介させていただきます。

 荒川弘先生が女性で、農家出身というのは広く知られた話だと思いますが(知ってるよね?)、本作は荒川先生の実家での農家としての経験、そして上京してから感じた世間と農家とのギャップを赤裸々に綴った珍しいエッセイコミックとなっております。
 筆者は実家が農家なので半分荒川先生側なのですが、農業経験がある方もない方もゲラゲラ笑いながら楽しめる本作の魅力を語っていきたいと思います。

百姓貴族ってどんな話? あらすじと感想

 作者の荒川先生は北海道十勝で酪農と畑作を営む農家に生まれ、高校卒業後、漫画家として上京するまでの7年間を実家で農業に従事していました。

 本作はその実家での体験、そして上京してから感じた非農家とのギャップを荒川先生独自の視点で語った(通称『荒川調べ』)非常にリアルな農家エッセイとなっています。

 登場人物は荒川先生とその家族。そして非農家代表でツッコミ担当の編集者イシイさん(女性)。あとは諸々家畜とか、知人の農筋(誤字に非ず)農家たちとか。

 もう完全にリアル「銀の匙」の世界ですね(あっちも大概リアルですが)。銀の匙と連載時期が被っていたこともあり、「ああ、あのエピソードの元ネタはこれか」と思うような内容もしばしばみられます。

 人気キャラは荒川先生の「親父殿」。農家の荒川先生から見ても突出して破天荒な方で、全身傷だらけ。過酷な北海道を開拓してきた歴戦の農家はすげぇなぁ、と感動してしまう、冗談のような本当の農家さんです。

 個人的な推しキャラは編集のイシイさん。段々農家にも詳しくなり、荒川先生のホラ話にも騙されなくなってきたのを見ると、思わずほのぼのしてしまいます(農家視点)。


百姓貴族はここが面白い!

農家の食! お金! う〇こ!

 この作品は農家のリアルな食、そして経済事情について躊躇うことなく触れています。
 一般的に農家は「きつい上に儲からない」と言われていますが(そして実際にそれは概ね間違いではない)、その実態、成功している農家などにもきちんとスポットがあてられています。

 とは言え荒川先生の実家はあまり儲かっているというわけではないのかな?
 きっと大半の農家が感じている、しんどい仕事だけどおいしいと言ってくれる人がいるから頑張れる、というモチベーションで働く普通の農家だったようです。
 その分、食べ物を粗末にしている人間を見るとかなり物騒なことを考えてしまうところも共感が持てますね。

 お金はないけれど、食べてるものは国産のとても良いものばかり。全部物々交換で手に入れてますというのは、北海道の農家ならではでしょうね。
 まさに百姓『貴族』。他の地域じゃあ、中々こうはいきませんよ(筆者の実家は果物農家なので、普通に肉類は買っていました。野菜はほとんど買わないけど)。

 そしてう〇この話題をあそこまで深掘りできるのも(2話分)、北海道の酪農家ならではでしょうね。

 ちなみに一番好きな話は農家が火星に行ったらという妄想エピソードです。
 火星人からしても農家のメンタリティって怖いのかなぁ(是非ご一読を)。

農家あるある(次女の指切断事件など!)

 そして本作最大の魅力は、作中のいたるところに散りばめられた農家あるあるでしょう。

 スポーツの筋肉と農業用の筋肉は別物なこととか、ばあさんが農閑期に亡くなったこととか、遺骨がやたらしっかり形を保っていたこととか、農家からしたら「あ~、あるある」、非農家からしたら「そうなの?」と、細かなエピソードが読者を作品にぐいぐい引き込んでくるのです。

 ちなみにその中でも物議を醸しだしているいるのが、荒川先生のお姉さんが農機に指を巻き込まれ、皮だけで辛うじてつながった状態になってしまったというエピソードでしょう。
 指切断自体は農家では珍しくないのですが(大体一家に一人は指の短い人がいます。うちは親父の親指)、お姉さんは病院にも行かず、親父殿の民間療法でその怪我を完治させたというのです。

 お医者さん目線ではあり得ないことのようですが……やっぱり親父殿は凄いなぁ(ちなみに普通の農家の民間療法は、骨折でも指切断でも取り敢えず梅干を張っとくというレベルで、親父殿ほどの劇的な効果を持つ療法は聞いたことがありません)。


百姓貴族はこんな人におすすめ!

 荒川弘先生のファンなら絶対に読むべきです!

 銀の匙が終わって寂しいな、という方はここにもう一本の銀の匙が転がっていますので、必ず読みましょう。

 あとは、農業経験がある方、農業に興味がある方にも当然おすすめです。
 北海道の農家は本土の農家とは別物ですので、読んでいて色んな驚きや発見、共感ができる部分があって楽しいですよ。

 ちなみに、本作はアニメ化の予定はありません。
 作者本人があれで、扱っているテーマもあれなので、今後もアニメ化は難しそう。

 だけどTVじゃなくて、オリジナルのショートアニメなら人気が出ればワンチャン有るかな?
 是非皆さんも本作を応援してください!

→追記:しれっとアニメ化されましたね。



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