今回は「タコピーの原罪」で知られるタイザン5先生の新作「一ノ瀬家の大罪」について解説します。
この「一ノ瀬家の大罪」は一家全員が事故で記憶喪失という衝撃的な始まり方をしたファミリーストーリー。
「タコピーの原罪」を知るファンは第1話からどんな伏線が隠されているのか様々な考察を巡らせていました。
本記事では「一ノ瀬家の大罪」のあらすじや主な登場人物の紹介を踏まえ、その謎と魅力について語ってまいります。
「一ノ瀬家の大罪」あらすじ
主人公は中学2年生の少年・一ノ瀬翼。
ある日病院のベットで目を覚ました翼は全ての記憶を失っていました。
しかも記憶を失ったのは彼だけでなく、家族6人全員。
交通事故に遭った一ノ瀬家は、自分たちが誰かも分からなくなっていたのです。
何とか記憶と取り戻そうと、架空の思い出しトークをしてみる一ノ瀬家。
記憶は戻りませんでしたが、それでも少しずつ互いのことを家族として認識するようになっていきます。
記憶を無くしても自分たちは最高の家族、そう思っていた一ノ瀬家ですが、いざ家に帰ってみると家の中はゴミ屋敷。
それぞれの部屋も凄惨たるありさまで、記憶を失う前の彼らは相当ヤバイ秘密を抱えていたようで……
徐々に明らかになるそれぞれの過去。
主人公の翼は記憶を失う以前、学校でクラスメイトにイジメられていました。
イジメの主犯は中嶋という少年で、引き続き翼はイジメの標的になりますが、キレた翼が反撃し、立場が逆転。
かつては友人だったこともあり、徐々に二人の関係性も改善していきます。
妹の詩織は記憶を失う以前、年齢を隠してパパ活をしていました。
以前の自分のことをおかしいと思いながらも、かつての自分の行動をなぞってしまう詩織。
そんな詩織も、翼の言葉でパパ活相手と縁を切り、徐々に前を向いて行きます。
しかしそんな時、突然様子がおかしくなった父親の翔。
彼は家族旅行に向かう途中で意味ありげなセリフを残して交通事故を起こし……
次に翼が目を覚ました時、一ノ瀬家は再び全ての記憶を失っていました。
しかし、そこに父親としていたのは以前とは違う別の男で……
ループしているかのように繰り返される、しかし以前とは確実に違う世界。
そこで明らかになるかつての父親の不倫と母親・美奈子の罪。
記憶を取り戻した美奈子はこの世界の決定的な嘘に気づくのですが……
「一ノ瀬家の大罪」主な登場人物
主人公:一ノ瀬翼(いちのせつばさ)
本作の主人公で中学2年生の少年。
記憶を失う以前は学校でいじめられており、自室は一面「死」の文字で埋め尽くされ、かなり追い詰められていた。
小学校の頃は明るいサッカー少年だったが、ある時を境に家庭の事情(父親のリストラ?)でサッカーを辞めている。
元々親友だった中嶋からはサッカーを辞めたことが切っ掛けでイジメの標的にされていた。
記憶を失っても前向きな言動が目立つが、記憶を失う以前はイジメの影響で暗く、家庭内でもほとんど会話が無かった様子。
妹:一ノ瀬詩織(いちのせしおり)
翼の妹で中学1年生。
ポニーテールの可愛らしい少女で、生真面目で思いつめやすい性格をしている。
自室は何故か大量のウサギのぬいぐるみで埋め尽くされていた。
記憶を失う以前は変な服を着て年上の男性とパパ活をしていた模様。
記憶を失ってからも体に染みついた以前の行動に沿って、パパ活を続けていた。
母親:一ノ瀬美奈子(いちのせみなこ)
翼の母親で明るい雰囲気の女性。
記憶を失って以降もやたら仕事のことを気にしている。
自室はスナック菓子とゴミで埋め尽くされた汚部屋。
2年前から夫が浮気をしていることを知り、ショックで大きな罪を犯してしまった模様。
全ての記憶を取り戻すが……
父親:一ノ瀬翔(いちのせかける)
翼の父親でメガネをかけた頼りなさそうな男性。
記憶を失う以前はリストラされて駅前のファーストフード店で働いており、家庭内に居場所が無い状態で2年前から浮気をしていた。
一度目の記憶喪失の後、最も早く記憶を取り戻しており、翼に過去の真実と向き合うよう促す発言をし、二度目の記憶喪失のきっかけとなる交通事故を起こして姿を消す。
その後、別の人間(後述)が父親と入れ替わっていたが、本人は再び記憶を無くして浮気相手とよろしくやっていた。
偽の父親:宗太(そうた)
二度目の記憶喪失の後、本物の父親と入れ替わる形で登場した偽物。
爽やかで怜悧な雰囲気の頼りがいのあるイケメンで、一ノ瀬家内の問題を先んじて解決するスパダリ系。
一ノ瀬家の真実を把握しており、何らかの理由で今の彼らを守ろうとしている。
本物の父親とは逆に、翼たちが過去と向き合うことを止めようとしているようだが……
祖母:一ノ瀬幸恵(いちのせゆきえ)
翼の祖母で翔の母親。
ショートカットのおっとりした雰囲気の老女。
記憶を失う前の後姿は、ややワイルドな雰囲気を漂わせている。
祖父:一ノ瀬耕三(いちのせこうぞう)
翼の祖父で翔の父親。
いかにも昔ながらの男といった雰囲気を漂わせる頑固そうな老人。
66歳と高齢だが記憶を失う前は大学で物理学を教えていた。
実は記憶を保持したまま2000回も世界を繰り返し続け、世界の異常に気付いている。
「一ノ瀬家の大罪」感想&評価
ループしてる? 7人目の家族? 伏線と謎だらけの展開
家族全員記憶喪失という衝撃的な展開から始まった「一ノ瀬家の大罪」。
記憶を失う以前の家族の問題を解きほぐすファミリーストーリーかと思いきや、物語が進むにつれてSF、サスペンス的な要素が物語の中核を占めていきます。
二度目の交通事故が起こって以降は、単にもう一度記憶を失ったというだけでなく、世界そのものがもう一度ループしているかのようでしたね。
登場人物たちの思惑がバラバラな点も謎。
記憶を取り戻させたい側と、記憶を無くしたままにしたい側とに分かれ、しかもそのどちらもが翼のためを思って行動しています。
第一話のラストでは一ノ瀬家の汚い食卓が映っていましたが、そこに7つ目の席が描かれていたことも、実は一ノ瀬家は7人家族だったのではとファンの想像を膨らませていました。
こんな人におすすめ
間違いなくラストに大どんでん返しが待ち構えているだろう「一ノ瀬家の大罪」。
この作品はじっくり今後の展開やラストを考えながら読みたいという方におススメです。
非常に複雑で伏線だらけの作品ですから、考察好きにとってはネタに事欠かない内容となっています。
個人的には「週刊少年ジャンプ」より「ジャンプ+」向きの作品かな、という印象。
「週刊少年ジャンプ」は毎週きっちりインパクトを残して人気を維持し続ける必要がありますが、話の展開が複雑でわかりにくい部分があるため、読者が離脱しないかが心配。
打ち切られたり変な圧力が加わって話の展開が歪まなければいいなと思っているのですが……
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