「九龍ジェネリックロマンス」感想&考察(ネタバレ注意)~記憶喪失? クローン? ノスタルジックな恋とミステリー~


 今回は週刊ヤングジャンプで連載中の「九龍ジェネリックロマンス」について紹介します。

 この作品の第一印象は不器用な大人の男女のラブロマンス。しかし同時に、主人公たちの過去、そして舞台となる「九龍地区」そのものに隠された数々の謎が読者を魅了するSFミステリ作品でもあるのです。

 今回はそのあらすじと謎、登場人物について若干のネタバレも交えて解説させていただきます。

「九龍ジェネリックロマンス」のあらすじ(ネタバレ注意)

 物語の舞台は香港の九龍地区(ただし、実在した同名の九龍地区とは別物である可能性が作中で語られています)。

 不動産屋で働く主人公の女性、鯨井は、上司の工藤にほのかな恋心を抱いていました

 ある日鯨井は、散らかった工藤の机に撮った覚えのない「自分と工藤の2ショット写真」を見つけます。そして鯨井は徐々に自分自身に違和感を感じる様になるのです。

 自分には過去の記憶がない。

 その事実を自覚し、自分自身の過去を探っていく鯨井。
 そして鯨井は、かつて工藤が自分そっくりな女性と婚約していたことを知ります

 工藤が自分とその女性(以下、鯨井B)を重ねて見ていることを不満に思いつつも、工藤に自分を見てもらえるようになろうと、工藤と自分自身の恋心に改めて向き合うことを決意する鯨井。

 そしてそんな鯨井と工藤の前に現れる謎の男たち
 蛇沼クリニックの院長、蛇沼みゆき(男ですよ)、そしてそれに付き従うタオ・グエン。

 グエンは鯨井に「オレの知ってる鯨井令子は、もうこの世にはいない」と、鯨井Bが死んでいること、そして鯨井が鯨井Bのクローンであることを示唆する発言をし、去っていきます。

 しかしその後、グエンが蛇沼に鯨井に会ったこと、そして鯨井Bと同じようにホクロまで再現されていたことを告げると、蛇沼は「クローンにホクロは再現されない」と、鯨井がクローンであることを否定する発言をするのです。

 実は物語の舞台である九龍地区さえ、新しく作り直されたクローンであることが判明。そして九龍地区の上空に浮かぶ謎の建造物「ジェネリックテラ」の存在。

 この街は全てがクローンに過ぎないのか、オリジナルはどうなったのか、謎が謎を呼ぶ展開が続いていきます。


「九龍ジェネリックロマンス」の登場人物(ネタバレ注意)

鯨井 令子(くじらい れいこ)
九龍地区の不動産屋に勤める32歳の女性。
外見はショートカットのクールな雰囲気の女性。
メガネをかけているが、(何故か)視力は回復しており伊達メガネ。
意外に好奇心が強く、負けん気も強い。
かつて存在した女性(鯨井B)のクローンであることが作中で示唆されている。
上司の工藤に恋心を抱いている。

工藤 発(くどう はじめ)
九龍地区の不動産屋に勤める34歳の男性。
いかにもガサツな見た目をしており、中身もそのとおりガサツだが、地域住民との交流を欠かさないなど、人づきあいは良い。
鯨井の過去を知っている様子であり、かつて鯨井Bと婚約していた。
鯨井Bを殺したのは自分だと発言しており、彼自身にもクローン疑惑が浮かび上がっているが……

鯨井B
鯨井を同じ顔した謎の女性で、過去の回想でのみ登場する。
年齢は工藤より2歳年上で、鯨井とはクセなど共通点もあるが、異なる性格をしていたことが見て取れる。
工藤の九龍地区への思い入れ、数字の8を見ると触るクセなどは、大体鯨井B由来である。

陽明(ようめい)
鯨井の友人の女性。
不動産の騒音問題を通じて鯨井や工藤と知り合う。
全身整形を施し、過去を捨てたと語っている。

蛇沼 みゆき(へびぬま みゆき)
蛇沼クリニックの院長をしている謎の男性。
鯨井に強い興味を持ち、その過去についてもある程度知っている様子だが、目的については今のところ不明。
突然鯨井にキスをしたりと奇行が目立つが、いやらしい感情はない模様。

タオ・グエン
蛇沼と行動を共にする謎の男。
鯨井Bの知り合いだったらしいが関係性は不明。
九龍地区の喫茶店には彼のクローンが存在しており、そのクローンがかつて工藤と鯨井Bの婚約の記念写真を撮ったらしい。


「九龍ジェネリックロマンス」はここが面白い

記憶喪失? 街さえもクローン? 過去と現在が交差するSFミステリー

 ただのラブロマンスかと思いきや、まず最初に主人公の鯨井にクローン疑惑

 そして鯨井が薄々それを察しつつも、それでも前を向いて生きて行こうとすると、今度は九龍地区そのものが過去に存在したそれを再現したクローンであることが明かされ、そこに存在する住民たちにもクローン疑惑が持ち上がっています。

 しかも鯨井はただのクローンではない? 工藤もクローン?

 さらに物語序盤から九龍上空に浮かぶ「ジェネリックテラ」の存在。
 それは人類の新天地とされる人工的に作られた地球で、ジルコニアンと呼ばれるクローン人間が計画には関わっている、ときました。

 ジェネリックテラが今後物語にどのように関わってくるのか、そして工藤と鯨井Bの過去は、オリジナルとクローン、どちらの九龍地区で繰り広げられたものなのか。

 息をつかせぬ展開が、ぐっと読者の心をつかむ作品ですね。

こんな人におすすめ

 謎、伏線が非常に多い作品ですから、物語を何度も読み返して考察するのが好きな方には特におすすめです。

 かなり壮大なSFの要素、どんでん返しもある作品ですので、そういうのが好きという方も、好き嫌いはあるかもしれませんが一度手に取って見てはいかがでしょう。

 逆に純粋なラブロマンスを期待している方には、少し物足りない作品かもしれませんね。

 まだまだ物語は半ば、評価も定まらない作品ですので、今後の展開を是非一緒に見守っていきませんか。



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