「裏世界ピクニック」の感想&評価(ネタバレ注意)~怪談✖異世界探検✖百合、きさらぎ駅など元ネタは?~


 今回は「月間少年ガンガン」で水野英多先生が連載中の漫画版「裏世界ピクニック」について紹介させていただきます。

 裏世界ピクニックのテーマは怪談と異世界探検、そして百合。原作はハヤカワ文庫の小説ですが、百合百合しいかわいい登場人物の魅力が最大限に引き出された漫画版を、ここでは推させていただきます。

 それでは、かわいいだけでない、奇妙で怖いこの作品の魅力について語っていきましょう。

裏世界ピクニックのあらすじ(ネタバレ注意、漫画版ベース)

 主人公の紙越空魚(かみこしそらを)は、怪談と廃墟探索が趣味の女子大生。偶然廃墟で<裏世界>へ通じる扉を見つけ、一人でその探索を行っていました。

 しかしそこで空魚は『くねくね』という怪物を目撃し、身体が動かなくなって命の危機に陥ってしまいます。そこで出会った同年代の美女、仁科鳥子(にしなとりこ)に命を救われる空魚。彼女たちは塩の塊をぶつけるという原始的な方法で『くねくね』を撃退します。

 『くねくね』を撃退したあとには奇妙な鏡石が残されていました。

 後日大学で空魚は鳥子と再会し、再び裏世界に行って『くねくね』を狩らないかと誘われます
 実はあの鏡石を結構な値段で買い取りたいという人がいると言うのです(後に一つ百万円と判明)。金に釣られた空魚は鳥子とともに再び<裏世界>へと向かいます。

 そして再び遭遇する『くねくね』。以前と同じように塩の塊をぶつけますが、なぜかまるで通用しません。

 その上、『くねくね』を見ているだけで空魚たちは「理解してはいけないものを理解してしまいそうになり」どんどん気分が悪くなっていきます(SAN値悪化!?)

 絶体絶命の二人。空魚は、以前『くねくね』を倒した時、自分がその理解してはいけないものに手が届きそうになっていたことを思い出し、『くねくね』を理解しようと直視します。

 空魚は『くねくね』に浸食されますが、その結果『くねくね』とこの世界の繋がりが強くなり、再び干渉可能な存在に。無事だった鳥子が<裏世界>で拾った銃で『くねくね』を撃ち抜き、窮地を脱します。

 残された鏡石を持って元の世界に帰る二人。
 そして空魚は鳥子が<裏世界>で行方不明となった女性、冴月を探していることを知ります。

 冴月の捜索に協力してほしいと空魚に頼む鳥子。鳥子に好意を抱き始めていた空魚は、自分が都合良く利用されているだけではないかと不快に感じながらも了承します。

 微妙なすれ違いを抱えたまま、実話怪談が存在する<裏世界>の捜索を続ける空魚と鳥子。
 『八尺様』『きさらぎ駅』といった実話怪談に遭遇しながらも二人は何とかそれを潜り抜けていきます。

 <裏世界>とは果たして何なのか、行方不明となった冴月との再会は、空魚と鳥子の今後の関係は……(いや、非常に期待が持てる展開です)。


裏世界ピクニックの登場人物(ネタバレ注意、漫画版ベース)

紙越 空魚(かみこし そらを)
主人公で大学2年生。ネットロアや怪談が好きで廃墟探索を趣味としている
地味めでメガネをした友達が少ないタイプの少女。
偶然廃墟の扉から<裏世界>に迷い込み、その存在を知る。
母は幼いころに亡くなり、父と祖母が宗教にはまる。そこから逃げるために家出や廃墟探索を繰り返していた(後に父と祖母も死亡)。
『くねくね』と接触した影響で右目が青く染まり、<裏世界>の存在を見通せるようになる(普段は黒いカラーコンタクトで隠している)。

仁科 鳥子(にしな とりこ)
行方不明になった家庭教師で友人の冴月を探して<裏世界>を探索する女性
親がカナダ軍人だったらしく、金髪のものすごい美女で銃器を扱える
一見すると明るく人当たりの良さそうな性格だが、他人との距離感を掴めず孤立するタイプで空魚と冴月以外に友達がいない。それ故に、どちらかというと鳥子を利用しようとしていた感のある冴月のことをとても大切に思っている。
両親は「母」と「ママ」で、百合に対しては抵抗がなく、自覚してからはかなり積極的。

小桜(こざくら)
ロリっぽい外見の<裏世界>を研究する女性。見た目は幼いが、立派な大人らしく空魚たちより年上。冴月の大学時代の友人で、冴月が<裏世界>に関わることに反対していた。
<裏世界>の調査研究を行う行政機関『DS研究奨励会』に加入していたことがあり、<裏世界>に詳しく、空魚たちが持ち帰った鏡石などを買い取ってくれる。

瀬戸 茜理(せと あかり)
空魚と同じ大学で一つ年下の少女。
ショートカットの明るい雰囲気の少女で、高校時代は空手で県大会優勝したほどの猛者。
猫の忍者に襲われ、助けを求めて空魚たちと知り合う。
あだ名は「カラテカ」。
鳥子と同じく、冴月が家庭教師をしていて利用されていたフシがある。

閏間 冴月(うるま さつき)
鳥子の家庭教師、小桜の同期の友人だった女性。
物語が始まる3か月前に<裏世界>で行方不明になっている。長い黒髪とメガネが特徴で背が高い。
<裏世界>を調査するために有能なパートナーを探していたが、小桜に断られたため他の人材を探していた(鳥子はその一人)。

(水野英多先生が可愛らしく描かれた女性キャラクターは必見です。「スパイラル~推理の絆~」を読んだことのある方は、是非是非ご一読を)


裏世界ピクニックの感想と評価

「きさらぎ駅」など実話怪談をテーマにした百合百合しい現代SFホラー

 キャッチコピーは「検索してはいけないものを探しにいこう」

 ネット上で実話怪談として存在する怪異をテーマに、かわいい女性大生が怪談が実在する異世界を探索するSFホラー作品です。

 有名どころだと「きさらぎ駅」ですね。
 はすみさんという方が、見たことも聞いたこともない「きさらぎ駅」についてしまい、親切な方の運転で送り届けてもらう途中で行方不明になるというもの(はすみさんは、運転手を怪しんで「逃げようと思う」とネットに投稿したのを最後に消息が途絶えてしまいます)。

 こうした実際の実話怪談をテーマにしていることが、作品に独特のリアルさを出しています。

 そして魅力的な登場人物、女の子。
 基本的にこの作品、百合です。直接的な描写こそ少ないですが、精神的には完全に百合百合しています。

 敢えて深くは語りませんが……個人的に良し!

つまらないと荒れるアニメ版、評価が割れる理由

 さて、本作は実は2021年1月からアニメ化されているのですが……その評価は見事に割れています。

 面白いという方はもちろん多いのですが、内容が非常に分かりづらいと。

 アニメだと中々物語の背景を詳しく説明するというのも難しいですから、こうした理屈っぽいタイプのSFはどうしても分かりづらくなりがち。人によっては受け入れられないというのも十分理解できます。

 漫画版や小説版は面白いのに、という感想は多いですから、事前にそちらを読んで内容を理解した上でアニメにのぞめば、苦手だという方にも楽しんでいただけるのではと思います。

こんな人におすすめ

 ずばり、怪談好き、水野英多先生のかわいい絵が好き、そしてクトゥルフ好きの方におすすめです。

 百合がテーマの一つではありますが、それ目的だと少し物足りないでしょうね。

 クトゥルフに関していえば、本作の「理解してしまえば戻ってこれなくなる」ところなど、まさにそのもの。あくまでか弱い主人公たちが理不尽な怪談に立ち向かう作風も、クトゥルフ好きにはたまらないものがあります。

 試し読みもありますので、まずはお気軽に読んでみてください。

 きっと読んだら戻ってこれなくなると思いますよ?


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