今回は週刊少年サンデーで連載中の「よふかしのうた」について紹介したいと思います。
この作品を読んだことはなくとも、「Creepy Nuts」の同名の楽曲、あるいは「ヨルシカ」の「逃亡」と共に流れるPVをどこかで目にした人は多いのではないでしょうか?
「よふかしのうた」はある意味で、楽曲のイメージそのままの作品です。
読みだせば、軽快なテンポに釣られてどんどん物語に引き込まれていき、そしてその先に夜の闇を垣間見る。
それでは「よふかしのうた」の魅力について語っていきましょう。
「よふかしのうた」ってどんな話?
「よふかしのうた」のあらすじ(ネタバレ注意)
不登校の中学二年生、夜守コウは、ある日の夜、一人で夜の街へ出ます。
しがらみから解き放たれて久しぶりの外を満喫するコウ。彼はそこで不思議な少女、ナズナと出会います。
ナズナはコウに言います。
「眠れないんじゃないか、少年。あたしが君を助けてやろう」
「人はなぜ夜ふかしをすると思う? 今日という日に満足していないからだ」
ナズナに連れられ夜の街を楽しむコウ。そしてコウはナズナの家に連れていかれ、彼女に血を吸われてしまいます。
実はナズナは吸血鬼だったのです。
自分は吸血鬼になったのかと動揺するコウですが、ナズナはそれを否定。吸血鬼になるためには、血を吸われた人間がその吸血鬼に恋をする必要があると言います。
安心したコウは、自分が不登校になった事情をナズナに打ち明けます。
そしてナズナはコウに言いました。
「別にいいじゃん。学校なんかつまんねーだろ」
「今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ。そういう生き方も悪くないぜ」
ナズナの言葉に、コウは自分も吸血鬼になりたいと思いました。
そして、ナズナに恋をさせて欲しいと願ったのです。
これは、恋を知らない少年と吸血鬼の少女の未熟な恋物語。
様々な考え方を持つ他の吸血鬼と、吸血鬼と関わる人々、そして吸血鬼を憎む人間とが複雑に絡みあって、二人の物語は進んでいきます。
「よふかしのうた」の設定、世界観(吸血鬼って?)
「よふかしのうた」の設定で秀逸なのは、吸血鬼という設定をきちんと独自のものに昇華しているところでしょう。
「吸血鬼になるには、吸血鬼に恋をする必要がある」
非常にシンプルですが、このたった一つの設定が物語のキーになっています。
それ以外の吸血鬼の設定は極めてシンプル。高い身体能力と不死性、独自の特殊能力。吸血行為はあくまで食事であると、今時のスタンダードな吸血鬼のイメージと重なります。
ナズナが「食事の度に家族が増えるのは不気味」と発言しているとおり、吸血だけでは吸血鬼にならないという設定は非常に理にかなってもいますね。
なお、最初に吸血されてから吸血鬼にならないまま1年が経過してしまうと、もう吸血鬼にはなれないとのこと。
これがこの作品、コウとナズナの物語のタイムリミットでもあるようです。
どんな形であれ、二人が納得する形で結末を迎えて欲しいものですが……
「よふかしのうた」の主な登場人物
夜守 コウ(ヤモリ コウ)
主人公で中学2年生の少年。恋愛感情を理解できず、仲の良かった少女からの告白を断ったことで学校に居づらくなり、不登校になる。
昼間引きこもっているため体力が有り余ってしまい不眠症気味。
元々はクラスメイトとの仲も良好で、勉強もできる普通の少年だった。
特技は寝たふり。吸血鬼のナズナ曰く「血がすげー美味い」らしい。
吸血鬼になるためナズナに恋をさせてくれと頼むが、女性にこんな発言をする時点で大概失礼。
七草ナズナ(ナナクサ ナズナ)
吸血鬼の女性で本作のヒロイン。添い寝屋なる怪しい商売をしながら、寝入った相手の血を吸って細々と生きている比較的無害な吸血鬼。
雰囲気も発言もヤンキーっぽく、エロいが、恋愛に関しては実はかなり奥手。メンタリティに関しては思春期の男子学生並。
そのくせ服装はかなり露出度が高くエロい。
朝井アキラ(アサイ アキラ)
コウの幼馴染の少女。コウが友達と思える数少ない存在。
コウが不登校になった理由が間接的には自分のせいだと思って自分を責めている。
夕真昼(セキ マヒル)
コウやマヒルの幼馴染で文武両道のリア充。
吸血鬼の女性、キクと出会い、彼女の眷属になりたいと願うようになる。
鶯餡子(ウグイス アンコ)
吸血鬼を憎む探偵の女性。調査能力は非常に高いが推理は管轄外(曰く「コナン君の仕事」)。
悪人ではないが、吸血鬼が絡むとタガが外れる。
吸血鬼さえ絡まなければ普通の気さくで綺麗なお姉さん、デートの誘いもOKらしい。
<吸血鬼のサークル(ナズナも含め、全員七草の名前がついている)>
桔梗セリ(キキョウ セリ)
女子高生風の見た目でナンパ待ち戦術を得意とする女性吸血鬼。
ナズナからは「クソビッチ」と呼ばれ殴り合いの喧嘩をするほど仲がいい。
吸血鬼らしい吸血鬼で、人を殺すこともためらわない。
平田ニコ(ヒラタ ニコ)
OL風の吸血鬼で定時制高校で教師をしている。7人のリーダー格。
趣味は恋バナで、男の落とし方は「気が合いそう」発言による戦術を得意とする。
小繁縷ミドリ(コハコベ ミドリ)
メイド喫茶で働く明るい雰囲気の吸血鬼。
男の落とし方は「あり? なし?」発言による戦術を得意とするが、コウにはあっさり躱されていて、そのことを気にしている。
ナチュラルに女としてナズナを下に見ており、ナズナをメイドのバイトに(モテない都合の良い存在として)勧誘している。
蘿蔔ハツカ(スズシロ ハツカ)
一見すると冷静そうな男の娘系吸血鬼。常識人を自称するが、女王様プレイに興じていたり、男としての心は捨てきれていなかったり、時々テンションがおかしくなったり、一番意味不明な存在。
本田カブラ(ホンダ カブラ)
真面目担当の大人な雰囲気の吸血鬼。
男の落とし方は「予定が合わない時」戦術を得意とする。
星見キク(ホシミ キク)
バーのお姉さん風吸血鬼。真昼を眷属にしようとするが……?
50人もの眷属を作っていたり、色々と行動には謎が多く、ナズナたちにとっても何を考えているか分からない存在。
このほかにも、人間から吸血鬼になったメンヘラさん(大人気)など、様々な人物が登場しますが、キリがないのでここでは割愛します。
「よふかしのうた」の魅力
「Creepy Nuts」「ヨルシカ」楽曲のイメージそのままの胸躍るストーリー
思わずワクワクしてしまうジュブナイルストーリー。
是非BGMを用意して聞いていただきたい作品です。
作品タイトルそのものが「Creepy Nuts」の同名の楽曲からとったということですから、これほど親和性のあるBGMも存在しないでしょう。
あまり多くは言葉では語りません。
それよりも、「Creepy Nuts」を一度聞けば、それだけで十分にどんな作品かは伝わると思います。
音楽を聴きながら読んでいると、自分の身体が夜の街を歩いているような、不思議な高揚感に包まれることでしょう。
「よふかしのうた」はこんな人におすすめ
ストレートに、学校がつまんないな、と感じる世代にまずおすすめです。
すごく共感できるし、通じるものがあるのではと思います。
そして同時に、そんな経験をしたことがある大人にこそ是非読んで頂きたい。
昔を懐かしんで刺さるジュブナイル作品。思わず「あったなぁ」と思える物語となっていますので、是非とも実際にお手に取って読んでみてください。
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