今回は「デトロイト・メタル・シティ」で知られる若杉公徳先生の新作「アキナちゃん神がかる」について解説します。
この作品はプロの漫画家アキナちゃんが、自分を襲った謎現象を切っ掛けに故郷に戻り、隠(オヌ)という怪異の戦いに巻き込まれていくとんでもオカルトストーリー。
若杉先生らしいシュールでクセの強い作品です。
本記事では「アキナちゃん神がかる」のあらすじや主な登場人物について、一部ネタバレも交えて解説してまいります。
「アキナちゃん神がかる」あらすじ
物語の主人公は女性漫画家アキナちゃん。
彼女は漫画家を目指して上京し、夢をかなえてプロの漫画家になりました。
しかしデビュー作はヒットしアニメ化もされたものの、2作目は鳴かず飛ばず。
今の3作目が勝負だと意気込んでいたものの、売り上げ低迷により連載終了となってしまいました。
連載を失い、また彼氏も失い怒髪天のアキナちゃん。
その頭にはツノが生え、目が覚めたら部屋がボロボロになっていました。
弱ったアキナちゃんが故郷のお母さんに電話したところ、すぐに実家から送っている「仁丹」を飲むように言われ、飲むとすぐにツノは引っ込みます。
このツノについて事情を説明してもらおうと故郷に戻ったアキナちゃんでしたが、そこにいたのは彼女を奇妙な期待の目で見る田舎の人々。
困惑するアキナちゃんに、祖父の康一は故郷・猫寄町の秘密を伝えます。
実はこの町には昔から「隠(オヌ)」という怪物が現れており、住民たちは居草神楽(=戦神楽)という荒神を宿す技を使って怪物を退治してきていました。
そしてアキナちゃんに生えたツノは「神がかり」と呼ばれ、荒神となる力を持つ者の証。
故郷の人々は「神がかり」として天性の才能を持つアキナちゃんに、荒神となって「隠(オヌ)」を倒してほしいと期待するのですが……
「アキナちゃん神がかる」モデルは大分県犬飼町
この物語の舞台となっているのは猫寄町という田舎。
勿論実在しない架空の街ですが、恐らくモデルは若杉先生の故郷である大分県犬飼町(現豊後大野市)と思われます。
猫寄町は温泉で有名な県にあることが描写されており、しかも若杉先生は「デトロイト・メタル・シティ」でも犬飼町のスーパーについて触れたことがありますから、ほぼ間違いないでしょう。
「アキナちゃん神がかる」主な登場人物
高部明菜(たかべあきな)
本作の主人公でプロの女性漫画家。
大学進学を機に故郷の猫寄町を離れて上京し、そのままプロデビューした。
デビュー作がたまたまヒットしたものの二作目は売れず、三作目も紙の単行本発売が打ち切られたことを理由に三巻で連載終了と、現在低迷中。
「神がかり」として天性の才能を持つ。
「仁丹」を飲むことで荒神の力を押さえていたが、本人は「神がかり」の事情や「仁丹」を飲む理由については全く把握していなかった。
田舎の人間の決めつけるような空気が嫌い。
朝霧幹夫(あさぎりみきお)
アキナちゃんの幼馴染で、かつてともに「居草神楽」を舞っていた26歳の青年。
現在も数少ない若手の「神がかり」として「隠(オヌ)」と戦っている。
故郷を捨てて出て行ったアキナちゃんのことを「裏切り者」と呼んで嫌っている。
兄貴分の荘一郎のことを異常なほどに慕っており、時折怪しげな空気を発している。
荘一郎
幹夫の兄貴分で40歳手前の男性。
アキナちゃんとも知り合いで子持ちの既婚者。
頼りがいのある大人の男だが、年齢により「神がかり」としての力は衰えつつある。
母
アキナちゃんのお母さん。
恰幅の良い優しい女性で、昔から何度もアキナちゃんに「神がかり」について伝えようとしていたが、これまで機を逃して伝えられずにいた。
一見、アキナちゃんの意志を尊重しており、無理に「神がかり」を継がせようとはしていないように見えるが……?
高部康一(祖父)
アキナちゃんのおじいちゃん。
全盛期は最強の「荒神」と呼ばれ、今でも時折前線に出ているようだが、かなり衰えてボケている。
「アキナちゃん神がかる」感想&評価
分類不能のシュールな切り口
序盤を読んだ感想としては、面白いんだけど良くわかんない作品。
「隠(オヌ)」という怪物(イノシシとかの獣が巨大化して狂暴化したもの?)と戦うオカルトバトル要素あり、田舎の閉鎖的な空気を描いたヒューマンドラマあり、幹夫のBL要素あり(?)とてんこ盛り。
作風そのものがシュールなので、余計にこれどういう話なんだと分からなくなっていきます。
ここに主人公の漫画家という職業をどう絡めていくのか(実体験を漫画にする?)とか、バトルと人間模様どっちがメインなのかとか、いい意味で方向性が全然見えない話。
面白いんだけど……面白いんだけど……
こんな人におススメ
前述したように面白いには面白いのですが、シュールで話の方向性が良く見えない作品なので、軽い気持ちで読むと多分「何だこりゃ?」で終わってしまうと思います。
ある程度そういった意味不明さを受け入れられる土壌のある大人にこそおススメの作品と言えるでしょう。
作者が作者なので分かりやすい予定調和的な結末は期待できず、良くも悪くも裏切られる可能性のある作品。
分かりやすい展開が好きな方には向かないと思います。
コメント