今回はアークライトさんから発売された「偉大なる初心者(ノービス)に捧げる、簡易にして究極のTRPG」という触れ込みの「のびのびTRPG」について紹介させていただきます。
この「のびのびTRPG」は、確かにゲームの事前準備もほとんど不要でルールも簡単、非常にお手軽なTRPGではあるのですが、本当に初心者のみでプレイしようとすると、非常にぐだぐだな内容となってしまうリスクのあるゲームとなっています。
本記事では「のびのびTRPG」の基本ルールやシステムの解説とともに、どうして初心者にはハードルが高いのか、その理由について解説してまいります。
なお、そもそも「TRPGって何?」という初心者の方向けに別途記事を用意しておりますので、宜しければそちらも併せてご覧ください。
「のびのびTRPG」とは?
基本ルール(ゲームシステム、遊び方)
まず「のびのびTRPG」では、最初に全員がPCカードを1枚とってそれぞれどんな役割のPCを演じるかを決めます。
続いて最初に誰がGMをするかを決めるのですが、これはジャンケンでもなんでも適当に決めてかまいません。
普通のTRPGではGMは事前に決めておくものですが、この「のびのびTRPG」では全員がGMを交代して行うので、ここで決めるのは順番だけなのです。
続いて実際の遊び方ですが、GMの左隣の参加者が「場面PC」、そのシーンの主役。
GMは場面カードを一枚引いて読み上げ、場面PCはその場面に応じて「判定」か「ロールプレイ」のどちらかを行います。
判定は能力値に2D6を振り足して目標値以上かどうかで決まるシンプルなシステム。
一方で、ロールプレイの場合は場面に応じた言動を即興で演じて、GMがそれを成功か失敗か判断します。
成功したら「光カード」、失敗したら「闇カード」を引いて、次の場面へ。
左回りにGMと場面PCを交代して三周したらクライマックスです。
誰かがクライマックスカードを引いたら、そのカードの内容に従って最後の判定に挑みましょう。
最後の判定に成功すればそれでよし、失敗しても別にゲームオーバーと言うわけではありません。
それまでの話の流れから何となく上手くいったことにしてもかまいませんし、リベンジを誓ってまた今度でもかまいません。
結末については参加者全員で話し合って決めればよいのです。
独自の用語解説
GM
普通のTRPGではシナリオなどを準備して参加者を楽しませるホスト役だが、「のびのびTRPG」においては全員が持ち回りでGMをするという斬新なシステムをとっている。
事前準備不要で確かに非常に楽ではあるが、これをGMと呼んでよいかは正直微妙。
場面PC
その場面(シーン)における主役。
光カード
手に入れるとPCにいい感じの特徴がついて強くなる。
闇カード
手に入れるとPCにおかしな特徴がついて面白くなる。
「のびのびTRPG」シリーズ
のびのびTRPGザ・ホラー
「のびのびTRPG」シリーズの第一作が、「ザ・ホラー」です。
クトゥルフからTRPGを知ったという方も多いですから、ホラー系はもはやTRPGのスタンダードと言っても過言ではないでしょう。
殺人現場、廃校、夢の中、ショッピングモール、様々な場面で襲い来る数多の怪異。
GMにとってもPCにとってもホラーは非常に話を膨らませやすいテーマですから、最初に遊ぶならこちらでしょうね。
今ならYouTubeでクトゥルフ系のプレイの様子が配信されていたりしますから、事前に見て参考にするのも良いかもしれません。
のびのびTRPGスチームパンク
「のびのびTRPG」シリーズ第二作目が「スチームパンク」。
スチームパンクというのは、いわゆるSFのジャンルの一つで、蒸気機関が現実の歴史を超えて発展した世界を描いたものです。
単純に蒸気に煙る街だけでなく、巨大な飛行船、あるいはその歴史の元となった超文明など、とにかく浪漫をこれでもかと詰め込んだ内容となっています。
昨今ではそれほどメジャーなテーマではありませんので、「ザ・ホラー」に比べると多少遊ぶ人間を選ぶ作品かもしれません。
もしスチームパンクに馴染みのない方が遊ぶなら、事前にスチームパンク系の小説やマンガでイメージを掴んでおくのも良いでしょう。
「のびのびTRPG」のレビュー(感想と評価)
システムはシンプルで準備も不要とお手軽だが、アドリブ力が問われる
さて、この「のびのびTRPG」ですが、本当に初心者だけでやるには少しキツイゲーム、というのが私の正直な感想です。
初心者だけで出来ないわけじゃありません。
実際、初心者にとって一番のハードルである事前準備、ルールの把握がほとんど不要という点は、非常に画期的と言って良いでしょう。
一方で、ゲームの展開が参加者の会話、アドリブに委ねられている部分が大きいため、本当に初心者だけでプレイすると、かなりの確率でぐだぐだな内容となってしまうでしょうね。
TRPGプレイヤーの多くは、最初から上手くロールプレイができるわけじゃありません。
ルール、システムでやることが決まっている方が最初は楽なんですよね。
私も最初にプレイしたTRPGはファンタジー系で、ファイター(戦士)役としてひたすら攻撃してただけ。ロールプレイができるようになったのは、何度もセッションを重ねてからでした。
結論:クリエイティブな人向け
この「のびのびTRPG」の製作意図を読んでみると、どうも制作者の方は一般的なTRPGのルールやデータの膨大さにずっと違和感を感じておられたようです。
「もっとお手軽なTRPGってないだろうか?」
と、実は初心者というより、制作者自身の好みに合わせて作られたのが「のびのびTRPG」だったわけですね。
・ダイスの結果に一喜一憂
・プレイヤー間で雑談
・ダイスと雑談から物語が生まれる
要はこの三つをTRPGの本質と考え、ゲーム上の知識や「最善手」を必要としない作品として作られたのが「のびのびTRPG」。
ある意味、真にクリエイティブな遊びができる方向けの作品と言えるでしょう。
逆に、重厚なルールやデータを愛するタイプのゲーマー(主に筆者のような和マンチ)には少し物足りないかもしれません。
TRPG経験者目線で言えばお手軽に遊べる楽しいゲームですが、初心者の方がプレイする場合には、一人は経験者(ストーリー回しが得意な人間)を確保しておくことをおすすめします。
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