今回は異色のSFホラーTRPGにして、皆さんも一度は耳にしたことがあるだろう傑作「クトゥルフ神話TRPG」について紹介します。
本作の特徴は何と言っても「SAN値」と呼ばれる正気度合いと、超常の神話生物たち。他のRPGとは異なり、「戦って勝つ」ことはおろか、キャラクターの「成長」や「生還」さえ、ある意味二の次という正解のないゲーム。
どうしようもない宇宙的恐怖を体感する、唯一無二の作品なのです。
ちなみに「TRPGって何?」という方向けに、こちらに初心者向けのTRPG記事を載せておりますので宜しければご覧ください。
「クトゥルフ神話」ってそもそもなんなの?
「クトゥルフ神話」とはそもそも何か?
「そもそも『クトゥルフ神話』って、良く言葉は聞くけど一体何なの?」
クトゥルフ神話とは、20世紀初頭のアメリカの作家、「H.P.ラヴクラフト」が「クトゥルフの呼び声」という小説を書いたことに端を発する作品群、あるいは設定そのものです。
その中で描かれていた「外宇宙より古来の地球に飛来した旧支配者と旧神の戦い、それが歴史に与えた影響、彼らを崇拝する邪神教団の暗躍」という壮大な設定が当時の作家仲間たちにバカ受けし、彼らがその設定を使って様々な作品を書いていったのが「クトゥルフ神話作品群」。
平たく言うと、ラヴクラフトが作った世界設定を元に、皆で色んな設定を妄想して物語に落とし込んでいったシェアードワールドコンテンツこそが、クトゥルフ神話なのです。
ラヴクラフト本人が書いたものよりも評価が高く、壮大な内容の作品も珍しくなく、「クトゥルフ」という表題にもなっている強大な神性も、後の神話全体の解釈では水を司る旧支配者の一柱という扱いになっています。
要は、「外なる神」という旧支配者、旧神よりもっと上位の存在を設定した作家さんが出てきちゃったんですね(ちなみに最強は「アザトース」という白痴の魔王です)。
「クトゥルフ神話」の世界観、概要
「クトゥルフ神話」の世界観の根本にあるのは「宇宙は人間に都合のよいようにはできていない」というものです。
人間は宇宙にとって微生物のようなもので、人間が宇宙そのものを理解することはできず、宇宙によって無慈悲かつ無意味に殺されることもあるという「宇宙の中心は人間ではない」という考え方。
強大な力を持ち、かつて地球、宇宙を支配した存在を偶然垣間見た人間は、それを「旧支配者」と呼び、それらと敵対する存在を「旧神」と呼びました(「旧神」は必ずしも人間の味方ではありません)。
「旧支配者」たちは「旧神」との戦いの果てに今は封印され、あるいは休眠期にあり、虎視眈々と復活の時を狙っています。
時に「旧支配者」たちの眷属が、あるいは「旧支配者」を崇拝する人間たちが、「旧支配者」たちを復活させようと引き起こす事件に巻き込まれ、それらに主人公たちが立ち向かうというのがこの物語の定番。
……まあ、人間たちがどうこうできるレベルのいざこざは、実際には「旧支配者」たちには何の影響も及ぼさない、というオチもまた、定番なんですけどね。
「クトゥルフ神話TPRG」ってどんなゲーム? SAN値って?
さて、こうしたクトゥルフ神話を題材にしたTRPGとはいかなるものか?
基本的に主人公たちは何ら特別な力を持たない一般人です。
勿論、芸能人とか富豪、学者といった、ある程度優れた能力を持つ人間を演じることはできますが、超常の力を持つ神話生物(=旧支配者、旧神、あるいはその眷属)の前ではほとんど意味を持ちません。
そんな彼らが、超常の事件に巻き込まれ、恐怖に晒され、時に生存を目指し、時に無惨に果てていく物語を演じていくのがクトゥルフ神話TRPGの醍醐味。
クトゥルフ神話TRPGにはゲームの根幹を為すルールが存在します。
「人間は基本的に神話生物を理解することができず、直視したり関わるだけで正気を失う」
これをルールで表したものが「SAN値(正気度ポイント、Sanity Point)」。
神話生物に遭遇したり、神話知識を得ることでこの値は減少していき、減少幅が大きければ一時的に発狂してしまい、ゼロになると永久的発狂となり、キャラクターとしての死を迎えてしまいます。
それこそ上位の神話生物などを直視すれば、ただそれだけで終わってしまう可能性もあることから「SAN値直葬」といった造語も生まれています。
事件を解決しなければ生き残れない、けれど事件に深入りするほどに正気を失っていく、二律背反の恐怖を上手く現したホラーゲームなのです。
おすすめリプレイ「るるいえ」「セラエノ・コレクション」
「内容は分かったけど、どうやって遊べばいいの?」
「なんだか難しそうだな……」
そんな疑問はごもっとも。まずは実際に遊んだ内容をまとめたリプレイを読んでみましょう。
遊び方やゲームの雰囲気が掴めるはずですよ。
おすすめは次の2シリーズ。
「るるいえあんてぃーく」シリーズ
実家が骨董屋を営む女子高生が、常連客や友人たちとともに怪事件に立ち向かう人気シリーズです。
キャラクターがとてもポップで、絵柄もとてもかわいいので、ホラー作品が苦手な方でも抵抗感なく読める内容となっております。
舞台を変えて続編やコミック版も発売されていますよ。
「セラエノ・コレクション」
こちらも大富豪の女子高生を中心に、クトゥルフ神話にかかわる事件に立ち向かうリプレイです。
どちらかというと積極的に事件に挑んでいく内容となっており、遊び方の一例として良いお手本となるのではないでしょうか。
勿論キャラクターもかわいいし、読み物としてもとても面白いですよ。
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