「ゴブリンスレイヤーTRPG」の概要と感想~継戦能力の維持や集団戦の補正がシビア~


 今回はメディア展開が進むダークファンタジー「ゴブリンスレイヤー」のTRPG版について紹介したいと思います。

 一般的にラノベやマンガ作品をTRPG化した作品は、どうしても原作ありきでゲームとしての内容が薄くなりがちなもの。しかし本作は原作の根底にTRPGの概念があること、そしてルール制作に日本のTRPGの第一人者たるグループSNEが関わっていることから、中々にコアで歯ごたえのあるTRPG作品となっております。

 なお「そもそもTRPGって何?」という方向けに用語集初心者向け記事もありますので、良ければこちらも併せてご覧ください。

「ゴブリンスレイヤー」ってそもそも何? 時々炎上してるけど?

元は「やる夫スレ」のAA作品→小説化→メディア展開

 そもそもゴブリンスレイヤーとは、元は「やる夫スレ」に掲載されていたAA(アスキーアート)作品で、「対ゴブリン剣術があるならゴブリンだけを退治する冒険者がいるのでは?」という疑問から着想を得て生まれた作品だそうです。

 それを原作者が友人のすすめを受けて小説化し、それが編集者の目にとまって書籍化、マンガ化、アニメ化、そしてTRPG化と次々メディア展開が進んでいったわけです。

 原作の概要は、四方世界という中世ヨーロッパ風のファンタジー世界を舞台に、ゴブリンに強い恨みを持ち、ゴブリンを殲滅することだけに全てを捧げる「ゴブリンスレイヤー」と呼ばれる戦士の活躍を描いた物語。

 初心者向けの雑魚モンスターであるゴブリンも、実は群れをなし、狡猾な罠を用いてくる厄介な存在で、油断すれば熟練の冒険者でも足を救われることがあります。

 更に強力なボスに率いられた群れは、村や大きな街すら危機に陥れることさえあるのです。

 しかし冒険者からすれば、倒しても大した名誉も報酬も得られない雑魚モンスター。結果、油断した初心者冒険者がしばしばゴブリンの餌食になっている様子が描かれています。

 そんな中で主人公は、一切油断することなく、容赦なく、淡々とゴブリンを狩り続けているわけですね。

 ちなみに「何でこの世界の冒険者はゴブリン相手に舐めプをしてやらかす奴ばっかなんだよ!」と炎上することもありますが、これには一応理由があります。

 ゴブリンは単独ではとても弱いモンスターで、実際に脅威を体感した者でなければ中々伝わりにくいもの。

 そして体感した時には大抵取り返しがつきませんし、そもそもそうした脅威を伝える情報伝達手段そのものが発達していない世界でしょうしね(後は物語的に……ねぇ?)。

実は物語の根幹にあるのがTRPG

 実はこの原作となる物語は、TRPGに大きく影響を受けています。

 基本的な世界観は勿論ですが、なんとこの世界では神々が世界の支配を欠けてサイコロ勝負をしているんです。

 その様子はまさにTRPGのGMとPLそのもの。

 ただ普通でしたらサイコロの出目によって物語の行く末が左右されるのですが、主人公であるゴブリンスレイヤーはサイコロの出目に頼らない殺伐としたやり口でゴブリンを殺していくので、神々もそれに手を焼かされているのだとか。

 めんどくさいPLに手を焼かされるGM……まさにTRPGあるあるですね。


「ゴブリンスレイヤーTRPG」の特徴と感想

基本システムはソードワールド、勇者は明らかに別ルール

 基本となるシステムは、グループSNEさんが制作しただけあってソードワールドと似通っています。

 判定は「能力値修正」+「技能修正」+「2D6」が基本で、初心者にも非常にとっつき易い内容なのではないでしょうか。

 能力値はダイス目によって決定されますので、初期キャラクターでもダイス目によってその強さが大きく左右され、そういったのが苦手な方は何らか調整が必要かもしれませんね。

 原作は「ゴブリンスレイヤー」ですが、別にゴブリン殺しに特化する必要は全くなく、それこそごく一般的なファンタジーTRPGとして遊べる世界観になっています。

 ただ、経験を積んで成長しても超人になれるシステムではないので、英雄にはなれても「勇者」には恐らくなれません(魔神王とかのデータを見るに、それを倒す「勇者」はどう考えても別ルールの生き物です)。

 また、ゴブリンスレイヤーのサイコロを振らない戦術については、さすがに再現されていませんので、もしやってみたい方はGMとその戦術の可否について頑張って議論してみてください(やり過ぎはダメですよ)。

消耗ルールやモブによる補正など、やたらとリアル、サプリメントは必須

 本作ならではの特徴と言えば、時間経過による消耗ルールや、集団戦における数による補正でしょう。

 他のTRPGでは省略(無視)されることが多いですが、長時間戦うことによる疲労や敵の数(モブ)の多さなどが、このゲームではリアルに判定に影響してきます。

 まさに弱いゴブリンでも、集団で攻めてこられると対抗できなくなってしまう原作のリアルさを再現しているわけです。

 他にも魔法の使用回数はかなり少なくシビアなものとなっていますし、他のTRPGでは役立たずとなることが多い「投擲」技能がかなり有用だったりと、原作ファンなら思わずニヤリとしてしまう設定となっていますね。

 あとは、もし遊ぶのであれば基本ルールブックと併せてサプリメントの購入検討をおすすめします。

 何故なら、サプリメントで導入された『武技』があるかないかで戦士系キャラクターの強さや自由度が全く変わってくるからです(魔法使い系も『高位呪文』とかがありますが、戦士系は本当に、劇的に変わります)。TRPGプレイヤーなら、絶対に欲しくなるデータや要素が満載ですよ。


「ゴブリンスレイヤーTRPG」に興味があるなら

まずはリプレイ「死と罠の街ランサペール」


 「ゴブリンスレイヤーTRPG面白そうだな」と思っていただけたそこのあなた。

 それではまずリプレイで実際のプレイの雰囲気を確かめてみましょう。

 「死と罠の街ランサペール」

 陰謀渦巻く港町を舞台に、出自も目的もバラバラの四人組が、遺跡探索に組織を巻き込んだ陰謀に大暴れする内容となっており、ある意味「ゴブリンスレイヤーTRPG」でどこまでのことができるかが分かりやすく描かれた作品です。

こんな人におすすめ

 「ゴブリンスレイヤー」原作ファンの方には当然おすすめです。

 実際にTRPGをプレイするところまでいかなくとも、原作元ネタがTRPGですから、それをシステム化したファンブックとして読んでみても十分楽しめるのではないでしょうか。

 後はソードワールド系、グループSNE系のスタンダードなファンタジーRPGシステムが好きな方にもおすすめです。

 消耗や集団戦のルールなど、この作品ならではの要素もあって、TRPGに詳しい方でも非常にワクワクする内容となっていますよ。



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