今回は「うらみちお兄さん」で知られる久世岳先生の最新作「ニラメッコ」について紹介します。
「ニラメッコ」はシェアハウスで暮らす若手お笑い芸人たちの苦楽と悲哀を描いたコメディ作品。
華々しい「笑い」の裏で、売れない、誹謗中傷、相方や恋人との関係、将来の不安など、様々な苦悩を抱える若者たちの青春群像劇となっています。
本記事では、あらすじや登場人物の紹介を交えつつ、そのちょっぴり闇深い魅力について深掘りしてまいります。
「ニラメッコ」あらすじ(ネタバレ注意)
水吉令(23歳)は「ニラメッコ」というコンビを組んでいる若手芸人。
彼は相方の朝木和(24歳)、「潮来(いたこ)」というコンビを組む八潮侘助(27歳)、来海小太朗(26歳)、「門真アミーゴ」の土井柴雄(30歳)の5人とシェアハウスで共同生活を送っています(土井の相方、須胡井宙太(30歳)は恋人と同棲中)。
東京都内の一軒家で駅まで徒歩6分という好立地にありながら、家賃一人25,000円という破格の安さを誇る事故物件に住む彼らは、日々様々な不安と向き合っていました。
売れない時間、同年代の活躍、ネットの誹謗中傷。
「ニラメッコ」の水吉は、奔放な相方との意識の差や、不安定な日々で次第に人間嫌いになっていく自分に自己嫌悪。
「潮来」の八潮と来海は、少しずつ人気が出てきてTVのオファーも増えてきましたが、SNS上の勝手な言葉に苛立つ日々。
「門真アミーゴ」の土井には自分より売れている芸人の恋人がいて、須胡井とともに、いつまでガムシャラに夢を追えるのか限界を感じていました、
不安定な日々の不安を、身を寄せ合い、誤魔化しながら過ごす彼ら。
大御所芸人の幽霊に憑りつかれたり、大先輩に大阪に帰って来いと勧められたり、朝木の昔の相方に粘着ストーカーされたり、昔の女(?)に蹴られたり、色んなことがありながら、それでも日々「笑い」に向き合い続けています。
「ニラメッコ」主な登場人物(ネタバレ注意)
水吉 令(みなよし りょう)
23歳の若手お笑い芸人。
「ニラメッコ」というコンビのツッコミ担当。
かわいい系の顔立ちだが、元キックボクサーで、元いじめられっ子というナチュラルに闇深い青年。
芸人として活動している際はキャラ付けの為、前髪を上げて伊達眼鏡をかけている。
普段はコンビニでバイトをして生計を立てている。
八潮から大御所芸人の幽霊を押し付けられ、憑りつかれてしまう。
朝木 和(あさき やまと)
24歳の若手お笑い芸人。
「ニラメッコ」のボケ担当でネタもこちらが書いている。
自由奔放かつ短期な性格で、色んな所でもめ事を起こすが、見た目に反して非常に喧嘩は弱い。
刹那主義的な感性の持ち主で、面白いかどうかが最優先。
様々な女性のところを渡り歩くダメンズで、よく財布と鍵を無くし、幽霊が苦手で、信じられないほど犬に吠えられる。
水吉と組む前は下柳という男とコンビを組んでいた。
八潮 侘助(やしお わびすけ)
27歳の若手お笑い芸人。
「潮来」のツッコミ役で進行役も出来る。
見た目は目に光の無い三白眼で長い黒髪を後ろで結び、大量のピアスを耳に付けた不気味な青年。
霊感が異常に強く、週4回ぐらい金縛りにあっている。
前職はゲスな雑誌記者で、恨みを買って車でひかれ、右目の光を失っている。
普段はレンタルビデオ屋やパチスロ店でバイトをしている。
来海 小太朗(くるみ こたろう)
26歳の若手お笑い芸人。
「潮来」のボケ担当。
見た目は金髪ロン毛で、唇と耳にピアスをつけただらしない雰囲気の男。
実際、女性には恐ろしくだらしなく、バンギャに7股をかけて刺されたこともある。
というか、八潮との初対面の時に養成所に刺されたままやってきた。
こう見えて、子供、ドクターフィッシュ、猫が大好きで、犬猫が死ぬホラー映画を観るとしばらく鬱になる。
土井 柴雄(どい しばお)
30歳のお笑い芸人。
「門真アミーゴ」のツッコミ担当。
高学歴という言葉が嫌いな高学歴で、普段は家庭教師のアルバイトをしている。
シェアハウス最年長だが「潮来」と比べると全く売れる気配がなく、一番将来に悩んでいる。
大阪に岡野光子というかわいい、彼らより売れている芸人の恋人がいる。
須胡井 宙太(すごい ちゅうた)
30歳のお笑い芸人。
「門真アミーゴ」のボケ担当。
明るい雰囲気の好青年だが、売れていく若手を見ると時折焦りと闇が顔を覗かせる。
「うらみちお兄さん」に登場したうたのお姉さん「多田野詩乃(ただのうたの)」の彼氏。
同棲中で、すっかり尻にひかれている。
「ニラメッコ」感想&評価
等身大の若者たちのちょっとした「闇」に共感
売れない若手芸人たちの青春群像劇。
紹介文にこんなワードが出てくると、夢見がちで刹那的な若者たちを想像してしまいますが、この「ニラメッコ」の登場人物たちはそんな浮世離れした若者ばかりではありません。
一部そういうのもいるにはいますが、主人公格の水吉や、最年長の「門真アミーゴ」は、本当にどこにでもいる普通の青年。
作中で描かれる日々のちょっとした生きづらさ、闇を感じさせる部分は、芸人に限らず多くの人々が共感できるものではないかな、と。
その上で、この作品の良いところは「笑い」に非常に真摯なところ。
第1話で「ニラメッコ」が先輩芸人たちから、
「ああいう連中は」
「笑いの沸点が低いんだからさ」
「本当の笑いってやつを」
「わかってないんだよな」
と忠告されますが、それに対し朝木はバッサリ。
「自分らで下に見とる」
「女子供も笑かせられん」
「三流芸人が」
「一丁前に客選ぶな」
ホントその通り。
筆者は芸人が「笑いを分かってない」「笑いを勉強して欲しい」とか、アート気取りの発言をするの大嫌いなので、これだけで思わず続きを読もうと決意していましたね。
お笑いが伝統芸能やアートより下、と言っているわけではなく、客を選ぶ「笑い」を誇んなよ、という意味で。
こんな人におススメ
「うらみちお兄さん」が好きだった方、間違いなくハマるので読みましょう。
若干、あっちより若くてふわふたした感じではありますが、基本テイストは同じなのでまず間違いないです。
基本はコメディなので空き時間に軽く読めるところも良し。
男女問わず楽しめる内容ですが、年齢層的には学生さんより社会人向けでしょうか。
ゲラゲラ笑うというより、噛みしめるような笑いが楽しめる作品となっていますので、興味のある方は是非是非手に取ってみて下さい。
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