「フェルマーの料理」感想&評価(ネタバレ注意)~前作「てんまんアラカルト」から続く傑作グルメ漫画、打ち切り説の理由は?~


 今回は「アオアシ」の小林有吾先生が月間少年マガジンで不定期連載中のグルメ漫画「フェルマーの料理」について紹介します。

 この作品は数学者になるという夢に破れた少年が、天才シェフ・朝倉海との出会いを切っ掛けに料理の道を歩み始める物語。

 小林先生の前作「てんまんアラカルト」の続編にあたり、前作を知るとより一層先の展開が楽しみになる一作です。

 本記事では「フェルマーの料理」のあらすじや主な登場人物、打ち切り説が流れる理由などを中心に深掘りしてまいります。

「フェルマーの料理」あらすじ

 主人公の少年、北田岳は名門私立ヴェルス学園に通う特待生。

 かつては天才少年として数学者の道を志していたものの、自分はその道でトップには立てないと悟り、数学オリンピックの最終選考で答案を白紙で提出し、自ら舞台を降りてしまいます。

 目標を見失い茫洋とバイト先の学食で賄い料理を作っていた岳。

 そんな彼の前に現れたのが天才シェフ・朝倉海でした。

 海は岳がスプーンとフォークを人が温かいと感じる最適な温度・45度に管理している様子を見て興味を持ち、岳が作る賄いナポリタンを口にします。

 そのナポリタンに感動した海は岳の数学的思考は料理のためにあると、その才能を絶賛。

 岳を料理の道に誘います。

 海の作る料理とそこに込められた熱量に魅了され、その後東大入学を蹴って海の店のドアを叩くことになった岳。

 しかし岳が飛び込んだ世界、海が目指すものは果てなく過酷。

「俺たちは、料理をもって神に挑む」

前作「てんまんアラカルト」とは?


 「フェルマーの料理」は数学の天才・北田岳と料理の天才・朝倉海の物語ですが、この作品には前日譚とも呼べる物語が存在します。

 それが小林先生の前作「てんまんアラカルト」。

 こちらの主人公は、失踪した天才シェフ・渋谷克洋を師と仰ぐちゃらんぽらんな高校生・七瀬蒼司。

 渋谷との再会を望む七瀬蒼司の前に、ある日彼の幼い娘・天満が現れます。

 蒼司は渋谷からの頼みに従い、天満の食事の世話をしつつ、渋谷の店を訪れる客の相手をすることになるのですが……

 この「てんまんアラカルト」には、七瀬蒼司の親友として高校時代の朝倉海、天満の世話係として寧々が登場しています(あとついでに布袋も)。

 寧々はともかく、こちらの海は「フェルマーの料理」での狂気が全く感じられない爽やかな好青年で、どう闇堕ちしたらああなるんだという変わりっぷり。

 この時は、天才は蒼司で、海は秀才、そして隠れた超天才が天満、といった感じでしたね。

 「てんまんアラカルト」はラストに実は渋谷が海の先生で海を迎えに来たり、蒼司は天満の才能を引き出すためのエサなんじゃ、みたいな不穏な雰囲気と幾つもの謎を残したまま、突如打ち切りのような形で終了しています。

 小林先生はこの時、何年かしたら続編を描くような発言をしており、それが「フェルマーの料理」にあたります。


「フェルマーの料理」主な登場人物

北田 岳(きただ がく)

 名門私立ヴェルス学園に通っていた少年。

 幼い頃から将来を嘱望された数学の天才だったが、ライバルたちの数学にかける情熱や才能に気おされ、数学者としての道を諦める。

 そんな時、学園を訪れた天才シェフ・朝倉海と出会い、彼に誘われて料理の世界へ足を踏み入れることになる。

 高校卒業後は、東大に合格にしていたにも関わらずそれを辞退し、海が経営する都内の一つ星レストラン「K」で見習いシェフとして働きはじめる。

 料理・味覚を数値化するだけでなく、食べる人間の主観や厨房での動き方まで数式で表わそうとする変態。

朝倉 海(あさくら かい)

 史上最年少で一つ星を獲得した天才シェフ。

 年齢は23歳で、都内の一つ星レストラン「K」でオーナーシェフを務めている。

 自分勝手で傲慢な一面があるが、料理に関してはとにかく真摯で妥協がない。

 岳を料理の道に誘ったのも、彼の数学的思考が自分の料理を高めるために役立つと考えたから。

 その目的は「宇宙史上まだ誰も発見していない唯一無二のレシピを築き上げること」

 神に挑む発言だけでなく、

「歴史を『俺以前と俺以後』に分断する」

 など、厨二心をくすぐる発言が目立つ。

赤松 蘭菜(あかまつ らんな)

 海の下で働くスタッフの一人で副菜担当。

 年齢は20歳で、さっぱりした雰囲気の美女。

 レストラン「K」が東京で店を構える以前、そこで料理店を営んでいた一家の娘。

 そのため海に対しては少し複雑な感情を抱いている模様。

布袋 勝也(ほてい かつや)

 海の下で働くスタッフの一人。

 独立すればいつでも星を獲得できるレベルの一流料理人だが、何らかの目的のために海の下で働いている。

 前作「てんまんアラカルト」でも新進気鋭の若手料理人兼かませ犬として登場していた。

寧々(ねね)

 海の下で働くスタッフの一人で給仕長。

 牛乳瓶の底のような分厚いグルグルメガネが特徴の女性で、かなりマイペースで天然。

 前作「てんまんアラカルト」では渋谷に仕え、天満の世話係をしていたが、今現在どうして海の下で働いているのかは不明。

魚見 亜由(うおみ あゆ)

 私立ヴェルス学園で岳の同級生だった少女。

 高校時代は岳と同じ学食でバイトをしており、何かと岳のことを気にかけていた。

 スポーツ科に通っており、卒業後は都内の大学へ水泳で推薦入学を果たす。

武蔵 神楽(むさし かぐら)

 岳と同い年で、幼い頃から岳と数学で競い合ってきた少女。

 数学オリンピックで日本代表となり、銀メダルを獲得している。

 幼い頃は岳の自由な発想に関心を持っていたが、徐々に岳の思考が固くなっていったことに失望しつつある。


「フェルマーの料理」打ち切り説が流れる理由

 「フェルマーの料理」に関していると、よく「打ち切り」というワードが目につきます。

 まず誤解のないように、最初に述べておきますが「フェルマーの料理」は打ち切られていませんし、今も連載は続いています。

 打ち切り説が流れる理由は、恐らく二つ。

 ①不定期連載
 ②前作の終わり方

 そもそも「フェルマーの料理」は当初から月間少年マガジンで「不定期連載」で始まった作品なのですが、そのことを正確に把握している人はおまり多くありません。

 そのため雑誌を読んで、

「最近『フェルマーの定理』載ってないな~」
→「打ち切られた?」

 と疑念を持つ人が多いのでしょう。

 さらに言うならば、前作「てんまんアラカルト」があんまりな終わり方をしてしまったこともあり、余計に打ち切りを心配しているのかもしれません。

 「フェルマーの料理」は人気もありますし、不定期連載で小林先生のペースでやっていけますから、打ち切りや突如連載終了の心配はない……はずです(願望)。

「フェルマーの料理」の感想&評価

 この「フェルマーの料理」は、数学的思考という独特のアプローチで料理の美味しさを表現することに成功したグルメ漫画。

 よくわからない漫画的表現に頼ることなく、主観的な「美味しさ」を論理的に説明している傑作です。

 ふわっとした「美味しそう」ではなく、なるほど「美味しいんだ」という納得感のある作品。

 他のグルメ漫画でもいくらか科学的なアプローチというのは用いられていますが、ここまで徹底している作品は「フェルマーの料理」以外にないでしょう。

 その上で、画力、キャラクターの深掘り、ストーリー展開全てが高水準。

 筆者は「てんまんアラカルト」の頃からのファンなので、蒼司や天満がその後どうなったかも含め、この続編は非常に楽しみにしていました。

 「フェルマーの料理」から読んでも楽しめますが、「てんまんアラカルト」を読むとより一層楽しめますので、興味のある方は是非前作から読んでみてください。



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