今回はマガジンポケットで連載中の話題作「いじめるヤバイ奴」について紹介します。
この作品、タイトルや1話前半の過激ないじめシーンに数々の苦情が寄せられ、公式TwitterもアカBANされかけたという実にヤバイ内容。どうせいじめられる側がかわいそうなだけの暗い内容なんでしょ、とタイトルで拒絶反応を示した方も多いのではないでしょうか。
しかし騙されてはいけません。この作品で本当にヤバイのは、「いじめている側」でなく、「いじめられている側」なのですから。
「いじめるヤバイ奴」のあらすじ(ネタバレ注意)
物語はとある高校の教室で、白髪の少女が椅子に縛られ、いじめられているシーンから始まります。
少女の名は白咲花。彼女は一晩中教室の椅子に縛り付けられ放置され、少女としてはとても見るに堪えないひどい状態(過激な内容につき、自主規制)となっていました。
それを行ったのは仲島達也という少年。この物語の主人公です。
仲島は憔悴した白咲をクラスメイトの前でさらに辱めるのですが、クラスメイトは仲島を恐れて見て見ぬふり。担任教師でさえ、援助交際をネタに仲島に逆らうことができず言いなりです。
そんなある日、そんな状況に我慢できなくなったクラスメイトの田中が、白咲を救おうと仲島に敢然と立ち向かいます。仲島に軽くあしらわれる田中ですが、それでも田中は諦めず、白咲のためにと行動を続けます。
ですが田中は、仲島と白咲、2人の本当の関係を理解できていなかったのです。
実は仲島は根は優しい普通の少年。彼は白咲に脅されて、無理やり白咲をいじめさせられていたのです。
何故白咲がそのような狂気の行動に出ているのかは分かりません。
ですが、仲島は白咲を虐め続けなければ時に命にも関わる強烈なお仕置き(内容は自主規制)を受けてしまうため、内心は恐怖とストレスでいっぱいです。
仲島は白咲から逃れるべく、田中を利用して自分のいじめを止めさせようとしたり、様々な策を練りますが失敗ばかり。
そして次第に明らかになっていく白咲の過去。彼女が仲島に自分をいじめさせ続ける理由は果たして何なのか。
複数の狂気が交錯する物語の行く末は、そして仲島に救いはあるのか……
これは「いじめる側」の視点から、いじめの辛さと虚しさを描いた作品です。
「いじめるヤバイ奴」の主な登場人物(ネタバレ注意)
仲島 達也(なかじま たつや)
主人公。いじめる側にして被害者という奇妙な、そして不憫な少年。
白咲に対して文字で書くことも憚れるような苛烈ないじめを行っているが、その全てが白咲により強要させられたやらせ。
ただし、いじめが中途半端であれば白咲から命の危険すらあるお仕置きを受けることになるため、いじめの内容には一切の手加減がない。
根は優しく、ごく普通の少年であり、何とかして白咲から逃れたいと策を練っているが、その全てが失敗している。
クラスメイトの青山紗季には白咲との本当の関係を知られており、青山にだけは心を許している。
白咲 花(しろさき はな)
いじめられる側にして加害者という奇妙な立ち位置の少女。
仲島から日々、苛烈ないじめを受けているが、その全てが自分で強要した自作自演。
仲島を破滅させたいとか、いじめられるのが好きだとか、そんな様子は一切見受けられず、何故自分へのいじめを強要するのか、明確な理由は未だ語られていない。
外見は白髪をボブカットにした薄幸そうな少女。仲島からいじめられる前は黒髪だったので、いじめられること自体は白咲にとってもストレスである模様。
仲島に好意を抱いているようで、仲島以外にいじめられること、仲島が自分以外をいじめることは認めておらず、その行動原理は謎めいている。
中学時代に親友がいじめの果てに殺されたことが関わっているようだが……
ちなみに、いじめが物足りないと、仲島に対してアイスピックやペンチを使ってお仕置きをする。
田中 浩太(たなか こうた)
仲島たちのクラスメイトで、平凡な見た目だが正義感あふれる少年。
白咲を救うべく、いじめの主犯仲島に敢然と立ち向かう勇気あるピエロ。
青山 紗季(あおやま さき)
仲島たちのクラスメイトの少女で、仲島と白咲の会話を聞いて2人の本当の関係を知っている。
外見は長い黒髪が印象的な明るい少女。料理上手で社交的。
一見するとまともそうだが、仲島に異常な好意を持っており、自分と仲島以外の存在を見下している。
仲島を自分のものにするためには殺人さえ厭わない危険思想の持ち主で、素人ながら極めて高い白兵戦能力を持つ。
加藤 雄介(かとう ゆうすけ)
仲島のクラスに転校してきた本物のいじめっ子。
仲島が偽物のいじめっ子であることを見抜き、ちょっかいをかけるが、白咲の逆鱗に触れてボコボコにされる。
緑田 夏香(みどりだ なつか)
別のクラスでいじめにあっていた少女。
仲島に助けられてから彼に好意を抱く。仲島の気を引くために色んな奴にいじめられているふりをする。
「いじめるヤバイ奴」の感想と考察
この物語の「いじめ」って何なんだろう……?
読み進めていくほどに、いじめている仲島が一番不憫でまともに見えてくるという(実際その通り)この作品。
作者は普通とは違う切り口からいじめを否定したいと筆をとったそうですが、いじめの形態が特殊過ぎて果たして狙い通りになっているのかどうか……
いじめがテーマのようで、実は白咲というヤンデレの話なのかな、と思っていたら、白咲の行動の背景には中学時代のいじめが関わっていることが分かってくるという複雑な構造。
いじめって何なんだろう?
この物語における「いじめ」は何か、その謎に引き込まれる、ミステリ作品を読んでいる気分にもなってきますね。
白咲が自分をいじめさせる理由と狂気、中学時代の事件
この物語の最大の謎である、白咲が自分をいじめさせる理由。
どうやらそこには、中学時代にあった白咲の親友、西山恵美に対するいじめと殺人事件が関わっていることが分かってきています。
西山は中学時代いじめられており、白咲はそのいじめを止めることができませんでした。
そしてそのいじめがエスカレートして、半ば事故のような形で西山はいじめ加害者に殺されてしまい、その加害者も周囲に責められて自殺してしまったという凄惨な事件。
白咲はそのことを悔いているようですが、それがどうして、自分をいじめさせることに繋がるのかは分かっていません。
ただ一つ、白咲が仲島を「大切な人」だと思っていることに嘘はないようです。
白咲の狂気の真相は、そして彼女が救われる日は来るのか……今後の展開が待たれます。
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