「クズの本懐」感想~アニメ化・ドラマ化もされた横槍メンゴの代表作、何度でも読み返したくなるドロドロのあらすじと登場人物~


 今回はかつてビッグガンガンで連載され、2018年に完結した横槍メンゴ先生の代表作「クズの本懐」について紹介します。

 本作は高校生偽装カップルを中心としたドロドロの恋愛模様を描いた物語。

 アニメ化・ドラマ化もされた人気作で、横槍メンゴらしさがこれでもかというぐらいに詰め込まれた作品となっています。

 完結してかなり経っていますが、つい先日重版が発表されたことでも話題となっていました。

 本記事ではそのタイトルに恥じぬヒリつく恋愛模様の感想を、あらすじと登場人物の感想を踏まえ語ってみようと思います。

「クズの本懐」あらすじ

 高校2年生の花火と麦は、周囲から羨ましがられる校内一の美男美女カップル。

 この二人にはある秘密がありました。

 それは互いに別に好きな人がいること。

 花火の好きな人は、幼馴染のお兄ちゃんで新任教師の鳴海。

 麦の好きな人は、かつての家庭教師のお姉さんで新任教師の茜。

 しかし鳴海と茜は徐々に距離を詰めており、恋人一歩手前のいい雰囲気。

 そんな様子を見せつけられる同じ境遇の花火と麦は、互いの寂しさを埋めるため付き合っているフリをすることにしたのです。

 二人が決めたルールは三つ。

①互いを好きにならない
②どちらかの恋が成就したら関係終了
③互いの身体的欲求はどんな時でも受け入れる

 互いを好きな人の代わりにして満たし合う、歪んだ関係です。

 

 一方、新任教師同士順調に距離を縮めていく鳴海と茜でしたが、実はこちらにも歪んだ秘密が。

 実は茜は清楚に見えて性的にかなり乱れた女性。

 鳴海に対して好意を持っているわけではなく、ただ”花火に好かれている鳴海”を誘惑していただけでした。

 要は、美少女である花火から鳴海を奪って、花火の絶望する顔を見たかっただけ。

 

 茜に翻弄される形の花火と麦。

 しかし辛いのは二人に本気で恋をする少女たちにとっても同じことでした。

 同性ながら花火に恋愛感情を抱く早苗。

 幼馴染の麦を王子様と思い好意を抱くモカ。

 

 ドロドロの関係に疲れた花火は、麦と本当の恋人になろうと考えるのですが……


「クズの本懐」主な登場人物

安楽岡 花火(やすらおか はなび)

 本作の主人公の一人で高校2年生の美少女。

 成績優秀で家庭的で前向きと、男子からの人気の高い理想的な少女。

 表向きは麦と付き合っているものの、幼馴染のお兄ちゃん・鳴海にずっと恋心を抱いている。

 実はメインキャラ4人の中では一番真っ当でピュアな感性の持ち主。

 鳴海に失恋した後は、彼女なりに本気で麦と向き合おうとしていた。

粟屋 麦(あわや むぎ)

 本作の主人公の一人で高校2年生の少年。

 サラサラ髪の王子様のような容姿をしたイケメンで非常にモテる。

 花火と付き合っているフリをしているが、中学時代の家庭教師だった茜に好意を抱いている。

 実はクズ女しか好きになれない歪んだ性癖の持ち主。

 茜が実はビッチだということも理解していて、その上で好意を止められないでいる。

 9巻番外編では久しぶりに再会した花火への思いを自覚し……

皆川 茜(みながわ あかね)

 花火たちが通う高校の音楽担当新任教師。

 一見すると純粋無垢な清楚系美女。

 しかしその本性は性的に乱れまくった性悪ビッチ。

 花火や麦の想いを全て理解した上で、それを弄ぶ「クズの本懐」というタイトルを象徴するような女性。

 はた目には同じ新任教師の鳴海とイイ感じだが、元々それは”美少女の花火が好きな鳴海”を誘惑して、花火の悔しがる顔を見たいがために近づいただけだった。

 ……が、最終的に想像を遥かに超える怪物だった鳴海に捕まり、結婚することになる。

鐘井 鳴海(かない なるみ)

 花火たちが通う高校の国語担当新任教師。

 花火の幼馴染のお兄ちゃんで彼女から好意を持たれているが、そのことには気づいていない。

 温厚で真面目で冴えない雰囲気の男。

 同僚の茜に好意を抱き、茜に弄ばれていた。

 

 ……が、実はこの男こそこの物語最大最強の怪物。

 茜が好きでやっていることなら、誰に抱かれようとかまわない、止めなくていいと全てを受け入れる人間離れした愛の持ち主。

 最終的にその大きすぎる愛で茜の全てを包み込み、彼女を射止める。

絵鳩 早苗(えばと さなえ)

 花火にとって唯一の女友達。

 ロングヘアで大人っぽい雰囲気の美少女で、花火とは痴漢から助けてもらったことが切っ掛けで仲良くなった。

 花火は早苗を大切な友人と思っているが、早苗は花火に百合的な好意を持っている。

 麦から花火を奪おうとなし崩し的に花火と関係を持つが、結局失恋。

 従兄弟の篤也から熱烈なアプローチを受けていたが、彼のことはフッて”ゆか”という年上の女性と付き合い始める。

モカ/鴎端 のり子(かもめばた のりこ)

 麦の幼馴染でロリっぽい雰囲気の愛らしい美少女。

 本名で呼ばれることを嫌っており、人にはモカ(最可=最も可愛いの略)と呼ばせている。

 王子様のような麦に幼い頃からずっと好意を抱いていた。

 花火とは仲が悪く、麦から花火を奪おうとするが、麦の「クズ女レーダー」にピクリとも反応しなかったため、フラれてしまう。

 高校卒業後は服飾関係の学校に進学し「恋はまだいい」と独り身を貫いている。


「クズの本懐」感想(結末についてのネタバレ有り)

8巻までは実質、茜の物語

 この「クズの本懐」は、ドロドロなんだけど根っこのところは非常に純粋な恋愛物語です。

 純粋だからこそ「本物」の恋を諦められず、偽物の関係で自分を誤魔化そうとする花火と麦。

 そんな二人に一途に恋をする早苗とモカ。

 そして周囲の人間の想いを全て理解して、弄ぶ悪女の茜と、そんな茜の全てを受け入れ愛してしまう鳴海。

 「クズの本懐」は8巻までが本編、9巻はその後を描いた番外編という位置付けなのですが、本編の実質的な主人公は茜でしたね。

 タイトルを象徴するようなクズビッチの女性が周りを振り回しながら、最後はそんなクズな自分の全てを受け入れてくれるやべー男に捕まって幸せになるという結末。

 浮気をすると宣言する女を嬉しそうに受け入れる男って……何て言うか化け物ですよね。

 一方、本来の主人公カップル(偽装)は鳴海と茜にフラれ、偽装カップルも解消してそれぞれ別の道を歩むことになります。

 互いに惹かれつつあることは自覚しながら、「今の救い」じゃなく「本物」を探して別れる二人は、かなり切ない結末でした。

9巻(番外編)「クズの本懐 décor」では花火たちにも幸福の気配が

 9巻の番外編ではメインキャラクターそれぞれのその後が描かれています。

 「恋はまだいい」と言って自分を貫くモカと、そんな彼女をカッコいいという少年との出会い。

 早苗の篤也との別れと、ゆかとの新たな恋。

 結局、浮気はしていない茜と鳴海のイチャイチャ新婚生活。

 

 そして麦はずっと目標も夢もなく、一人過去を悔やんで足踏みしていました。

 麦は今更ながら、あの時の花火への想いが本物だったと気づいていたのです。

 そんな時、偶然再会した花火。

 イベンターを目指して頑張っている花火を見て、麦は思わず彼女にキスをします。

 自分を負けてられない。

 待ってろ。

 何を、と困惑する花火に、麦は告げます。

「彼氏作んのちょっと待ってて」

 今の自分はまだ想いを告げることはできないけれど、きっと。

 「クズの本懐」は最後にちょっと明るい未来を感じさせて幕を閉じます。

 正直、本編(8巻まで)はとっとと花火と麦が付き合えばいいのにとジレジレしてたので、番外編を読んでようやく一心地ついた気がした作品でした。



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