「SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん」感想&評価(ネタバレ注意、あらすじ含む)


 今回は月刊ビッグガンガンで連載中の一風変わった青春バンドストーリー「SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん(以下、シオリエクスペリエンス)」について紹介します。

 この「シオリエクスペリエンス」は、かつて家庭の事情で音楽の道を諦めた地味な女教師「紫織」が、伝説のロックミュージシャンであるジミ・ヘンドリクスの亡霊に憑りつかれ、再び音楽活動を始めるという物語。

 本記事では”ジミヘン”の幽霊というネタ要素と青春が見事に融合した本作の魅力について、あらすじや登場人物を中心に深掘りしてまいります。

「SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス)」あらすじ

地味な女教師に”ジミヘン”が憑依!?(ネタバレ注意)

 物語の主人公は三菱学園高校で英語教師を務める27歳の地味な女性、本田紫織。

 紫織は27歳の誕生日の夜、自宅で謎の外国人男性の亡霊と出会いました。

 生前ミュージシャンであったその亡霊は、学園で行われた「3年生を送る会」で吹奏楽部の演奏中に突如紫織に憑依し、吹奏楽部の演奏に乱入しギターをかき鳴らします

 途中から憑依が解けたことにも気づかず演奏を続け、聴衆から大喝采をあびる紫織。

 その直後、紫織は亡霊から衝撃の事実を聞かされます。

 その亡霊は伝説のミュージシャン「ジミ・ヘンドリクス」であり、紫織が音楽の悪魔と結んだ契約(?)に基づきやってきたこと。

 そして、ジミヘンの超絶技巧を体験してしまった紫織は、28歳になるまでに音楽で伝説を残せなければ死んでしまうこと。

 唐突で意味不明な事実に驚愕する紫織でしたが、伝説を作って生き延びるため、紫織はかつて志半ばで断念した音楽活動を再開するのです。

集うバンドメンバー、紫織は伝説を残すことができるか!?(ネタバレ注意)

 紫織はまず吹奏楽部を首になった井鈴茜とバンドを組み、軽音楽部を設立しようとします

 部員を勧誘しようと奮闘しますが、入部してくれたのは変わり者の八王子茂だけ。

 紫織たちは部の設立に必要な5人の部員を集めるため、新入生向けのオリエンテーションでライブに挑みますが、そこに音楽活動に反対する紫織の父親が現れ、怯えた八王子が逃げ出してしまいます

 それでも紫織は諦めずライブを決行、飛び入りで参加した台場初範の助けもあって無事にライブを成功させるのです。

 多数の仮入部部員を獲得した軽音楽部ですが、仮入部部員は川崎忍を残してすぐにいなくなってしまいます。

 そして同時に部室が荒らされるという事件が起き、2年生の目黒五月が容疑者として疑われます。
 しかし紫織は偶然訪れたライブハウスで、五月が素晴らしいボーカリストであること、そして部室を荒らした犯人でない証拠を見つけました。

 紫織はスペシャルライブを開いて五月を勧誘、見事に5人目の部員を獲得します。

 正式に部として認められた紫織たち軽音楽部は、日本バンドコンテスト「Bridge To Legend」への出場を目標にすえ本格的に活動を開始します。

 しかしライブの失敗などで力不足を痛感し、一時空中分解状態となってしまう軽音楽部。

 メンバーはそれぞれ独自に自分を見つめ直し、実力を磨き上げ再び再結集します。

 紫織はオリジナル曲「JACK in!」完成させ、バンド名も「SHIORI EXPERIENCE」と決定。

 そんな中、吹奏楽部のエース光岡音々は紫織の「JACK in!」を聞いて以降、調子を崩していました。

 そして偶然紫織たちとセッションする機会を得た光岡は「SHIORI EXPERIENCE」に参加したいという誘惑にかられます

 しかし光岡は吹奏楽部の顧問、青島すばると固い絆で結ばれており、青島と理想の吹奏楽を作りたいという想いと「SHIORI EXPERIENCE」への誘惑との間で思い悩みます。

 紫織はそんな光岡の苦悩を知り、自分たちが吹奏楽部から光岡を奪う悪役になっても光岡を振り向かせようと決意。

 そして光岡と共に「SHIORI EXPERIENCE」の演奏を聞いた青島は光岡の本心を悟り、光岡を軽音楽部へと送り出したのです。

 光岡を加えた「SHIORI EXPERIENCE」は「Bridge To Legend」へ挑んでいくことになるのですが、果たしてプロ志望の強敵たちを相手にコンテストを勝ち抜けるのか、そして伝説を作ることができるのか……


「SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス)」主な登場人物

本田 紫織(ほんだ しおり)

 本作の主人公で三菱学園高校で英語教師を務める27歳の女性。

 「SHIORI EXPERIENCE」のギター担当。

 外見はメガネに黒のボブカットのいかにも地味な女性で、いつもスーツ姿。

 かつて兄の丈二の影響でギターを始めたが、その兄が詐欺で多額の借金を残して蒸発したため、父から音楽活動を反対され、ギターを辞めた過去を持つ。

 しかし27歳の誕生日にジミ・ヘンドリクスの亡霊と出会い、その演奏を体験したことで「CROSS LOAD」の契約に基づき伝説を作ることを決意し、音楽活動を再開する。

ジミ・ヘンドリクス

 本作のもう一人の主人公であり、27歳でこの世を去った伝説のロックミュージシャン。

 見た目はアフロヘアのコミカルなおじさん。

 明るく陽気なオジサンだが、音楽に対しては非常に真摯で妥協を一切許さない。

 1970年に死亡するが、もう一度ギターを弾きたいとの想いから「CROSS LOAD」と契約を交わし番人となる。

 紫織と「CROSS LOAD」の契約を交わした後は、その身体に憑依してしばしば超絶技巧を披露し、ミュージシャンとしての紫織の成長を助ける。

 また、時折紫織の身体を借り、変装して「JO-Z」と名乗ってライブハウスに出入りし、思うさまギターをかき鳴らしていている。

井鈴 茜(いすず あかね)

 三菱学園高校の3年生で「SHIORI EXPERIENCE」のサックス担当。

 外見はポニーテールの人の良さそうな少女。

 元々吹奏楽部に所属していたが、技術的に青島に認められず三軍として雑用ばかりしており、しかも「3年生を送る会」でその雑用でも失敗してしまったことから吹奏楽部を首となる。

 紫織に誘われ「SHIORI EXPERIENCE」最初のメンバーとなる。

 その後、自分の実力の無さに思い悩むも、光岡の助けを得て吹奏楽部の青島から厳しい指導を受け、劇的に成長を遂げる。

光岡 音々(みつおか ねおん)

 三菱学園高校の3年生で「SHIORI EXPERIENCE」のトランペット担当。

 外見はショートカットの真面目でクールそうな少女。

 音楽一家に生まれるも音楽を好きに慣れずにいたところ、現吹奏楽部顧問の青島の演奏を聞き、青島に憧れてサックスを始める

 その後、三菱学園高校に進学し青島と再会するも、その演奏があまりにかつての青島に似通っていたため、このままでは単なるコピーで終わってしまうと判断されトランペットへ転向させられる。

 青島と二人三脚で吹奏楽部のエースとして活躍していたが、「SHIORI EXPERIENCE」の演奏を聞いて自分も参加したいと思うようになり、最終的には青島に背中を押されて「SHIORI EXPERIENCE」に参加する。

八王子 茂(はちおうじ しげる)

 三菱学園高校の3年生で「SHIORI EXPERIENCE」のベース担当。

 外見は癖っ毛を真ん中で分けた独特の髪型をしたふくよかな体型の少年。あだ名は「プリンス」or「プリプリ」で、チャームポイントは胸毛

 お坊ちゃんで精神的にとても脆い。

 高校2年の3月に「SHIORI EXPERIENCE」のドラム担当として活動を始めるも、ライブ前に現れた紫織の父親にビビって逃げ出し、しばらく学校を休む。

 その後何とか復帰するも、その際に担当をベースに変更。

 元々は痩せていたが、復帰した際には意味不明なほど太っていた。

台場 初範(だいば はつのり)

 三菱学園高校の3年生で「SHIORI EXPERIENCE」のドラム担当。

 外見は髪を短く刈り上げたスポーツ少年。

 同校で野球部顧問を務める父親を持ち、父親の言うまま野球に打ち込んできた。

 中学時代にドラムと出会い、音楽に強く魅せられるようになるが、そのことは周囲には隠していた。

 しかし紫織たちがバンドを結成すると聞き、新入生オリエンテーションで逃げ出した茂の代わりにドラムを叩いたことを切っ掛けに野球をやめて「SHIORI EXPERIENCE」に参加する。

川崎 忍(かわさき しのぶ)

 三菱学園高校の2年生で「SHIORI EXPERIENCE」のキーボード担当。

 外見は前髪で目を隠した長い黒髪の貞子風少女で、実際に霊感があり、ジミヘンのことも見ることができる。

 超常現象研究部の部長だったが、ジミヘンが気になって「SHIORI EXPERIENCE」に参加する。

 目黒五月とは小学生の頃からの親友で、ともに音楽活動をし、かつては合唱部に所属していたが、五月が暴力事件を起こしたと誤解され、それが切っ掛けで疎遠となる。

 後に五月を「SHIORI EXPERIENCE」に誘う。

目黒 五月(めぐろ さつき)

 三菱学園高校の2年生で「SHIORI EXPERIENCE」のボーカル担当。

 パッと見はヤンキー風の少女で、元々は金髪のロングヘアだったが、後に刈り上げショートカットに変える。

 非常に真っ直ぐな性格の心優しい少女だが、不器用で誤解されやすい。

 小学校の頃、忍をいじめから助けたことで彼女と仲良くなり、共に音楽活動をする。

 高校では合唱部に入っていたが、忍への暴力事件の容疑者と疑われ、合唱部を辞めることに。

 その後、「香港卓球」というバンドでベースを担当していたが、紫織とのセッションが切っ掛けで歌への情熱を取り戻し、「SHIORI EXPERIENCE」に参加する。


青島 すばる(あおしま すばる)

 三菱学園高校の女性教師で吹奏楽部の顧問。29歳。

 外見はロングウェーブヘアと巨乳が特徴のいかにも男好きしそうな女性。

 普段は非常に明るく朗らかだが、二面性があり、感情がたかぶると関西弁になって怒鳴り散らす。

 音楽に対する情熱は本物で、当初は紫織たち軽音楽部を見下していたが、その頑張りを知って次第に認めていく。

 かつてはサックス奏者を目指していたが、限界を感じて指導者の道へ。

 光岡と出会い、彼女となら理想の音楽が作れると二人三脚で頑張っていたが、光岡が「SHIORI EXPERIENCE」に惹かれていることを知って、その背を押して送り出す。

 序盤と後半で無茶苦茶イメージが変わったキャラ。

フォード・マスタング

 アメリカ人の男性ミュージシャンで23歳。

 カート・コバーンと「CROSS LOAD」の契約を結んでいる。

 野心家で、カートとの相性が良いとマネージャーに気に入られ「CROSS LOAD」の契約を実行し、見事成功。

 「CROSS LOAD」の契約者のみで構成されたバンド「The 27 CLUB」の結成を目論んでおり、その成功で伝説を作り、死を逃れようとしている。

 マネージャーの指示もあり、ジミヘンの契約者を探して、本田丈二をガイドとして日本に向かう。

カート・コバーン

 ロックバンド「ニルヴァーナ」のボーカル兼ギターとして伝説的な人気を博し、27歳で死亡した伝説のロックミュージシャン。

 フォード・マスタングと「CROSS LOAD」の契約を交わした番人。

 普段は非常に気難しい雰囲気だが、音楽が絡むと途端に明るく陽気になる。

 自分とは対照的な本田丈二を気に入り、応援している。

マネージャー

 フォードのマネージャーを務める謎の老人。

 27歳で亡くなった伝説のミュージシャンと、その契約者だけで結成されたバンド「The 27 CLUB」を作ろうとしている。

 ジミヘンに異常な執着を抱いており、ジミヘンの契約者を探している。

 「CROSS LOAD」の契約に失敗したものを殺したり、非常に残忍な一面を持つ。

本田 丈二(ほんだ じょうじ)

 紫織の兄で33歳。

 外見はツンツンに立てた短髪のいかにもバカっぽそうな兄ちゃん。

 かつてはロックバンド「ボディ・ヴロウ」のボーカル兼ギターとして順調に人気を伸ばしていたが、詐欺にあって2000万円の借金を背負い、それを家族に押し付けて蒸発したクズ男。

 蒸発する以前は紫織とも非常に仲が良かった。

 今でもミュージシャンとしての成功は諦めておらず、古書店で「CROSS LOAD」について書いた本を見つけ、ジミヘンの楽曲で実行するも33歳になっていたため失敗(そのつけが紫織に……)。

 途方に暮れていたところをフォードとカートに出会い、共に日本へ行く。


「SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス)」感想&評価

青春バンドストーリーとして素直に面白い、胸躍る良作!

 最初は”ジミヘン”の幽霊が好き勝手暴走する話なのかな、と思っていましたが、実際読んでみると主役はあくまで紫織たちバンドメンバー。

 ベースは王道青春バンドストーリーであり、シンプルに面白いと思える良作です。

 ”ジミヘン”の幽霊という要素がただのネタに留まらずキチンと昇華されており、要所要所でストーリーに関わってくるところも良いエッセンスとなっていますね。

 絵も特別美麗というわけではありませんが、作風とあっていて違和感がなく、構図などは非常に迫力があって良いです。

光岡音々や青島すばる、脇を固める登場人物の背景が重厚!

 この作品で一番秀逸だと感じるところは、物語の脇を固める登場人物一人一人にキチンとしたバックボーンがあるところ。

 個人的に特に良かったと思うのが光岡と青島の吹奏楽部師弟コンビのエピソードで、最初は単なる嫌味なライバルキャラでしかなかった青島のイメージがここで180度ガラッと変わりましたね

 青島については光岡が「SHIORI EXPERIENCE」に参加して以降も見せ場があり、ここで更にカッコよく描かれていますので必見です。

 やはり人を丁寧に描いている作品にハズレはなく、その意味で「シオリエクスペリエンス」は間違いなく面白い良作だと断言できます。

 是非是非皆さまもご一読してみてください。



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