今回は「マンガワン」で松木いっか先生が連載中の近未来三国志「日本三國」について紹介します。
この作品は核戦争や感染症、自然災害などで文明が崩壊し、戦国時代へと突入した近未来の日本を舞台に、日本を再統一すべく立ち上がった軍師・三角青輝の物語。
非常に精緻に作り込まれた世界観と人間味あふれるコミカルでちょっぴり(?)エグいキャラクターたちが織り成す一大戦記となっています。
本記事では日本三國のあらすじや登場人物の紹介を交え、この作品の何が面白いのかを深掘りしていきたいと思います。
「日本三國」あらすじ(ネタバレ注意)
三国時代へ突入した日本を再統一せんと立ち上がった一人の男の物語
令和末期、日本は様々な苦難に見舞われました。
第4次産業革命での敗北、少子高齢化の加速、世界で勃発した核大戦とそこから逃れてきた難民の流入、感染症と大震災、社会不安が日本を覆い尽くします。
その結果、民衆は暴動を起こし国家形態は崩壊、人口は10分の1以下まで減少し、文化・インフラ・テクノロジーが失われ、事実上日本は滅亡することに。
文明は明治初期レベルまで後退し、軍閥が割拠する戦国の世が始まります。
そして数十年後「大和」「武凰」「聖夷」の三つの国が覇権を争う三国時代に突入することに。
物語の主人公は大和・愛媛郡に住む司農官の青年・三角青輝。
彼は幼馴染の東町小紀を妻に迎え、田舎町で優秀な官僚として幸せに暮らしていました。
しかしそんな幸せな暮らしも、大和を実質的に平一族の暴虐によってあっさり崩れ去ってしまいます。
内務卿・平殿器に暴言を吐いたとして突然処刑された小紀。
青輝は平殿器に復讐し、その後死んで小紀の元に向かおうとしますが、それでは結局別の人間が権勢を振るうだけで、この世は何も変わらないと思いとどまります。
この世を変える。
そう決意した青輝は平殿器と対立する大和の辺境将軍・龍門光英に仕官。
そこで着実に成果を挙げ、力を蓄えていきます。
そして士官から3年後、北の国・聖夷が大和領域へと軍を進め、天下分け目の大合戦の予兆が。
後に奇才軍師と称される三角青輝の伝説が幕を開けることになります。
世界観・用語説明
大和(やまと)
日本を支配する3国の一つで、大阪を首都とし西日本を支配する最大勢力。
政体は大和帝を頂点とする君主制(名目上)。
人口は約460万人。
聖夷(せいい)
日本を支配する3国の一つで、旧新潟を首都とし北日本を支配している。
政体は大統領を頂点とした共和制。
人口は約194万人。
大和とは敵対しているが、武凰とは友好関係にある。
武凰(ぶおう)
日本を支配する3国の一つで、旧神奈川を首都とし東海から関東一円を支配している。
政体は武凰帝を頂点とする君主制。
人口は約317万人。
歴史・元号
西暦2058年を以って日本国は滅亡しており、その後30~50年続いた戦国時代に突入。
現在は大和では大和歴、聖夷では聖紀など、3国で独自の元号が使われている。
なお、物語開始時点で大和歴56年(聖紀47年)。
平家
大和建国以前から権勢をふるう豪族。
帝を差し置いて実質的に大和の国を牛耳っている。
当然、国民からは忌み嫌われているが、誰も逆らえない。
登竜門
大和の高名な辺境将軍・龍門光英へ士官が叶う事の通称。
「日本三國」主な登場人物(ネタバレ注意)
大和
三角青輝(みすみあおてる)
本作の主人公で後に奇才軍師と呼ばれる男。
大和歴41年生まれで初登場時15歳。
非常に理屈っぽく頑固な性格で、おしゃべり。
幼い頃に両親を亡くし、図書館長・東町の援助を受けて育つ。
学問を良く学び、14歳で司農官の試験に受かっただけでなく、幼い頃から兵法書を読み込んでいた。
15歳の時に幼馴染の東町小紀と結婚するも、間もなく小紀は内務卿・平殿器によって処刑され、それを機に彼は国を変えるべく辺境将軍・龍門光英への仕官を果たす。
東町小紀(ひがしまちさき)
三角青輝の幼馴染にして妻。
自由奔放かつ勇敢な性格で、幼い頃から青輝と恋仲であった。
青輝との結婚後、間もなく平家の無法な徴税に苦しむ民を救ったことで、内務卿・平殿器の怒りを買い、処刑されてしまう。
処刑される以前、青輝に辺境将軍・龍門光英への仕官を勧めていた。
阿佐馬義経(あさまよしつね)
三角青輝と共に辺境将軍・龍門光英に仕官した青年。
青輝の3歳年上で、平家によって勢力を削がれた名門・阿佐馬家の出身。
戦闘技術・才略に優れるも、やたら功績を誇るナルシストで、母親の伝記を書くほどのマザコン。
問題児ではあるが実際能力は優秀で、青輝とも何だかんだ良いコンビ。
龍門光英(りゅうもんみつひで)
大和の辺境将軍。
農民出身ながら数々の功績を挙げて現在の地位に上り詰めた。
見た目は左目に眼帯をつけた初老の男性。
高潔で文武に秀で、堅物ながら多くの人々から尊敬されている。
賀来泰明(かくやすあき)
龍門光英の右腕であり軍師。
見た目はメガネをかけた中性的な雰囲気の男性で、年齢は30代前半。
「賀来は決して失敗しない」と称され、光英からの信頼も厚い。
平殿器(たいらでんき)
大和国を牛耳る平家のトップであり、現内務卿。
大和暦5年生まれ。
内心を悟らせない太ったコミカルな見た目の人物だが、その行動は傲慢にして暴虐。
自分を不快にさせた者には容赦がない。
前帝を毒殺し、幼かった藤3世を擁立、実娘を皇后に立てて国の全権を掌握している。
家柄だけの男ではなく、間違いなく謀略・政治力に関しては化け物。
平殿継(たいらとのつぐ)
内務卿・平殿器の嫡子。
大和歴50年生まれ。
調子に乗った生意気なはなたれ小僧。
藤3世(ふじさんせい)/帝
現大和帝。
大和暦33年生まれで、平家によって僅か4歳の時に帝として擁立される。
帝の地位は名ばかりのもので、いつも内務卿の顔色を窺っている。
聖夷
輪島桜虎(わじまおうが)
大和への降伏反対派を率いてクーデーターを成功させた聖夷の総帥。
今は亡き西征総督・輪島白虎の第三子。
大和暦34年(聖紀25年)生まれで、顔の左側に虎の刺青を入れた美女。
穏やかさと苛烈さ、高いカリスマを併せ持つ。
父を殺した龍門光英と賀来泰明を憎んでいる。
閉伊弥々吉(へいややきち)
輪島桜虎の補佐を務める初老の軍人。
かつては西征総督・輪島白虎の参謀を務めていた。
兵の桜虎に対する信望を取り戻すため、自ら泥を被って処刑される。
九羅亜輝威(くらあてるい)
輪島桜虎配下の軍人。
白髪だがガタイの良い中年男性で、かつては各地の不良少年を集めて暴れまわっていた。
27歳の時に輪島桜虎率いる銀山警備隊に鎮圧され、その配下となる。
長尾武兎惇(ながおむうとん)
輪島桜虎配下の軍人。
20代前半の端正な顔立ちの青年。
豪族出身で、幼い頃は何不自由なく育つ。
19歳の時に武術の腕を見込まれ輪島桜虎の配下となる。
輪島桜虎は彼の初恋の人。
手柄を立てようと気が逸った結果、命を落とす。
「日本三國」感想&評価
大作の予感!? 作り込まれた世界観がオタク心をくすぐる
連載開始後、早くも大作の予感と話題を集める「日本三國」。
文明が崩壊した世界の架空戦記という設定そのものは決して目新しいものではありませんが、この作品の魅力はその精緻な世界観。
そこに至る歴史や現存する国家の枠組みだけでなく、登場人物たちの背景や国家の緻密な組織図、自治体の地図など、とにかく世界観の作り込みが凄い。
設定を読み込むだけで頭の中で様々な妄想が湧き出てくるほどです。
やはり土台がしっかりしている作品にハズレはありませんね。
加えてキャラクターのクセが強いところもまた良し。
登場人物がカッコいいんだけどコミカル。
作中で繰り広げられる高度な知略戦の合間に、ふと挟まれるシュールなやり取りは、思わず吹き出さずにはいられません。
こんな人におすすめ
戦記物好き、あるいは設定を読み込むことが大好きなオタク気質の方におススメの作品です。
ややクセが強いので好き嫌いはあろうかと思いますが、まずは試し読みだけでも。
逆に、ややグロめの残酷な描写もありますので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
隙間時間に軽く読むタイプの作品でもありません。
とにかく、ガッツリ、骨のある作品を読みたいと感じている方におススメです。
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