「断腸亭にちじょう」感想&評価(ネタバレ注意)~ひねくれ漫画家ガンプのリアルで過酷な闘病日記、誰? 現在は?~


 今回は「サンデーうぇぶり」で連載中の話題作「断腸亭にちじょう」について解説します。

 「断腸亭にちじょう」は作者のガンプ先生本人が39歳にしてステージ4の大腸がんを告知され、その不安と絶望に満ちた闘病生活を赤裸々に綴った闘病日記。

 2023年4月には第27回「手塚治虫文化賞」新生賞を受賞したことで話題となりました。

 暗いお話なのにどこかクスっと笑ってしまい決して読了感の悪くないこの「断腸亭にちじょう」。

 本記事ではこの作品のあらすじ、作者ガンプ先生の現在などを踏まえつつ、その魅力を語ってみようと思います。

「断腸亭にちじょう」あらすじ

 2019年1月。

 39歳、つい最近自分の漫画がメディアで評価され、初の単行本重版がかかった漫画家ガンプ。

 上々の日々を送っていた彼は、昨年末からの食欲不振を奥さんのサテコに心配され、病院で診察を受けることになります。

そこで告げられた病名はステージ4の大腸がん。

 突如として不安と絶望に満ちた日々が始まります。

 関係者への連絡。

 焦っても遅々として進まない病院での手続きと検査。

 怪しげなクリニックで受けた代替療法。

 そして始まる本格的な苦しい治療。

 ガンプ先生はガンが大きくあちこちに転移していたため、まずは抗ガン剤と放射線治療により半年ほどガンを叩き、それから手術による根治を目指すことになります。

 しかしこの治療がとても苦しい。

 抗ガン剤は元は毒ガスとして使われていたもので、ガンだけでなく服用者の身体をボロボロに傷つけ、日常生活にも支障をきたすことに。

 放射線治療は更に過酷で、医者からはいったん「肛門を焼け野原にする」と告げられ、痛み止めの医療用麻薬も与えられます。

 過酷な治療ではありましたが、どうやらこの放射線治療が”良くも悪くも”効いたようで……

「断腸亭にちじょう」主な登場人物

ガンプ

 千葉県在住の男性漫画家であり本作の主人公。

 2019年の物語開始時点で39歳。

 奥さんのサテコさんと二人暮らし。

 この年になるまで漫画家としてあまり評価されておらず、非常にひねくれた面倒くさい性格をしている。

 突如としてステージ4の大腸がんとの診断を告げられ絶望。

 気持ちの整理のために日記は付けていたが、元々自身の闘病を漫画にするつもりは全くなかった。

サテコ

 主人公の奥さん。

 週5の会社勤めで、闘病生活を送るガンプを献身的に支える。

 基本的に心優しく穏やかで楽しい女性。

 怒ることは滅多にないが、流石に旦那の闘病に伴う負担や不安で相当ストレスがかかっているようで、時折ガチで切れる。

 切れると物を投げてくるタイプ。


「断腸亭にちじょう」漫画家ガンプ(誰、現在は?)

ガンプ先生ってどんな人?

 ガンプ先生は千葉県在住の男性漫画家。

 山口県出身で大学卒業後は漫画家を目指し、地元でバイト生活を送っていたそうです。

 詳しい経緯は不明ですが26歳の時に上京。

 28歳の時、出版社に持ち込みを行い、それが切っ掛けとなってデビュー。

 その後、10年ほどプロとして活動を続けていたそうですが、あまり評価はされず、ガンが発見される直前にようやく評価が上向いてきたところだったそうです。

 ちなみに作中(16話)では同業のM先生から「闘病漫画描きなよ」とと勧められていましたが、当時は「元気にならないし」と全く描く気がなかった模様。

 ただその後、治療が上手くいって身体も良くなり、ゴロゴロして収入面で不安が出てきたことから、試しにネームを描いたところ思いのほかサテコさんからの反応が良く、担当の山本さんに連絡して連載開始となったそうです。

現在のお身体の具合は?

 ステージ4の大腸がんを患っておられたガンプ先生ですが、放射線治療が劇的に効果を発揮。

 連載当初は体調面にやや不安があったそうですが、現在は病気も完治し健康に不安なく漫画を連載されているそうです。

 ただこうしたガンは再発の恐れが常に付きまとうので、あまり無理をされず、健康第一でお仕事をしていただきたいですね。


「断腸亭にちじょう」感想&評価

話は暗いけど面白い、絵は不安定だけど漫画は上手い

 闘病日記特有の情緒的な感想はさておき、この作品はまず「面白い」作品です。

 もちろんステージ4の大腸がん、読者の立場で最終的に治っていることは分かっても、死が目前に迫っている人の話なんて暗くて鬱々としているに決まっています。

 しかし「断腸亭にちじょう」の良いところは、決してギャグに逃げているわけではないのに、ただただ暗いだけでなく、不思議な読了感の良さがあるところ。

 多分、キャラクターの感情の見せ方が上手いんでしょうね。

 絵に関しては、正直毎度微妙に顔や画風が変わっていて不安定というか……正直下手な部類。

 ただそれが作品を読む上でマイナスかというとそんなことはなく、あまり気になりません。

 多分、ONE先生とかと同じ「絵」じゃなくて「漫画」を描くのが上手いタイプの作家さんです。

こんな人におすすめ

 基本的にあまり読む人を選ばないタイプの作品ではあるのですが、闘病日記ということで(?)やや汚い描写(排泄物など)もあり、そういうのが苦手な方にはおすすめできません。

 ただ逆に、絵の第一印象で敬遠している方には是非読んでいただきたい。

 もちろんそれでも合わない方はおられるでしょうが、合えばものすごく刺さる作品です。

 個人的には隙間時間にポツポツ読むより(それでも面白いですが)、休日などにまとめてガッツリ読むのがおすすめですね。



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