今回は「ビッグコミックスピリッツ」で連載中の「路傍のフジイ〜偉大なる凡人からの便り〜」について解説します。
この作品は地味で目立たず、周囲から「ああはなりたくないな」と思われてそうな中年男性「藤井さん」と、その周囲の人々の一面を切り取った人生劇場。
変人主人公と主人公に影響された人々の話と言えばそれまでなのですが、ただそれだけではない不思議なテイストの作品です。
本記事では「路傍のフジイ」のあらすじや主な登場人物の解説も踏まえ、その魅力を深掘りしていきたいと思います。
「路傍のフジイ」あらすじ
この作品の主人公はとある中小企業に勤める地味で目立たない中年男性、藤井さん。
40歳過ぎで非正規社員の独身男性。
真面目だけとどこかズレていて、周囲からナメられてしまっているサエない人物です。
物語はそんな藤井さんに周囲の人々がふと興味を持ったところから始まります。
「かわいそうな人」
「ああはなりたくない」
「でも、どんな人なんだろう」
友達や恋人はいるのか、趣味はあるのか、休日は何をしているのか。
勝手に藤井さんのことを下に見ていたけど、実はこの人は誰より人生を楽しんでいるんじゃないだろうか。
ああはなりなくないと思ったけど、自分はとても藤井さんのようにはなれない。
同僚の田中くんをかわきりに、会社で男性から人気の石川さん、社交性の高い矢部さん、陶芸教室に通う孤独な男、コミュニケーションが苦手な整体師など、様々な人々が藤井さんに興味を持っていきます。
藤井さんは誰に何を主張するでも諭すわけでもありません。
ただ自分を偽ろうとしない藤井さんの生き方に触れて、周囲の人々はほんの少しだけ自分の在り方を見つめ直していきます。
「路傍のフジイ」主な登場人物
藤井
本作の主人公。
40歳過ぎで中小企業の非正規社員という冴えない独身男性。
外見は無骨で真面目そうな顔立ちをしていて、男性としては背はやや低め。
仕事はちゃんとするが無口で愛想がなく、周囲からは「かわいそうな人間」と舐められてまくっている。
ただ実際には人生をとても楽しんでいる男。
陶芸や水彩画、ギターなど下手糞ながら非常に多趣味。
やりたいことが多すぎて不老不死になりたいと語るほど。
孤独を好むように思われがちだが、その時々で同じ何かを共有した人はみな友達だと思っており、基本的に来るものは拒まない。
田中
藤井さんの会社の後輩。
同級生がみな結婚して独り独身のまま、今の会社では裕福になれる未来も見えず、鬱屈した日々を送っていた男。
当初は自分より下の人間を見て安心したいとの思いから藤井さんに興味を持つようになる。
ただ休日に藤井さんを見かけたことが切っ掛けで、そのブレない生き方に惹かれて彼を慕っていく。
同僚の石川さんに好意を持っており、藤井さん繋がりで親しくなる。
石川
藤井さんの会社の同僚。
キレイな女性で男性から非常に人気がある。
実は元々風俗に勤めていて、辞めた今も当時の客たちと付き合いが続いている。
男はどうせ身体目当てという思いが根底にあり、男性不信気味。
下心のない藤井さんに興味と好意を抱いている。
実はアニオタ。
矢部
藤井さんの会社の同僚。
皆から頼りにされている男性で、職場の明るいムードメーカー。
交友関係が広く社交的で藤井さんと正反対。
藤井さんにも誘いをかけるが噛みあわない。
外山
藤井さんの会社の同僚。
田中の先輩で藤井さんのことを舐めくさっている。
口が軽くて厭味なタイプの、所謂どこにでも良くいる人間。
「路傍のフジイ」感想&評価
「リボーンの棋士」作者の新作
この作品は「リボーンの棋士」の作者として知られる鍋倉夫先生の新作。
「リボーンの棋士」はファンからの評価は非常に高い将棋漫画だったのですが、売り上げが振るわず打ち切り完結となってしまった作品。
年齢制限によりプロになれなかった挫折した男たちの物語という暗い内容が災いしたんでしょうかね。
そんな先生の新作だけあって、この「路傍のフジイ」刺さる人にはとことん刺さりそうですが、また打ち切りにあってしまいそうな雰囲気がぷんぷんしています。
主人公のキャラクターとか周囲の人間模様とか、とても味があって面白いのですが、とにかく地味というかシュールというか……
主人公のキャラが説教臭くなくて押しつけがましさがないところとか大好きなんですけど、今の読者層に合っているかと首を傾げざるを得ない作品ですね。
こんな人におススメ
「リボーンの棋士」にハマった人には間違いなくおススメ。
基本的には年齢層高めで、ある程度社会人経験のある方向けの作品ですね。
ぶっ刺さるかどうかはかなり人を選ぶ内容だと思いますが、画力もストーリーもレベルが高く、普通に読んで損のない作品。
ただしテンポがよくスカッとした作品を読みたい方には向きません。
今だと漫画アプリ(マンガワン)などで無料試し読みができますので、まずはそこでさわりだけでも読んでみていただきたいですね。
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