今回はヤングジャンプで連載中の大人気漫画「ゴールデンカムイ」から、尾形百之助の異母弟であり穢れ無き魂を持つ男「花沢 勇作(はなざわ ゆうさく)」について解説します。
花沢勇作は元第七師団長・花沢幸次郎を父に持つエリート軍人。
日露戦争の激戦の最中に死亡し、物語開始時点では既に故人となっています。
しかし彼は尾形の人格形成に多大な影響をおよぼしており、作中では尾形の回想に度々登場してきました。
本記事では花沢勇作の過去や彼が果たした旗手の役割、尾形百之助との因縁を中心に、その人物像を深掘りしていきたいと思います。
「ゴールデンカムイ」花沢勇作のプロフィール
基本プロフィール(外見、性格、声優など)
花沢勇作は第七師団歩兵27聯隊の少尉で、元第七師団長だった花沢幸次郎の息子、そして尾形百之助の異母弟にあたる人物です。
芸者との間に生まれた尾形とは異なり、本妻の子供、花沢家の跡取りとして祝福されて誕生しました。
日露戦争では第七師団の旗手(詳細は後述)を務めましたが、その激戦の最中に命を落とし、本編開始時点では既に故人となっています。
基本的に尾形の回想の中にしか登場せず、その目元にはいつも影がかかっているため、素顔については不明。
ただ、旗手の要件の一つに「眉目秀麗」というのがありますから、それなりにイケメンだったと推察されます。
性格は品行方正で誠実、非の打ち所のない好青年で、異母兄である尾形のことも兄様と呼んで慕っていました。
声優は畠中祐さん。
作中における役割
花沢勇作は作中において、尾形百之助と対を為す存在として登場しています。
父親に見捨てられた尾形と、両親の愛情を受けて真っ直ぐに育った勇作。
父親への歪んだ感情を胸に育った尾形にとって勇作の存在は直視しがたい光であり、そのことが過去、尾形を凶行に走らせました。
しばしば周囲からは理解しがたい行動をとる尾形ですが、彼の行動原理の根幹には、勇作のような高潔な存在を否定したいという想いが強く関わっています。
「ゴールデンカムイ」花沢勇作の童貞と旗手(杉元・菊田との過去)
「旗手」の役割と童貞でなければならない理由
花沢勇作が日露戦争で務めた「旗手」とは、軍旗を持って部隊を鼓舞する役割。
当時の日本陸軍において軍旗は天皇陛下から手渡しで授けられる神聖なもので、その旗手となることは大変な名誉とされていました。
旗手は基本的に新任の少尉の中の成績最優秀者が1年交代で務め、その要件として品行方正・成績優秀・眉目秀麗・長身であることが求められています。
更に暗黙の了解として、童貞で悪所通いしない高潔な人物であることも求められていました。
「童貞」というのは、弾が当たらないということからくる験担ぎですね。
この旗手というのは、名誉ではあっても目立つ上に自身は武器を持っておらず、死亡率が高い危険な役割。
そのため、勇作の父親である花沢中将は彼に旗手となることを望んだものの、勇作の母親は旗手になってほしくなかったため、過去にある策謀を巡らせていたのです。
杉元・菊田が巻き込まれた童貞防衛作戦
息子に危険な旗手になってほしくない勇作の母親は、勇作から旗手の資格を奪うため、勇作の見合いをセッティングします。
要は、童貞でなければ旗手になれないので、相手の令嬢に勇作の童貞を奪ってしまえとけしかけていたのです
……とんでもない母親だ。
妻の企みを察知した花沢中将は、勇作の童貞を守るべく部下に指示を下します。
この時、童貞防衛作戦の白羽の矢が当たったのが当時の菊田特務曹長でした。
菊田は故郷を離れて旅をしていた杉元佐一に目を付け、彼に勇作の影武者を務めさせることにしたのですが……
作戦の全容は割愛させていただきますが、ともかく勇作の童貞は守られました。
そしてこの一件が切っ掛けで杉元は菊田と出会い、軍に入ることを決意しています。
「ゴールデンカムイ」花沢勇作と尾形百之助の因縁
花沢勇作は尾形百之助を「兄様」と呼んで慕っていたが……
異母兄である尾形が父親に見捨てられ母方の実家で育てられたため、花沢勇作は父の下で一人っ子として育ちました。
勇作が兄の存在を知っていたかどうかは分かりませんが、陸軍で尾形と知り合うと、彼のことを「兄様」と呼んで心から慕っていたと言います。
しかし尾形にとって、憎むべき存在である勇作が心優しく高潔な人物であるという事実は、余計に尾形の劣等感を刺激することになります。
表向きは勇作の好意に「勇作殿」と呼んで応えていましたが、その腹の内はどうやって勇作を穢してやろうか、いえ穢れていることを証明してやろうかという思考で一杯。
時には兄と親しくなりたいという勇作の想いを利用して、彼を娼館に連れ込み、童貞を捨てさせようとしたこともありました(勇作は誘いを跳ね除け、立派に童貞を守りましたよ)。
尾形百之助が花沢勇作を殺した理由
勇作と尾形の亀裂が決定的になったのは日露戦争の最中。
勇作は旗手として立派に味方を鼓舞し、鶴見中尉を始めとした周囲からも高く評価されていました。
しかしそれが面白くない尾形は、夜中に勇作を連れ出し、捕虜を殺せとけしかけます。
「勇作殿が殺すのを見てみたい」
そう言って尾形は勇作に迫りますが、彼はそれを拒絶。
旗手である勇作は、父から戦地にあっても人を殺さないよう厳命されていました。
それは、旗手が穢れのない存在としてあることで、偶像となり人々に勇気を与えるという父親個人の考え方から来るものです。
「何故なら誰もが人を殺すことで」
「罪悪感が生じるからだと……!」
けれどそれは尾形から見れば、祝福された人間は戦場で人を殺さないことさえ許されるという、父からの理不尽な差別のように思えたのでしょう。
殺した相手に対する罪悪感なんてみんな持っていないと吐き捨てます。
けれど勇作は尾形を抱きしめ、こう言いました。
「兄様は決してそんな人じゃない」
「きっと分かる日がきます」
「人を殺して罪悪感を微塵も感じない人間が」
「この世にいて良いはずがないのです」
この言葉が致命的に尾形の地雷を踏み抜いてしまいました。
尾形はこの後、乱戦の最中に勇作を背後からその銃で撃ち、殺害することになります。
けれど尾形の心から勇作の存在は消えることがなく、幻影として彼にまとわり続け、いつしか尾形は勇作の影をアイヌの希望・アシリパに見るようになるのですが……
コメント
旗手の死亡率は、90%以上(99%と言う話もあります)
それだけに旗手となることは、名誉とされ、旗手を出した家は尊敬されましたし、戦死後は陛下から恩賞もありました
旗手は容姿・精神が優れ、童貞で敵を殺したことがない兵士が選ばれました。
息子に「旗手になれ」といい息子を旗手の推した花沢中将は、「家の名誉のために死ね」といった。と言うことになります。
家の名誉>息子の命 な訳で、この時点で勇作殿は「父親に見捨てられた子供」でもあります。
息子の脱童貞を目指して見合いを勧めた母親は息子を愛した母であり
勇作殿を〝堕落〟させようとした尾形は、異母弟を愛した異母兄である。と言う見方も出来ます
尾形は勇作殿を三度誘惑した事は、イエスを誘惑した荒野の悪魔とも対比されています。
勇作殿はその死で〝第七師団員に救済を与えたイエス〟であるともいえます