今回は大人気漫画「ゴールデンカムイ」から、三勢力に翻弄されたアイヌの戦士「有古 力松(ありこ りきまつ)」(アイヌ名:イポプテ)について解説します。
有古力松は第七師団に所属する一等卒であり、アイヌ民族の戦士。
菊田特務曹長の戦友として登場したものの、亡き父の過去を利用され、様々な勢力の思惑に翻弄された不遇な青年です。
最後はアシリパにアイヌの希望を見出し、共に戦うことを選んだ有古。
本記事ではそんな彼の過去や父の存在(マキリ)、作中での不遇な扱いと最後(生死)について語ってまいります。
「ゴールデンカムイ」有古力松/イポプテのプロフィール
基本プロフィール(外見、性格、誕生日、年齢など)
有古力松は第七師団に所属する一等卒にしてアイヌ民族の戦士。
顔に大きく斜めに入った傷痕と浅黒い肌、筋骨隆々の体躯が特徴の青年です。
性格は物静かで思慮深く、しかし心の奥底には熱いものを抱えています。
アイヌ名はイポプテ(正確には「プ」は小文字)、アイヌ語で「煮立たせる」という意味の言葉です。
誕生日は9月4日。
1902年に金塊を移送していた7人のアイヌが殺害された事件の直前に軍に入隊したという描写があったので、物語の舞台となる1907年時点では20代半ばと推察されます。
声優は水中雅章さん。
八甲田山雪中行軍事件捜索隊に加わり、日露戦争を潜り抜けた歴戦の戦士
有古は八甲田山雪中行軍事件において捜索隊に加わったアイヌの一人であり、その後軍に入隊し、日露戦争を潜り抜けた歴戦の兵士です。
登場当初は菊田特務曹長と共に登別温泉で療養中で、ちょうど療養を終えて鶴見中尉の下へ菊田と共に馳せ参じようとしていたところでした。
そこに土方の指示で鶴見一派の動向を探っていた都丹庵士と遭遇し、交戦状態に。
菊田は有古と共に日露戦争で死地を潜り抜けた戦友であり、有古に対して全幅の信頼を置いていたのですが……
「ゴールデンカムイ」有古力松/イポプテの過去と父(マキリ)
父親のシロマクルは金塊を移送した7人のアイヌの一人
有古の父親は名をシロマクルと言い、金塊の移送中にのっぺらぼうに殺害されたとされる7人のアイヌの一人です。
元々シロマクルたち殺害されたアイヌは、のっぺらぼうことウイルクの同志であり、その金塊を使って民族独立の道を模索していました。
しかしシロマクルに鶴見中尉が「ウイルクは帝政ロシアと戦っていたゲリラで、ロシアでの革命活動の資金を得るためにアイヌの金塊を探していた」という情報を吹き込んだことで、ウイルクと7人のアイヌは同士討ちを行い、ウイルクを残して息絶えてしまったのです。
当時の有古は独立運動について父親から何も知らされておらず、父親が金塊を何のために使おうとしていたのか、何故死んだのか、そのことを全く理解していませんでした。
父と作りかけのマキリ
父親の死を知った有古には、一つの心残りがありました。
それは父のマキリの作り方をもっとしっかり見ておけば良かったな、ということ。
マキリとはアイヌの小刀で、男が女にマキリを送り、女はその出来栄えで男の生活力を図るとも言われています。
有古はそうした民族の風習にあまり興味がなく、父からマキリの作り方を学ぼうとしていませんでした。
父は有古のためのマキリを作っていたそうですが、それを作っている途中で亡くなってしまっています。
父の形見のマキリも紛失しており、どうして自分は父にマキリの使い方を学んでおかなかったのだろう、と……
「ゴールデンカムイ」有古力松/イポプテは三重スパイ?
登別温泉で都丹庵士と交戦した有古は、地形を利用し雪崩を起こすことで都丹を撃退します。
その後、都丹を雪から掘り起こし、その身柄を戦利品として菊田らの下へ連れ帰ろうとしていた時、有古は土方歳三と遭遇しました。
有古とその父の境遇を調べ上げていた土方は、有古に父親の遺志を継ぐよう諭し、鶴見陣営に対する造反者に仕立て上げたのです。
しかし有古の造反は、彼が都丹のものとして持ち帰った人皮刺青が別人のものだと察した鶴見中尉によってたちまち見抜かれてしまいます。
そして家族を人質に取られた有古は鶴見に脅迫され二重スパイに。
今度は土方陣営に彼らを混乱させるために偽の人皮刺青とともに送り込まれました。
しかし、土方にとって鶴見が有古の裏切りに気づくことは計算通り。
土方は土方で偽の人皮刺青を確保しておくために、わざと有古を裏切らせていたのです。
結果的にどちらの陣営からも利用され、信用されない状態でスパイを続けるはめになった有古。
そんな彼に今度は戦友である菊田特務曹長が誘いをかけます。
実は菊田は軍中央から鶴見の監視を命じられたスパイだったのです。
「ゴールデンカムイ」有古力松/イポプテの最後(生存or死亡?)
誰からも信頼されず、不安定な立場にあった有古。
彼は戦友である菊田の誘いを受けることも出来ず、流されるままに土方一派と行動を共にしていました。
そんな彼に己の進むべき道を定めさせたのは、樺太での旅を経て大きく成長を遂げたアシリパ。
アイヌ民族の未来を想い懸命に戦おうとするアシリパの姿に、有古は共に戦うことを決意します。
そして272話では鶴見中尉に反旗を翻し、命を賭してアシリパを救い出した有古。
その代償として有古は月島の銃弾を胸に受け、死亡してしまったかに思えましたが……
続く273話では、父が残したマキリ(遺品を回収した鶴見中尉から渡されていた)に偶然銃弾があたり、有古は致命傷を免れ、生き延びていたことが判明します。
その話を最後に有古が本編に登場することはありませんでしたが、現代において北海道のどこかの小さな郷土資料館には「有古イポプテ」という製作者の手になるマキリが展示されているそうです。
彼は父親のマキリを真似ることで、無事に自分のマキリを作り上げることができたんですね。
そして再登場こそありませんでしたが、恐らくは戦いの後、アシリパが行ったアイヌの文化を守るための活動に有古も協力していたのでしょう。
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