今回は「裏サンデー」「マンガワン」などで連載中のwebコミック「異世界ありがとう」について紹介します。
この作品はニコニコ漫画で人気の荒井小豆(原作)と新人のジアナズ(作画)がタッグを組んで繰り広げる異世界転生ファンタジー。
タイトルは”なろう系”ですが、テンプレものとは一味も二味も違うコメディ系異世界友情憚となっています。
本記事では「異世界ありがとう」のあらすじや主な登場人物の紹介も交え、この作品の魅力を語ってみようと思います。
「異世界ありがとう」あらすじ(ネタバレ注意)
テンプレ異世界転生……ただしこいつらチート無し
高校時代の同窓会で再会し、二人で飲んでいる最中に意識を失った千葉ユウサク(31歳♂)と椎名シイオ(同じく31歳♂)。
目を覚ますと、チバはエルフの美女、シイナは人間の少女の姿でファンタジー風異世界に転生していました。
突然のことに困惑するも、オタクらしくすぐに異世界に適応を始める二人。
しかしこの異世界、RPGゲーム風で魔法やステータスウィンドウなどもありますが、微妙で不便で不親切。
事情を説明してくれる人はおらず、チート能力も無し。
シイナに至っては「MP0」で魔法が使えるようになる見込みもなく、雑魚スライムの一撃(ダメージたった1)で泣かされてしまう始末です。
ドラゴンと遭遇したり、盗賊に襲われたり、チート能力持ち異世界召喚者と出会ったり、散々な目に遭ってばかりの二人は、記憶の女神と出会い自分たちが異世界に来た事情を知らされます。
元の世界の二人が既に死んでいること。
その魂に偶々目をつけた記憶の女神が彼らの魂だけを異世界に召喚したこと。
そして何らかの事情で魂が離れた異世界の肉体にその魂を宿したこと。
魂だけ召喚された二人にチート能力は与えられないこと。
二人が召喚された理由は記憶の女神の趣味であること。
事情を知りショックを受けたものの、何とか立ち直り異世界で生きていくことを決意したチバとシイナ。
しかし再び彼らは記憶の女神に呼び出され、実は元の世界の二人が死んでいるというのは彼女の勘違いで、実は昏睡状態のまま生きていることが判明します。
そして二人は記憶の女神の提案で、元の世界に魂を送り出す儀式「奏魂の儀」、その巡礼の旅に出ることになるのです、が……
用語解説
異世界召喚者
地球から異世界召喚されてきた者。
肉体ごとの召喚と魂だけの召喚の二種類がある。
肉体ごとの召喚は召喚の女神、魂だけの召喚は記憶の女神の担当。
魂だけ召喚された者にはチート能力が与えられない。
肉体ごと召喚された者は魔王討伐の為の尖兵として召喚される。
が、実際にはそれを無視して好き勝手振舞う者も多い。
ステータス
異世界ものの定番、みんな大好きステータス。
ステータス画面は頭の上に出るので、自分では見れない。
表示はLV、HP、MP、次のLVに必要な経験値だけ。
MP(マナ)
ファンタジー要素の定番。
魔法もチート能力も原動力は全てMP。
MPの容量は種族によって異なり、
人間<エルフ<魔族
異世界召喚者は魔族並みに魔力を持っている。
エルフ
長大な寿命と人間より豊富な魔力を持つ種。
現存する通常のエルフは亜エルフと呼ばれ寿命は数百年程度。
現存数ごくわずかのハイエルフは神代から歳をとることなく生き続けている。
それ故、エルフとは種族ではなく呪いの名、とも言われる。
夜の大陸
魔族の領土。
マナが濃い未開の地で、生態系も魔物も多様。
元の世界に戻るための巡礼の最終地点がある。
「異世界ありがとう」主な登場人物(ネタバレ注意)
チバ/千葉ユウサク
本作の主人公の一人。
元の世界では31歳社畜証券マンだったが、異世界では巨乳の美人エルフとなっている。
元々天涯孤独で恋人もなく、元の世界には全く未練がない。
イケメンでサバイバル知識も豊富とかなりのハイスペックだった模様。
ステータスは魔術師型で、何故か元の世界で自作したオリジナルの魔法が使える。
元の世界では飲んでいる最中に心室細動を起こして死亡し、魂だけがこちらの世界のエルフの肉体に召喚された……と言われていたが、実は元の世界の千葉ユウサクは一命を取り留めていたことが判明。
元の世界に戻るための巡礼の旅に出ることになる。
ちなみに、異世界でのチバとシイナの肉体の本来の持ち主の魂が、何故肉体から離れてしまったのかは分かっていない。
シイナ/椎名シイオ
本作のもう一人の主人公。
元の世界では31歳の小太りのオッサンで、千葉ユウサクの同級生だった。
千葉ユウサクと飲んでいる最中に何故かツッコんできたトラックにはねられ、魂だけが異世界召喚される。
こちらの世界では小動物的なかわいさを持つ人間の少女。
お調子者で気分の上げ下げが激しい。
元の世界でも低スペックだったが、こちらの世界でも「MP0」なため、魔法やチート能力が使える見込みはない。
元の世界で死んだと伝えられ落ち込んでいたが、実は生きていたことが判明。
チバとともに巡礼の旅に出る。
メルデル/記憶の女神
三柱神の一人、記憶の女神。
魂だけの異世界召喚を担当している。
見た目はエルフ耳の幼い少女。
好奇心旺盛な性格で、自分の好奇心を満たすために異世界から魂を呼び出している。
地球のギャグがお気に入り。
性質的にあまり世間の役には立っておらず、教会もボロボロ。
そのため勢力の大きい召喚の女神のことを嫌っている。
明言はされていないが、スピリチュアルな存在ではなく強大な力を持つハイエルフ。
カズヤ
元陰キャの異世界転生者。
ヤマダカズヤ、元フリーター、21歳。
異世界デビューに成功してかわいい仲間に囲まれてウハウハ。
元の世界に帰るつもりも魔王を討伐するつもりもないエンジョイ勢。
自分の欲望に物凄く忠実で、かなり調子に乗っている。
「縮地」のチート能力を持っている。
<カズヤのハーレムパーティー>
・アンジェリカ「聖女・おっとり」
・グメンミ「魔術師・ツンデレ」
・ネロ「盗賊・ケモミミ」
「異世界ありがとう」感想&評価
微妙に地に足のついてない等身大の異世界友情譚
タイトルは”なろう系”で、ある意味テンプレ異世界転生ものではあるのですが、王道を絶妙に踏み外した良作、それがこの「異世界ありがとう」です。
オッサン二人が不慮の事故から異世界の美少女に転生。
そこまではまさしくテンプレですが、異世界は二人に素っ気なく、チート能力もご都合主義な展開も与えられません。
他の異世界召喚者は強力なチート能力を与えられ、華々しく異世界を謳歌しているにも関わらず。
そこを知恵と工夫で覆していく……のであれば、それはそれでお約束ですが、二人にそこまでのスペックはありません。
何となく流されるまま、決して良い事ばかりではありませんが、少しずつ待望の異世界を楽しんでいくチバとシイナ。
それは想いを共有できる友がいるからこその感動でした。
リアルで人間味あふれる等身大の異世界転生、それこそが「異世界ありがとう」です。
こんな人におススメ
基本、男女年齢を問わない作風ではあるのですが、恐らく好き嫌いが分かれる作品です。
もしこれを読んでいるあなたが「異世界」というタイトルに爽快感やスカッとした展開を期待しているのであれば、少し期待とは異なる内容かもしれません。
定番の”なろう系”でも、それに対するアンチでもなく、物語はどちらかと言えば地味で泥臭い展開が続きます。
感覚的には、古典ファンタジーが好きな方にはハマりそうな気がしますね。
異世界そのものより、主人公二人のほのぼのした友情(ただし中身はオッサン)がメインとなっていますので、日常ものとかが好きな方にもおススメです。
裏サンデーなどで試し読みができますので、興味を持っていただけたなら、まずはそこから……
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