今回は山口つばさ先生が「アフタヌーン」で連載中の青春アートストーリー「ブルーピリオド」から、藝大油画唯一の女性教授「猫屋敷 あも(ねこやしき あも)」について解説します。
猫屋敷あもは大学編1年目で八虎たち1年生を担当した女性教授。
見た目こそ小柄でかわいいですが、自分の作品に対する情熱には並々ならぬものがあり、時に闇深く「怖い」一面を垣間見せたこともありました。
八虎に対しては論理的で優しい先生でしたが、世田介に対しては攻撃的だった猫屋敷あも。
本記事ではそんな彼女の作中での活躍や「怖さ」の理由について深掘りしていきたいと思います。
「ブルーピリオド」猫屋敷あものプロフィール
基本プロフィール(誕生日、年齢、身長など)
誕生日 | 不明 |
年齢 | 不明(若く見えても教授なので……) |
身長 | 不明(小柄) |
所属 | 東京藝術大学教授(油画技法・材料研究室) |
声優 | ー |
猫屋敷あもはコミックス7巻から始まる藝大編で登場したキャラクター。
八虎たちが1年生の時の3人の担当教授の一人です。
猫耳のフォルムを模したカチューシャがトレードマークの小柄で女性で、見た目は幼い少女のようですが、教授なので年齢的に40は……(ごにょごにょ)。
基本的には陽気で親切な方ですが、アートにかける執念は並外れており、自分の作品を見てもらうためなら全てを投げ打つタイプの女傑。
助手の夢崎さんでさえ「1年の担当教授で間違いなく一番えげつない」とひいていました。
ちなみに独身。
藝大油画唯一の女性教授だが中々の苦労人
猫屋敷あもは藝大油画唯一の女性教授。
作家として認知度も高く、女子生徒らの憧れの存在ですが、実はかなりの苦労人です。
まず教授としての仕事が大変。
同僚は奇人変人ばかりで、セクハラ発言を連発するオッサンもいたり、上司(副学長)の犬飼教授は怖かったりと、猫屋敷先生はいつも気を遣ってばかりです。
また生徒も中々にクセが強く、中々犬飼教授の期待通りの成果をあげることができず板挟み状態。
加えて、作家としての活動も非常に多忙です。
詳しくは後述しますが、猫屋敷先生の作品は多くの人の手を借りなければ成立しないもの。
そのため色んな人に贈り物をしたり会食をしたりと常に気配りがかかせません。
その多忙さを知る助手の夢崎さんは「この人みたいには絶対なれない」と発言していました。
ちなみに、よく色んな社長と飯に行っているので、いつも豪勢なものばかり食べている印象がありますが、会食がなければ食事は家でカップ麺と非常に質素。
とにかく仕事に全てを投げ打っている印象です。
「ブルーピリオド」猫屋敷あもの作品
猫屋敷あもは油画の教授ですが、その代表作はラッピングシリーズ。
絵ではなく、建物などをラッピングで綺麗に飾り立てる大規模作品を得意としています。
勿論、巨大な建物を猫屋敷先生が手ずからラッピングしていくわけではなく、実際に作業するのは建築業者などの職人。
猫屋敷先生の仕事はラッピングのプランニングです。
その作風には賛否ありますが、SNS上で若い子には人気が高く、メディアからも注目されています。
「ラッピングは世界で一番」
「可愛い嘘ですから」
基本的にラッピングは展示が終わればビリビリに破かれて壊されてしまいます。
後に残らないタイプの作品な上、とんでもなくコストがかかるので、その製作には彼女に協力してくれるパトロン(この場合、宣伝目的で利用してくれる経営者)が不可欠。
そのため猫屋敷先生は常に周囲の人間に気配りし、尽くし続けています。
「ブルーピリオド」猫屋敷あもの指導
猫屋敷あもの指導は基本的に論理的で明快です。
読者の間ではアカハラ、ロジハラといった批判もありますが(と言うか、そうじゃない教授はほとんどいませんが)、指導内容はとても分かりやすくて親切でした。
猫屋敷先生が最初に出した課題「『東京の風景』をテーマに平面作品とマケットの両方を提出」は、表現と感性の幅を広げそれを作品に起こすというプロでも頭を捻る内容。
夢崎さんからも「1年生序盤の課題としてこれ以上相応しい課題はない」と絶賛されていました。
真面目に製作に取り組む生徒たちの姿に頬を緩める姿も描かれており、生徒に対する思いやりも感じられます。
一方で、彼氏の束縛が強くて作品に集中できないという女生徒に対しては突き放すような厳しい発言をしたことも。
要は猫屋敷先生は、なりふり構わず全力で取り組む人間に対しては優しいのですが、そうでない人間に対しては結構厳しいんですよね。
「むかつくなー」
「もってるもの全部使って」
「戦わない人間は」
そのため猫屋敷先生は、内に閉じこもったような作品ばかりを描く高橋世田介に対しては、当初からキツイ態度をとっていました。
「ブルーピリオド」猫屋敷あもと高橋世田介
読者の間で猫屋敷あもの評価が分かれる切っ掛けとなったのが、高橋世田介への接し方です。
世田介は頭が良く天才的な絵の技術を持つ一方で、人に見てもらいたいという熱意がなく、猫屋敷先生とは正反対の作風。
そのため猫屋敷先生は当初からあまり世田介のことを好んでおらず、積極的に関わろうとはしていませんでした。
しかし上司である犬飼教授に世田介を指導するよう促されたことで、1年次の後半からは積極的に世田介に関わるようになるのですが、相性の悪さが影響したかその態度はかなり辛辣。
「頭良いんでしょ君?」
「良い頭は使わなきゃ」
「上手いのはわかったから」
「頭使ってよ頭」
「君にこういうの」
「求めてないから」
技術はいいから、もっと頭を使ったコンセプトのある作品を作れと、世田介がセンター合格であることを示唆するような発言までしていました(藝大にはセンター試験が1番良かった人間は2次試験の絵に関わらず取るという噂がある)。
世田介はそういうのが大嫌いでしたから、
「あなたと話してると」
「イライラするので」
「帰ってください」
と教授相手に直接的な暴言を吐いて反発したことも。
ブチ切れた猫屋敷先生がモノに当たっているシーンは中々でした。
その後世田介は色々あって一度は折れ、猫屋敷先生の指導に従いそうになりましたが、最終的に自分のこだわりを捨てないことを選択。
1年次の進級製作の講評では、猫屋敷先生とかなり激しい言葉でやり合うことになります。
「つまんな!」
「君さあ、ホントの自分」
「みたいなもの信じてるの?」
「そのままじゃ君」
「何者にもなれないよ!?」
「何者かになる権利はあっても」
「義務はない……と思います」
結局、猫屋敷先生は世田介と決裂したまま、大学編2年目は大型プロジェクトに取り組むということで担当から外れ、物語から退場することになります。
猫屋敷先生の言動には賛否ありましたが、彼女は自分が世田介と”合わない”ことは最初から理解していて、だからこそ最初はあまり踏み込まないようにしていました。
そこを犬飼教授に指示されて踏み込まざるを得なくなり、ヒートアップしてしまった、と。
世田介との対立軸から悪役のように描かれてしまいましたが(実際にエグイ性格ではありますが)、個人的には彼女を世田介にぶつけた犬飼教授の方が問題だった気がしますね。
「ブルーピリオド」猫屋敷あもの名言・名シーン
それでは最後に、猫屋敷あもの名言や印象的なシーンを紹介してシメとさせていただきます。
「でも矢口くん多分」
「『作品』を作ったことが」
「ないんだね~」
課題の中間講評で八虎をバッサリ切る猫屋敷先生。
思わず反発する八虎でしたが、猫屋敷先生は『作品』の意味を八虎に明快に説明します。
八虎は全く選べていない。
伝えたいものは何か?
どんな発想、描き方、モチーフ、素材、大きさ、置き方で表現するのが適切か?
「吟味して」
「検証して」
「繰り返して」
「君が選んだものが」
「君の作品になるの」
入学して以来「受験絵画」は「作品」ではないと言われ続けてきた意味を、八虎はようやくこの時理解することができました。
「じゃあ彼との」
「セックスを作品にすれば?」
自分に憧れ、何でもすると言いつつ彼氏の束縛が強くて作品に集中できないと言う女子生徒に告げた言葉。
「なんでうけるの?」
「そういう作家のこと」
「笑って見てるの?」
「そのプライドって」
「作品良くするより大事?」
「そういうことだよ」
「自分より作品の方が大事なんだ」
周囲はドン引きしていましたが、猫屋敷あもという作家の在り方が良く表れた言葉です。
周囲に気を遣ってばかりで疲れないかと彼女を心配する夢崎。
しかしどれだけ苦しい状況にあっても猫屋敷先生はブレることがありません。
「だって私の全部を」
「ギブしないと」
「みんな私の作品」
「みないもん」
ある意味彼女は、アートの世界の厳しさを体現した人物なのかもしれませんね。
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