「ブルーピリオド」不二桐緒(フジキリオ・フジさん)~人を魅了する反権威主義芸術集団・ノーマークス代表~

 今回は山口つばさ先生が「アフタヌーン」で連載中の青春アートストーリー「ブルーピリオド」から、反権威主義芸術集団「ノーマークス」の代表「不二桐緒(フジキリオ・フジさん)」について解説します。

 不二桐緒(以下、フジさん)は主人公の八虎が藝大2年目に出会った女性。

 既存の藝大の指導に馴染めずアートとの向き合い方に悩む八虎に、アートの楽しさを教えてくれた存在です。

 恐ろしく魅力的な人物である一方、藝大側からは「悪」として忌避されていたフジさん。

 本記事では彼女が率いる「ノーマークス」の概要も含め、その人物像を深掘りしてまいります。

「ブルーピリオド」不二桐緒(フジさん)のプロフィール

誕生日10月5日
年齢不明
身長不明
所属ノーマークス(反権威主義芸術集団)

 不二桐緒(フジキリオ、以下フジさん)はコミックス12~13巻で描かれた「ノーマークス編」で登場したキャラクター。

 反権威主義芸術集団「ノーマークス」(詳細は後述)の代表を務める女性です。

 外見は年齢不詳でおっとりした雰囲気の美女。

 長い黒髪に隠れていますが、実は後頭部は刈り上げられています(涼しいからだそうです)。

 一言で言うなら、異様に博識でガサツでピュアでモテる女性。

 アートに関する知識量はずば抜けている一方、普段の言動は非常にマイペースかつ不思議ちゃんで、タワシで身体をゴシゴシ洗うなど奇行が目立ちます。

 男女問わず異様にモテ、周囲からはノーマークスの鷹田さん(♀)が彼女だと認識されていますが、作中で明確にフジさんが同性愛者(あるいは両性愛者)であることを示す描写はありません。

 色んなモノに対して「かわいい」と発言していますが、彼女の「かわいい」は価値の保留で良いも悪いも全てひっくるめて面白がっているだけ。

 非常に超越した価値観の持ち主と言えます。

「ブルーピリオド」不二桐緒(フジさん)が人を魅了する理由

 フジさんは恐ろしく魅力的な女性です。

 単純な見た目の話ではなく、アート好きにとってのカリスマという意味で。

 まず一度読んだ本の内容は一言一句忘れないそうで、アートの知識が恐ろしく豊富。

 その上で彼女は、アート好きであれば誰であれ差別することがありません。

 知識レベルの差がある人間に対しても優しく丁寧に、一緒にアートを楽しもうとします。

 またアートはどうしても個々人の主義主張が強く反発が起きやすいのですが、フジさんは自分の意見は一切曲げずに相手の心にチューニングするのが天才的に巧み。

 良くも悪くも宗教的な魅力を持った女性と言えるでしょう。


「ブルーピリオド」ノーマークスとは?

”反権威主義”芸術集団

 フジさんが代表を務める「ノーマークス」は「アートコレクティブ」の一つ。

 「アートコレクティブ」とは特定の理念などを持って芸術活動をする集団のことです。

 「ノーマークス」はその中でも”反権威主義”を掲げる芸術集団。

 この場合の”権威”は権力者や富裕層、美大・藝大のことを指します。

 美大・藝大は入学するには相応のお金が必要で、地方だと情報が入ってこないブラックボックス化された世界。

 美術に限った話ではありませんが、金銭面や人種、ジェンダーで有利不利が生じてしまいます。

 そんな中「ノーマークス」はアート好きであれば誰でも受け入れる出入り自由な場所(出入り寝泊まり自由で、代わりに何でもいいから一つものを置いていくのがルール)。

 アートを身近な日常の一部として楽しむことを是としています。

 そのため美大藝大に入れなかった人間や、大学に飽き飽きしている人間からするとひどく魅力的に映ることが多いようです。

「権威=美大」側から見たノーマークス

一方「権威=美大」側から見たノーマークスは非常に怪しげで問題のある組織です。

 外部から見たノーマークスは家族主義の悪い所を煮詰めた宗教そのもの。

 真偽不明で怪しい数々の噂が飛び交っています。

・メンバー同士で乱パ。
・変な儀式やってる。
・美大生が不当な扱いを受ける。
・代表が彼女をキャバで働かせて運転資金を稼いでいる。

 ちなみに上二つは完全な偏見で、三つ目は恐らくノーマークスと会わなかった美大生が流した噂。

 最後の一つに関しては、鷹田さんがキャバで働いて運転資金を稼いでいたのは事実ですが、恐らく鷹田さんが自発的にやっていたことでしょう(というか、鷹田さんがフジさんの彼女かどうかも不明)。

 一方で、藝大副学長の犬飼教授のような権威のトップに立つ方からすると、ノーマークスのような反権威主義組織は必要悪。

 嫌ってはいますが、権威を証明する存在として、いてもらわなくては困ると考えています。


「ブルーピリオド」不二桐緒(フジさん)と矢口八虎

 主人公・矢口八虎とフジさん、そしてノーマークスとの出会いは藝大2年目の前期。

 桑名マキに紹介された他学部の学生、如月さんと久山さんにノーマークスのイベントの手伝いを頼まれ、フジさんたちと関わるようになります。

 当初は怪しげな宗教みたいな組織と警戒していた八虎ですが、フジさんの知識と考え方に魅了され、次第に大学の製作そっちのけでノーマークスに入り浸る様に。

 フジさんからアートとは何かを理論立てて学ぶことで、八虎は改めてアートの魅力を理解し、情熱を再燃させていきます。

 一方で、外部から見たノーマークスの評判は悪く、彼らとどのように関わっていくべきか迷う八虎。

 そんな中、資金不足からノーマークスが解散することを知った八虎は、少なくとも自分がノーマークスと関わって美術を楽しいと感じた気持ちはウソじゃないと、その正直な気持ちを大学の課題にぶつけます。

 その挑戦を経て、大学入学以来感じていた閉塞感を一つ破ることが出来た八虎。

 ノーマークス最後の日、八虎は素直な気持ちでフジさんと再会を約束して分かれます。

「ブルーピリオド」不二桐緒(フジさん)の名言

 それでは最後に、フジさんの名言、印象的なシーンを紹介してシメとさせていただきます。

「私は美術は」
「”ありがたいもの”じゃなくて」
「私たちの日常の大事な」
「一部でいて欲しいです」

「だって美術はもう」
「選ばれしモノの特権じゃ」
「ないはずでしょう?」

 出会いの日、ノーマークスが何故展示とパーティーを一緒にしているのか、アートの歴史とともに説明するフジさん。

 その美術の役割を問う考え方は、大学に入って以降作品のコンセプトばかり考えていた八虎にとって新鮮な驚きでした。

「また来たくなったら」
「いつでも来て」
「鍵はたぶん」
「あいてるから」

 そしてこの一言で、八虎は再びフジさんと会って話をしたいと思うようになります。

 

 ノーマークスでフジさんから様々な物を学ぶ一方で、ノーマークスの悪評を聞き、その関わり方を悩む八虎。

 そんなとき彼は、フジさんからノーマークスが資金難で解散することを知らされます。

 弱者であり、宗教とも揶揄される自分たちの在り方に対する苦悩をポツリ口にするフジさん。

「ただ美術が」
「やりたいだけなのにね」

 

 そしてノーマークス最後の日。

 フジさんは八虎に敢えて期待しているとは言わず、ただ彼の中に住まう小さな虎が好きだとだけ告げ、かつて聞いたのと同じ言葉で去っていきました。

「新しいノーマークスができたら」
「いつでも遊びにきてくださいね」
「鍵はたぶん」
「あいてるから」

【まとめ】「ブルーピリオド」キャラクター一覧

 



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