今回は「週刊ヤングマガジン」で連載中の本格囲碁漫画「伍と碁」について解説します。
「伍と碁」とは「ヒカルの碁」以来の週刊誌連載囲碁漫画。
かつて十分な才能を持ちながら、五人の囲碁の天才に関わったことで自分には才能がないと思い込み挫折した主人公が、自分の才能を信じて再起する物語です。
制作は日本棋院がバックアップし、トップ棋士が監修を務める本格囲碁漫画。
本記事ではそんな「伍と碁」のあらすじ、登場人物の解説を踏まえ、その魅力を解説してまいります。
目次
「伍と碁」あらすじ
主人公の秋山恒星は幼い頃、野球、サッカー、勉強、何をやっても簡単に歳上を凌駕する才能を発揮する天才少年でした。
承認欲求の塊である秋山恒星は、既に有名な天才がいる分野では自分の名前が薄れてしまうと、囲碁の世界で八冠を制覇し、囲碁界の藤井聡太になろうと考えます。
そして小学6年生の時に通いだした近所の囲碁教室。
そこで彼は同年代の5人の子供たちに敗北しました。
天才であったはずの秋山恒星が、一日十時間囲碁の勉強に費やしてもその5人には一度も勝つことができず、三か月間で0勝1000敗。
負けを覚え、自分が天才ではなく井の中の蛙であったと理解した秋山恒星は囲碁を止め、他のことでも負けるようになり、何者でもないまま高校生になりました。
熱を失いぼんやりと生きていた彼は、ある日母親の頼みで町内会のイベントに店員のバイトとして参加。
そのイベントの囲碁将棋ブースで道場破りのようなことを始めた小金という男と囲碁で対戦することになります。
元院生でプロを目指しているという小金に「小6の時に子供囲碁教室の5人に一回も勝てなくてやめたぐらいの棋力」しかない自分が勝てるわけがないと考えていた秋山恒星でしたが、彼はあっさり小金に勝ってしまいます。
そして混乱する彼らの前に、一つのニュースが飛び込んできます。
タイトルの一つである十段戦トーナメント決勝で、14歳の榎本翠初段が史上最年少でのタイトル挑戦者となった。
その榎本翠こそが、かつて秋山恒星が一度も勝てなかった囲碁教室の5人の子供の1人だったのです。
「日本トップクラスの野球の才能を持つ少年が入った近所の野球教室に大谷翔平が5人いたら、その少年は自分に野球の才能がないって思うんじゃないかなって話」
これは5人の天才に潰された少年が、再び自分の才能を信じ5人の天才へと挑む挫折と再起の物語。
「伍と碁」主な登場人物(キャラクター)
秋山恒星
本作の主人公で高校1年生の少年。
1歳で逆立ちをし、野球では小4の時初めての打席で中3からホームラン、勉強は小5で高1の問題を解き、サッカーでは小6の時に高2を簡単に捌いた万能の天才少年。
ただし小6の時に通った囲碁教室で同年代の5人の子供に一度も勝てずボコボコに負けてしまい、自分は天才ではないと理解しすっかり自信喪失。
熱の無いちょっと卑屈な性格となってしまう。
ただ実際は、その5人が日本トップクラスの囲碁の天才だっただけで、秋山恒星も彼らに匹敵する才能の持ち主。
町内会のイベントで生まれて初めて囲碁で勝ったことをきっかけに再び囲碁を始め、自分が天才であるとの自信を取り戻すため再び5人の天才たちに挑んでいくことになる。
市原葉月
かつて秋山恒星が敗北した5人の天才の1人。
高校1年生の美少女で、総フォロワー数385万人のインフルエンサー。
囲碁を普及させるためにモデルやタレントとして活動しており、プロは目指していない(理由は不明)。
ファンの前では愛想よく振る舞うが本性は毒舌。
異様な麦茶好き。
榎本翠
かつて秋山恒星が敗北した5人の天才の1人。
中学2年生の無口無表情な少年で、既に囲碁棋士(プロ)かつ最年少タイトル挑戦者という、5人の中でも頭一つ抜けた才能の持ち主。
マスコミからは、かつて秋山恒星が望んだ「囲碁界の藤井八冠」との評価を受けている。
桐生光士郎
かつて秋山恒星が敗北した5人の天才の1人。
大柄な体躯の高校3年生で、従業員7萬人を超える桐生グループの跡取り。
その立場故に囲碁でプロを目指すことは許されておらず、囲碁は高校まで、部活でのみという条件をつけられている高校囲碁界の王者。
かつて囲碁教室で出会った秋山恒星に自分の夢を託そうとしていたが……
岡野環
かつて秋山恒星が通っていた囲碁教室のお姉さん。
オレンジのボブカットで眼鏡をかけており、不敵な性格。
秋山恒星に目をかけている。
知人の四元村雨曰く「自分のやることが一番正しいと思っている」らしい。
麦茶を作るのが上手。
天原慶宗
七大タイトル全てを保持している現囲碁界のトップ。
関西弁の飄々とした雰囲気の男性で、偶然見かけた秋山恒星を「昔のオレを見てるよう」と語っていた。
四元村雨
碁会所「鼠」の代理席亭を務める壮年の男性で囲碁八段。
日本トップクラスの実力者で、岡野環と何やら因縁がある模様。
「伍と碁」感想&評価
「ヒカルの碁」と比べてどう?
この「伍と碁」はかつて囲碁ブームを巻き起こした「ヒカルの碁」以来、21年ぶりに週刊連載された囲碁漫画ということもあり、度々比較され話題に上っています。
囲碁界も期待を寄せていて、制作には日本棋院が全面協力。
では実際に「ヒカルの碁」と比べてこの「伍と碁」はどうかと言うと、まず第一印象として登場するキャラクターの癖が強く個性的。
「ヒカルの碁」はリアルにいそうな地味なキャラクターも多く登場していましたが、「伍と碁」はより漫画的で分かりやすいキャラクターが多い印象です。
ただ「ヒカルの碁」と比べリアリティがないかというと、決してそんなことはありません。
「日本トップクラスの野球の才能を持つ少年が入った近所の野球教室に大谷翔平が5人いたら」という漫画コンセプトに関しては、現実離れしているようで案外リアル。
そもそも囲碁とか将棋とかは、自分が天才だと思って飛び込んできた人たちが厳しさに打ちのめされる世界なので、ある意味非常にこのコンセプトと囲碁というテーマはマッチしています。
「ヒカルの碁」とは時代も違うので、今、囲碁を知らない人に分かりやすく伝えようとすると、こういう漫画になるのかな、と。
こんな人におススメ
囲碁漫画というよりはヒューマンドラマの要素が強いので、囲碁を知らない人でも問題なく読めます。
読みやすくてキャッチーな老若男女問わない作風。
普通に漫画として面白いですし、囲碁を知る切っ掛けとしては非常によい作品なのではないかと思われます。
ただ一方で、囲碁そのものの掘り下げはそれほどでもなく、囲碁好きには少し物足りない内容かも。
シンプルに絵が好みとか、そんなとっかかりから読んでみればよいのではないかな、という印象です。
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