「応天の門」感想(ネタバレ含む)~本格平安クライムサスペンス、オタク喪女、白梅がかわいい!~


 今回はコミックバンチで連載中の本格平安クライムサスペンス「応天の門」について紹介します。

 本作は、平安時代は物の怪の仕業と信じられていた数々の怪奇事件を菅原道真と在原業平のバディが解決していくというもの。
 作中では事件の背景にある朝廷での勢力争いが並行して描かれており、それが後の菅原道真と藤原氏の対立に繋がっていく歴史作品でもあります。

「応天の門」のあらすじ(ネタバレ注意)

 舞台は藤原氏が朝廷での権力を席巻する平安時代。
 京の都ではその藤原氏の屋敷から下女が行方不明になるという事件が起きていました。

 その事件を調査することになった検非違使の在原業平は、自身の縁者である紀長谷雄が容疑者として捕縛されてしまい、その無実を証明するため、長谷雄の学友である菅原道真に協力を要請します。

 道真はその鋭敏な知性ですぐさま真相に辿りつきますが、実は下女たちは藤原氏の暴力に耐えかね、密かに逃げ出していたというのです。

 道真は鬼退治に偽装して藤原氏の行いをあばき、屋敷の下女たちを救い出すことに成功します。そして無事に長谷雄の無実を証明するのですが、この一件で業平に目を付けられ、度々事件に巻き込まれることに

 架空の美姫「玉虫姫」、かつての業平と駆け落ちした「藤原高子」の屋敷に現れた物の怪、様々な事件を解決しながら、道真は自身の過去を知り、次第に成長していきます。

 そして次第に明らかとなっていく道真たちと藤原氏との因縁
 次第に対立色を深めていく両者は、果たしてこの物語の中でどのような結末を迎えることとなるのか。

 歴史上、ある程度道真たちの最期は明らかになっていますが、この物語ではそれがどのように描かれるのか、非常に期待させる展開となっています。


「応天の門」の主な登場人物(ネタバレ注意)

菅原道真(すがわらのみちざね)
本作の主人公で、文章生と呼ばれる貴族の学生。
外見は三白眼の年若い少年。普段は冠で隠しているが、額に昔兄に付けられた傷痕が残っている。
学問に通じ、非常に鋭敏な知性の持ち主。
家柄ではなく学問の力で出世ができるという唐に憧れ、遣唐使になることを夢見ている。
人付き合いが嫌いで、他者に冷たい態度をとることも多いが根は優しく、平民に対しても分け隔てなく接する人格者でもある。
貴族社会の理不尽さ、兄を殺した藤原氏を憎んでいる。

在原業平(ありわらのなりひら)
本作のもう一人の主人公で、検非違使として都の守護を担っている。
これまでに数々の貴婦人と浮名を流してきた色男で、過去に藤原高子と駆け落ちしたことが原因で藤原氏によって宮廷の要職からは外されている
非常に社交的で人心掌握に長け、数々の相談が業平のもとに寄せられるが、作中では基本的に道真に丸投げしている。
女癖は悪いが、実は今でも藤原高子に未練たらたらである。
ちなみに女癖の悪さは史実通り

白梅(はくばい)
ある翁に仕える女房で、翁の死後は道真に仕える。
漢学に非常に長けた才女で、仕える翁のために「玉虫姫」という実は既に亡くなった架空の美女を演じていた
非常にミーハーな性格で業平に憧れている。
外見はあまり良くないという設定だが、オタク的なかわいらしさや相性の良さから、登場当初は彼女が道真のヒロインかと思った読者は多い(まだ可能性はゼロではないが……)
ちなみに、道真公が祀られる天満宮の神紋は「梅」である。

紀長谷雄(きのはせお)
道真の学友で業平の縁者でもある少年。
いわゆるのび太君キャラで、ドラえもん(道真)にしばしば泣きついて事件に巻き込む。
実は根はいい奴というところも含めてのび太。

昭姫(しょうき)
賭場兼商店の妖艶な女主人。
実は元は唐の宮女という渡来人で、しばしば道真たちの相談に乗ってくれる。
横暴な貴族が嫌いで、意外と情に厚い。

藤原高子(ふじわらのたかこ)
左大臣、藤原良房の姪で、帝に入内することが決まっている。
かつて業平と駆け落ちしたことがあり(その時は失敗して連れ戻された)、今でも業平のことを想っている
道真の好み(書物、墨)を見抜いてもので釣って動かすなど、かなり貴族的でいい性格をしている。

島田宣来子(しまだののぶきこ)
道真の許嫁で12歳の少女。
心から道真のことを慕っており、道真と夫婦になるのを待ちきれず塀を登って屋敷に乗り込もうとするなど、相当なお転婆
ただし、その洞察力や学習能力は相当なもの。
正史での道真の妻。

藤原基経(ふじわらのもとつね)
高子の兄で、藤原氏の後継者でもある青年。
怪しげな雰囲気漂う策略家で、ラスボス臭をぷんぷんさせている
史実では日本史上初の関白。



「応天の門」の感想と魅力

史実と創作のバランスが絶妙な歴史クライムサスペンス

 本作の登場人物は、そのほとんどが史実のキャラクター(白梅や昭姫は除く)で構成されており、ストーリーも(今のところ)史実を壊さない範囲で語られています。

 勿論、在原業平と菅原道真がバディを組んでいたなんてことは史実ではありませんが、可能性としてはゼロではありませんしね。

 道真と知性と、業平の常識・政治感覚とが非常にうまくバランスがとれており、サスペンスとしても極めて良質な内容となっています。

 史実と創作との絶妙なバランス、サスペンスとしての面白さ、キャラクターの魅力、全てがバランスよく高くまとまった傑作と言えるでしょう。

 史実では、菅原道真は大宰府に左遷され、悲嘆の中で死んでいったとされています。
 この物語では、果たしてそこにどんな折り合いが付けられることとなるのか、非常に結末が楽しみな作品です。

アニメ化は? それとも実写化?

 コミック累計100万部を突破した人気作ですし、今のところ具体的な話は聞こえてきませんが、いつアニメ化の話がきてもおかしくありません。

 ただ、画風や話の内容からすると、アニメよりも実写向きの内容なのかな、と個人的には考えています。

 それこそ映画化でもしたら非常に映えそうな内容ですよね。

 まあ、アニメ化にしろ実写化にしろ、コミック原作のクオリティが高いだけに中途半端な内容であれば原作ファンがガッカリするだけでしょうから、おかしな話に飛びつくことなく、良い形でメディア展開していって欲しいものです。



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