「神様のバレー」感想&評価(ネタバレ注意)~アナリストが戦術と詐術で弱小チームを全国制覇へ導く、主人公の呪いとは?~


 今回は「週刊漫画TIMES」で不定期連載中の、選手ではなく指導者を主役としたバレー漫画「神様のバレー」について紹介します。

 独特の理論と傲慢な考えを持った指導者・監督が弱小スポーツチームを勝利に導くという物語は、一昔前は珍しかったものの今ではスポーツ漫画の一大ジャンル。野球では「ラストイニング」とかが有名ですね。

 漫画的な必殺技・スーパープレーが無い分、そのスポーツの理論をより深く知ることができ、メンタルや人間模様が丁寧に描かれているのが特徴です。

 本記事では「神様のバレー」のあらすじや登場人物などに触れながら、その魅力や特徴(呪い)について深掘りしていきたいと思います。

「神様のバレー」あらすじ(ネタバレ注意)

全日本男子の監督のイスのため、敏腕アナリストが弱小中学生チームのコーチに

 この作品の主人公、阿月総一はVリーグチーム「日村化成ガンマンズ」の敏腕アナリスト

 アナリストとはコート外から相手チームを分析して監督に的確な情報を送るチームの裏方ですが、阿月が得意とするのはデータ分析ではなく嫌がらせ。

 阿月は相手の弱点を的確に見抜き、相手が嫌がるプレーを組み立てチームを2度の優勝に導いた異才でした。

 ある日、阿月はチームのオーナーから「自分の知人が経営する学園で、万年1回戦負けのチームをコーチとして全国優勝させれば、全日本男子の監督のイスを用意する」という賭けを持ち掛けられます。

 その賭けに乗った阿月が赴任した幸大学園中学校バレー部は、元全日本女子候補だった鷲野孝子が監督となり、気合と根性だけを訴える旧態依然としたチームでした。

 しかもレギュラー以外のメンバーは練習に参加せず、球拾いなどサポートに専念するという偏った指導方法。

これを見た阿月は不満を溜めていた補欠メンバーにこっそり指導を行い、公式戦で試合を乗っ取ってレギュラーと補欠を総とっかえ。
 阿月の戦術によって幸大学園に初勝利をもたらします。

 二回戦ではシード校の二子石中に為すすべなく敗北した幸大学園。

 しかしこれも阿月の狙い通り。
 この勝利と敗北によって部員たちの闘志に火が付き、彼らは本気で全国制覇を目指してバレーに取り組んでいくことになるのです。

主人公の本当の望みは中学時代にかけられた「呪い」を解くこと

 新体制で臨んだ秋季大会。

 阿月の戦術、そして鷲野の技術を叩きこまれた幸大学園は以前とはまるで様子が異なり、地区大会を当然のように勝ち進んでいきます。

 そして決勝では前大会で敗北した因縁の二子石中がその相手。

 阿月はチームのフォーメーション表をわざと落として相手に拾わせ、罠を仕掛けるといった場外戦も駆使し、見事チームを地区大会優勝に導きます。

 その後も全国制覇目指して躍進を続ける幸大学園。
 時にわざと勝利を逃して、上位の大会でより有利に立ち回るなど、その戦術はコート外でも冴えわたっています。

 そんな中、次第に明らかになる阿月の過去。

 実は阿月は元々バレーを「クソみたいな競技」と考えてバスケをやるつもりでしたが、中学時代に児玉監督が仕掛けた呪い、「8-20の劣勢からほんの僅かな行動でチームを逆転させた」偉業に憑りつかれ、バレーから離れられなくなっていました。

 阿月が上を目指すのも、その偉業を超え、呪いを解くため。
 それができれば、阿月はバレーから離れたいとさえ考えていたのです。

 そしていよいよ全国大会、そこには阿月の恩師であり呪いをかけられた因縁の存在、児玉監督率いる下道中学の姿もありました。


「神様のバレー」主な登場人物(ネタバレ注意)

阿月 総一(あづき そういち)

 本作の主人公で元Vリーグの敏腕アナリストにして現中学校バレー部コーチ。

 黙っていれば普通に見れる外見をしているが、性格は壊滅的で、自分のことを「バレーの神」と自称している

 ガンマンズのオーナーの賭けに乗って幸大学園中学を全国制覇へ導こうと企む。

 その分析力、戦術は天才的で、場外戦術も含めてほとんど向かうところ敵なし。
 バレー選手としても一流で、現在でもその実力は相当なものと、性格以外は非の打ち所がない

 生徒を自分の目的のための道具として見てはいるものの、それはそれとして生徒の願いに対しては真摯に協力しており(願いそのものを誘導してはいるが)、決して外道というわけではない。

 中学時代に魅せられた児玉監督の偉業を「呪い」と称し、その「呪い」を解く方法を探している。

鷲野 孝子(わしの たかこ)

 幸大学園中学バレー部監督。

 元は全日本入りも期待されていたプロ選手だったものの、膝の故障により引退

 外見はメガネと黒髪ポニーテールが特徴の柔らかい雰囲気の女性で、現役時代はアイドル選手としても名が売れていた。

 「気合いと根性」があれば勝てるがモットーで、戦術面に関しては論外、阿月からは「ハゲワシ」呼ばわりされ馬鹿にされているが、元プロ選手だけあって技術指導に関しては優れている。

木下 勇紀(きのした ゆうき)

 阿月の後輩アナリスト。

 学生時代に出会った阿月の戦術に感動し、阿月を追ってアナリストになった。

 外見は小太りマッシュルームカットの気弱そうな男だが、データ分析力に関しては定評がある正統派のアナリスト。

 鷲野のファンで、阿月のサポートもあってちょっといい感じにはなっているが、根本的に童〇のため、あくまでちょっとでしかない。

 現役時代はセッターで、意外にも阿月とは抜群のコンビネーションを見せている。

盛長 緑子(もりなが みどりこ)

 阿月の同僚アナリスト。

 外見は外と内に跳ねた色素の薄いショートカットと太めの眉が特徴の気の強そうな女性。

 実家は盛長グループという大金持ちで、それもあってか性格は非常に傲岸不遜なワガママ娘。

 元プロのリベロで、現役時代に鷲野が引退した原因となった人物でもある。

 阿月に惚れ込んでいて堂々と愛を伝えているが、まるで相手にされていない。

 アナリストとしての能力は非常に優秀で阿月も一目置いており、幸大学園の全国制覇のために阿月にイタリアから呼び寄せられる。


「神様のバレー」の感想&評価

選手ではなく監督・指導者が主人公のスポーツ漫画は珍しくないが……

 冒頭でも少し触れましたが、選手ではなく監督・指導者がメインのスポーツ漫画は今や一つのジャンルを形成しており、決して珍しいものではありません。

 単に技術や身体能力が優れた選手をメインに据えるより、一層そのスポーツの戦術や仕組みを深く描くことができる、「大人」向けのジャンルと言えるでしょう。

 スーパープレーや必殺技的なものが存在しない分、展開としては地味になりがちなのですが、この「神様のバレー」は主人公の阿月が場外戦も含めて非常に手段を選ばず、様々などんでん返しを用意してくれるため飽きを感じさせない良作です。

 また、バレーだけでなく「人間」が非常に丁寧に描かれていて、キャラクターがキチンと立っているところも魅力の一つですね。

 今のところ阿月が無双状態なのですが、今後阿月に対抗できる監督が現れるかどうかが物語の鍵を握りそうですね。

なんで「完結」「最終回」で検索されてるの? アニメ化はされる?

 この記事の下調べをしていて気になったのは、この「神様のバレー」がやたら「完結」「最終回」といったワードで検索されていること。

 2012年から連載され、現時点(2021年8月時点)でコミックス26巻が発売された長寿作ではあるのですが、まだまだ連載は続いています

 まあ、そろそろ完結するのかと気になった人や、不定期連載なので休載時の雑誌を見て「知らない間に完結した!?」と考えた方が検索しているのでしょう

 実際、全国制覇が近づいているので終わらせようと思えばいつでも終わらせられますから、そこは作者と出版社のさじ加減一つなんでしょう(まあ、人気作なのでまだまだ続くとは思いますけど)。

 アニメ化を期待する声も聞こえますが……多分難しいんじゃないでしょうか。

 今は「ハイキュー‼」がバレー漫画では圧倒的な人気ですし、「神様のバレー」はこのご時世だと「大人が子供を利用しているような作品は不謹慎だ」みたいなことを言い出す人もいそうです。

色々やっていることに問題がないわけではない作品なだけに、アニメ受けはしないんじゃないのかな、と。

 いっそ深夜ドラマとかの方が可能性はありそうですが……



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