「エクソシストを堕とせない」感想&評価(ネタバレ注意)~ダイナミックな作画と展開が魅力の期待作~


 今回は原作「有馬あるま」、作画「フカヤマますく」のコンビが「ジャンプ+」で連載中の期待作「エクソシストを堕とせない」について解説します。

 本作はダイナミックな展開と作画で注目が集まる、最強エクソシストの戦いと恋を描いた物語。

 2022年には次にくるマンガ大賞のWebマンガ部門で第9位に選出されています。

 本記事では「エクソシストは堕とせない」のあらすじや登場人物の解説を踏まえ、その魅力を深掘りしてまいります。

「エクソシストを堕とせない」あらすじ

最強のエクソシストVSファムファタール

 本作の主人公は最強のエクソシストとして育てられた神父の少年。

 僅か12歳で色欲の魔王アスモデウスを退けた彼は、サタンを倒し得る奇跡の子として、エクソシストとしての使命に全てを捧げていました。

 そんなある日、教会にサタンの元から犯行予告が届きます。

「【悪の回廊】の主とその親愛する者を我が地獄に招待しよう」

 【悪の回廊】とは愛月イムリという日本人画家の企画展の名称。

 愛月イムリがサタンに狙われていると考えた教会は、神父を彼女の護衛につけることにします。

 奔放で魅力的な愛月イムリに振り回されながらも、彼女の存在に安らぎを感じる神父。

 そしてそれこそがサタンの真の狙いでした。

 愛月イムリの正体はサタンによって送り込まれたサキュバスの原種リリン。

 男を破滅させる運命の女・ファムファタールだったのです。

次々と現れる魔王と暗躍するサタン

 愛月イムリの護衛となった神父ですが、彼の敵はサタンだけではありません。

 神父へのリベンジに燃える強欲の魔王マモン。

 強すぎるが故の孤独に苛まれる嫉妬の魔王リヴァイアサン。

 残忍かつ邪悪な暴食の魔王ベルゼブル。

 いずれも強大な魔王たちでしたが、新たに愛月イムリの護衛として加わったシスターレア、シスターバーバラらの助けもあり、神父は彼らを退けることに成功します。

 至極順調かに見えた神父の戦いでしたが、しかし神父と戦ったベルゼブルは、彼が以前よりも弱体化していることに気が付きます。

 弱体化した姿でサタンを問い詰めるベルゼブル。

 自身の復活を前に暗躍するサタンの真のシナリオとは……?


「エクソシストを堕とせない」主な登場人物

神父(主人公)

 本作の主人公である16歳の少年。

 本名は不明で周囲からは「神父」とだけ呼ばれている。

 外見はくすんだ金髪を持つ小柄な少年。

 幼い頃父親に虐待され捨て子となったものの、教会でサタンに対抗し得る「奇跡の子」として見いだされ、狂信的な神の教えを受けて育つ。

 神の教えには忠実だが、それはそれしか縋るものがないため。

 一時師となったダンテから「恋をしろ、人を愛せ」と言われてからは、恋とは何か関心を持つようになる。

 その能力は「奇跡の拡大解釈」で、聖句を唱えることでその奇跡を実現させることができる。

 不死身に等しい再生能力を持ち、神や大天使の力を借り受けることができる彼の力は、魔王でさえ打倒し得る。

愛月イムリ

 「恋する悪魔」をテーマに絵を描き続ける画家の美少女。

 日本人とイギリス人のミックスルーツで年齢は18歳、両親は既に他界。

 高校には通っておらず、既に画家として世界から高く評価されており、収入は日本の上位3%に入るのだとか。

 ただし私生活はズボラで家事は一切できない。

 明るく奔放で人懐っこく、誰からも愛される理想的な少女……というのが人間としての彼女の姿。

 その正体はサタンから神父を恋に堕とすため送り込まれたサキュバスの原種「リリン」。

 生まれつき一切魔力を持たないため、彼女を悪魔と見抜ける者は存在しない。

 運命の女、男を破滅させる魔性の女「ファムファタール」。

 ただし恋に対しては裏表がなく、サタンからの依頼に対しても、恋する相手は自分で決めると、神父が気に入らなければすぐにとんずらするつもりだった。

 まだとんずらしていないということは、つまりそういうこと。

レア

 イムリの追加護衛として派遣されたシスター。

 金髪ショートカットの美少女で、明るくハイテンションな16歳。

 水をキューブ状にして自在に操る奇跡の力を持つ。

 が、それは神父のような天からの奇跡ではなく、錬金術によるもの。

 本来の器ではないため力の使用時は体内で破壊と再生が繰り返され、連続活動時間は5分間が限界。

 既に寿命は1年も残っていないと言われている。

 5歳の時、自身の過ちによりベルゼブルを村に招いてしまい、家族を含めた村人がベルゼブルに皆殺しにされた過去を持つ。

 その際、ベルゼブルに弟の肉を食べさせられ、以来肉が食べられなくなってしまった。

バーバラ

 イムリの追加護衛として派遣されたシスターその②。

 レアの相棒で、常に武骨な仮面を被っている。

 冷静沈着で常に周囲への気遣いを忘れない心優しい少女。

 しかし未成年ながらかなりの酒豪で、何かにつけて酒を飲もうとする。

 聖処女ルチア(異教徒と政略結婚させられそうになり、目を抉られてもそれを拒否した殉教者)の加護を受けており、仮面を外すことで対象の視覚を奪うことができる。

ダンテ

 教会に所属するエクソシストの男性。

 実力は確かだが自由奔放な性格の破戒僧。

 神父が12歳の時一時教育係になったことがあり、彼に「恋をしろ」と説いた。

 神聖なる「塩」を奇跡として操ることができる。

 暴食の魔女(悪魔と契約した者という意味での魔女で、性別は男)「ヴィルギリウス」の幼馴染であり、彼と因縁を抱えている。

マモン

 強欲の魔王。

 外見はスーツにメガネ姿のインテリヤクザ風の男性。

 人の欲望を己の力に変えることができる。

 3年前に神父に敗れており、リベンジのために現れる。

 やたら男らしく、正々堂々と自分の力で他者を踏みにじろうとする。

リヴァイアサン

 嫉妬の魔王。

 普段は水色の髪の幼女の姿をしており、中身も非常に幼い。

 自らを「ママ」と呼び、イムリとも知り合い。

 その本性はあまりに巨大で強大な海に住まう全ての獣の母。

 あまりに強すぎ対等の存在がいなかったため、敢えて弱い姿を取って他者との繋がりを求めていた。

ベルゼブル

 暴食の魔王。

 壮年の紳士風の外見をしている。

 アモンやリヴァイアサンとは異なり、己の欲望を満たすため明確に人類に牙をむく邪悪の化身。

 2年前に神父が撃退したことになっているが、実際には神父の身体の大部分を食べ尽くし、満足して帰っていっただけ。

 レアにとっての因縁の敵。

サタン

 憤怒の魔王。

 イムリを神父の下に送り込んだ張本人。

 外見は巨大な蛇を身体に纏わせた黒髪のイケメン。

 復活間近であり、自身の邪魔となり得る神父を排除するため暗躍する。

 その真のシナリオはそれを聞いたベルゼブルが八つ裂きにしてやろうと考えるほど悪辣なものらしいが……?


「エクソシストを堕とせない」感想&評価

画力・ストーリーともに高レベルでシンプルに面白い

 「エクソシストを堕とせない」を読んでの第一印象は、画力・ストーリーともに高レベルでまとまっていてシンプルに面白い作品だな、というもの。

 話のテーマや展開としては良くある内容ではあるのですが、とにかく読みやすくて面白い。

 特に画は大分デフォルメされ可愛らしい感じになっていますが、安っぽい雰囲気は皆無。

 ダイナミックなコマ割りで、特に戦闘シーンの迫力は圧巻の一言です。

 ストーリーも展開が早くて飽きさせず、シンプルながらぐっと引き込まれる。

 最近はチェンソーマンに影響されてか奇をてらった作品が目立つ中、王道の良作がでてきたなという印象です。

こんな人におススメ

 可愛らしい画風に抵抗がない方であれば、基本的に誰でもおススメできる王道作品。

 どうしても一定数こういう画風に抵抗がある人はいますが(特に男性)、そうでなければまず読んでみて損はないと思われます。

 キャラクター造形がはっきりしていて感情移入しやすく、コミックスとかで一気にまとめて読みたい派の方にはなおおススメ。

 一方で「恋」がテーマの作品ではあるものの、恋愛要素は然程強くないため、そういうのが苦手という方でも大丈夫です。

 

 個人的にはレアとバーバラが可愛くてカッコよくて好き。

 ベルゼブル編が終わって二人の山は越えた印象がありますが、できればバーバラの能力の深掘りとかもしてほしいですね。



コメント

  1. 井筒孝庵 より:

    こんにちは。

    よほどのメジャーな作品でないときちんとした解説や考察の記事になかなか巡り合えず、検索をかけても似たようなアフィリエイト広告記事が上がってくるばかりで辟易としていましたが、

    こうした良質のまとめ記事に出会えてとても嬉しく思っています。

    「エクソシストを堕とせない」は、世界観・設定・キャラクタ造形・謎解き要素などを備えた好みの作品の一つです。

    さすがまんが探偵社、他のまとめ記事も併せて拝見いたします。ありがとうございます。

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