「迷宮ブラックカンパニー」の感想&評価~アニメ化もされた異世界転移なろう系のようで一味違う良作~


 今回は「MAGCMI」で連載中、2021年7月にはアニメ化もされた「迷宮ブラックカンパニー」について紹介します。

 この作品は、異世界転移、ニート、クズ系主人公と3拍子揃ったいかにもな”なろう系”でありながら、実は”小説家になろう”とは無関係なオリジナルの漫画。異世界を舞台にしたニートVS社畜・ブラック企業の戦いという、意味不明な物語の概要とその魅力について語ってみようと思います。

「迷宮ブラックカンパニー」のあらすじ(ネタバレ注意)

あらすじ(ネタバレ注意)

 主人公の二ノ宮キンジは、安定したニートライフを送りたいという一心で、スイングトレード、海外不動産投資で資産を増やし、都内に3つのマンションを建設しその不動産収入だけで優雅な暮らしを送れる仕組みを構築した『ネオニート(本作の造語)』

 まさにこの世の春を謳歌していたキンジでしたが、ある日何の前触れもなく異世界に飛ばされ、1日14時間労働が基本の採掘場「ライザッハ鉱業」で働くはめになってしまいます(ニートから一気に労働基準法違反の劣悪な環境に……主人公がクズなので、あまり気の毒でないのがこの作品の良いところですね)。

 キンジが飛ばされたのは、アムリアという中世ファンタジー風の世界。迷宮から採掘される「魔石」が主なエネルギー源として活用されていて、キンジの仕事は凶悪な魔物の住まう迷宮で魔石を採掘すること。

 もう少しマシな職場はなかったのかと思われるでしょうが、キンジはアムリアに来るなり手持ちのタブレットを売って詐欺師扱いされ、多額の借金を抱えてライザッハ鉱業に売り飛ばされて来た身。他に選択肢がありません。

 労働を嫌悪するキンジは、同僚のワニベ(リザードマンっぽい亜人)をそそのかし一攫千金をもくろみますが、そこで巨大な魔神に遭遇し絶体絶命。
 なんとか魔神・リム(少女の姿になる)を言いくるめて仲間に引き込みますが、その代償にリムの巨大な胃袋を満たし続けるはめになり、キンジたちのエンゲル係数は凄まじいことになってしまいます。

 それでもキンジは挫けず、ライザッハ鉱業を乗っ取って安定したニート生活を送るべく、魔物たちさえ仲間に引き込み、「迷宮ブラックカンパニー」を結成して様々な企みを巡らせていくのです。

用語解説

魔鉱遺跡
かつてダンジョンと呼ばれた場所で、今は魔石の採掘場。

魔神
迷宮の中核をなす魔物で、周囲から魔素を吸収して迷宮を維持している。

ライザッハ鉱業
キンジが働く大企業。軍隊じみた教育で社員に洗脳を施すなど、かなりヤバいブラック企業。

勇者
会社に利益をもたらすエース社員。しかし会社では迷宮維持のために魔神に捧げられる生贄として認識されている


「迷宮ブラックカンパニー」の主な登場人物(ネタバレ注意)

二ノ宮キンジ(にのみや きんじ)
本作の主人公で「ネオニート」を自称する青年。
労働を嫌い、ただ怠惰な暮らしをすることに情熱を傾けており、現実世界では見事にそれを成し遂げていた(ある意味すげー)。
他人を利用することを躊躇わない性格で他罰的。胡散臭い儲け話がとても似合う。
基本的にクズではあるが、例えどんな形でも自分の味方と判定した者は決して裏切らない。
また自分のために(キンジのためではない)行動する人間にも好意的。
迷宮ブラックカンパニーを組織し、ライザッハ鉱業打倒を企む。
記憶を失ってホワイトキンジに変身してしまったり、なんだかんだ不幸。
ただし基本クズなので全く気の毒ではない。

リム
迷宮に住んでいた魔神。
本来の姿は巨大な爬虫類系の怪物だが、小柄な少女の姿になることもできる(作中では少女の姿が基本形)。
迷宮への侵入者であるキンジとワニベを食べようとするが、自分と交渉しようとしたキンジに興味を持ち、地上の美味い食料を提供するという条件でキンジたちの護衛となる。
ただし、その胃袋のキャパは凄まじく、キンジたちの財政を圧迫し続ける

ワニベ
キンジの同僚で爬虫類系の亜人(いわゆるリザードマン)。
温厚、真面目、常識人という三拍子そろった、この作品の癒し。
キンジから「うだつが上がらず友人も少ないので、利益に群がるような知人を必要以上に増やす心配がない」というクソのような理由で仲間に引き込まれる。
植物、薬草に関する知識が豊富。

キノウ・シア
ライザッハ鉱業に勤める女性社員で「勇者」。
会社のために働くことを何よりの幸福と感じるその姿勢から「究極の社畜」と称される。
父親が数々の遺跡を攻略して機能不全に追いやったことから「最悪の冒険王」と呼ばれており、周囲から迫害された過去を持つ。
そこに手を差し伸べてくれたライザッハ鉱業に忠誠を誓っている。
ただし、会社の体制に批判的なキンジたちと関わりで無理やり迷宮ブラックカンパニーに引き込まれたことで、社畜としての感性も少しずつ変わっていく。


「迷宮ブラックカンパニー」の魅力とは

読んだ当初は絶対”なろう”原作だと思った(良い意味でね?)

 最初にこの作品を読んだ時、ニートが異世界転移するという設定から、これは間違いなく「小説家になろう」の作品が漫画化されたものだと確信していました。
 しかし検索して調べてみると、この作品はなろう原作ではないオリジナルの漫画

 それが判明した時、私が感じたのは、

「なろう出身じゃなくでも、上質な”なろう系”作品はあるんだ」

 というものでした。

 昨今のなろう系作品はテンプレ化が進み、これはという尖った個性を持つものが少なくなってきています。
 本当は商業誌にはない挑戦的な作品こそ、なろうの魅力の一つだったんですけどね。

 しかしこの作品を読んで、商業誌でもこういう尖った作品は生み出せるんだと素直に感動しました。

 ニートと社畜・ブラック企業というキャッチーなテーマを非常にテンポよく描いていて、キャラクタも非常に個性的。素直に読んで損はないと感じる作品でした。

こんな人におすすめ

 最近のなろう系に不満を感じている方、是非読んでみてください。

 必ずハマるとまでは言いませんが、ここに貴方が求めるものがあるかもしれません。

 主人公のキンジがクセのあるキャラクターなので、多少の好き嫌いはあるかもしれませんが、そこさえクリアできれば読んで損のない作品だと思いますよ。

 あとはシンプルに面白いテンポの良い作品を読んでみたい方にもおすすめですね。

 まずは雰囲気だけ、試し読みからでも是非ご一読を。

「迷宮ブラックカンパニー」アニメ化、声優は? 第2期は?

 TVアニメは2021年7月9日(金)からTOKYO MXほかで放送されました。

 キャストは非常に豪華!

 二ノ宮キンジ:小西克幸
 リム:久野美咲
 ワニベ:下野紘(マジ!?)
 シア:戸田めぐみ
 ランガ:M・A・O
 ベルザ:佐藤聡美

 大好評のうちに放送が終了した迷宮ブラックカンパニー。

 アニメ第2期も期待されるところですが、第1期では原作コミックス6巻までのストーリーが放送されており、2021年9月時点ではまだ原作コミックスは7巻までしかありません。

 つまり話のストックがないわけで……今後原作が順調に連載されたとしても、第2期は早くて2年は先のことになりそうですね(あればの話)。



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