「夢なし先生の進路指導」感想&評価(ネタバレ注意)~あらすじや主な登場人物の解説を含む~


 今回は「ビッグコミックスピリッツ」で連載中の「夢なし先生の進路指導」について解説します。

 この作品は夢を追いかける生徒たちに対し、あまりに現実的な進路指導を行うことで「夢なし先生」と呼ばれている元キャリアコンサルタントの高校教師の物語。

 夢を追いかけ、挫折し、そこから再び立ち上がる生徒たちの姿が独特の視点で描かれています。

 「夢を諦める姿は美しい」と中々尖ったキャッチコピーを謳ったこの作品。

 本記事ではそのあらすじや登場人物の解説を踏まえ、その魅力を深掘りしてみようと思います。

「夢なし先生の進路指導」あらすじ(ネタバレ注意)

声優編

 声優志望の女子高生・三田こずえは、担任の高梨先生の進路指導が苦手でした。

 「夢なし先生の進路指導」と呼ばれるそれは、淡々と声優に関する厳しい現実を突き付け、こずえの心を挫いていきます。

 しかし声優になりたいというこずえの気持ちは変わることなく、高梨先生は最後は「分かりました」とその判断を尊重することに。

 高校卒業後は声優の専門学校に通い、なんとか事務所に所属することができたこずえ。

 しかしレッスン料も毎月取られる”預かり”の段階で、もらえる仕事もガヤのような端役ばかり。

 自分に特別な才能がないことに気づき、仕事を得るために枕営業もし、それでも満足な結果を残せず事務所との契約も打ち切られてしまいます。

 日々の糧とレッスン料を得るためにガールズバーで働きボロボロになっていくこずえ。

 卒業から5年後、そんな彼女の前に現れたのが高梨先生でした。

 先生はこずえの努力と成果を認めた上で彼女の相談に乗り「諦める=明らかにする」ということ。自分の道を明らかにするためのもので決してネガティブなものではないと進路指導を行います。

 そして声優の道を諦めたこずえは、自分のようにセクハラ・パワハラ被害を受けて泣き寝入りする子が減ればいいと、弟の伝手で法律事務所に勤めだし、新たな夢を追いかけることになりました。

鉄道運転士編

 小学校の頃から列車の運転士を目指してきた伏見。

 堅実な運転士としての進路に疑義を唱えるものは今まで誰もいませんでした。

 高梨先生の進路指導では、自動化により乗務員が年々減少傾向にあることなど、厳しい現実がつきつけられますが、伏見は幼い頃からの夢を諦めるつもりはありません。

 しかし一つだけ、「大手」の鉄道会社に就職するというのは、本人ではなく銀行員である父親の命令でした。

 結局大手鉄道会社に就職し、厳しい日々を乗り越えて運転士となった伏見。

 しかし目の前で人身事故を目撃し、それを平然と受け流す他の運転士の姿に、自分の理想と現実とのギャップを感じ、心を病んでしまいます。

そこに現れたのが高梨先生。

 伏見は高梨先生との話の中で、自分が本当になりたかったのは田舎で幼い自分に手を振ってくれた人情味ある運転士だったと気づきます。

 彼は父親に受け入れられたいがために、現実の自分を歪めていたのです。

 その後、伏見は父親と決別して家を出て、地方の鉄道会社に就職。

 経営状況は厳しく安定しているとは決して言えませんが、野生動物の事故一つにも丁寧に手を合わせ、風通しの良い職場で充実した日々を送っています。

メンズアイドル編

 顔が良く、高校内でも人気の少年・夏野はメンズアイドルになることを志望していました。

 アイドル業界の厳しさを説かれても、やらないで諦められるかと強行突破し、アイドル事務所の門と叩いた夏野。

 しかし待っていたのは地下アイドルとしての底辺生活。

 そしてホストのようにファンを食い物にして生きる現実でした。

 徐々にそんな世界に染まっていき、女性を風俗で働かせてその金で生きるようになった夏野は、結局最後はファンだった女性に刺されてしまいます。

 偶然駆け付けた高梨先生の応急処置で命を救われた夏野。

 その後彼はアイドルを辞め、バイトをしながら求職活動に。厳しい日々を送っていますが、甘い話に飛びつくようなことはなく、少しだけ人として成長を遂げていました。


「夢なし先生の進路指導」主な登場人物(ネタバレ注意)

高梨

 本作の主人公。

 元キャリアコンサルタントの数学教師で、幼い頃はプロのピアニストを目指していた。

 外見は寝ぐせの付いたボサボサ頭と目の下の深いクマが特徴の眼鏡の若い男性。

 夢を追いかけるに生徒たちに厳しい現実をつきつけることから、その進路指導は「夢なし先生の進路指導」と呼ばれている。

 ただ生徒に現実は突き付けながらも、決して進路を諦めろと強制することはない。

 本人は進路指導だけは諦められないと語っており、定期的に同窓会を開き、卒業した生徒の進路を追いかけ、進路指導を続けている。

三田こずえ

 声優編の主人公。

 正義感の強い少女で、アニメ好きがこうじて声優を目指す。

 ただ実際にもらえる仕事は端役ばかりで、流されて枕営業までしても結果がでず、ボロボロに。

 高梨先生との再会を経て、声優の道を諦め自分のように悪い大人に食い物にされる人間が一人でも減るようにと法律事務所で働き始める。

伏見

 鉄道運転士編の主人公。

 鉄道オタクの少年で、厳しい銀行員の父を持つ。

 大学を出ると運転士ではなく総合職に回される可能性が高くなるからと敢えて高卒で鉄道会社に就職した変わり者。

 父親に進路を認めてもらうため、大手鉄道会社に就職することになる。

夏野亮

 メンズアイドル編の主人公。

 顔がいいだけで調子に乗っているイタイ男。

 メンズアイドルと言いつつやっていることは完全にホストで、中々のクズっぷりを作中で披露した。

 周りに迷惑をかけて、人を犠牲にした分、いくらか成長した模様。

丸岡

 高梨先生の同僚の若い女性教師。

 ジャージ姿なので多分体育教師。

 イケメン好きで夏野がお気に入り。

桐ヶ谷(教頭)

 高梨先生たちが勤務する高校の共同。

 怪しげな雰囲気の中年女性で、校内を圧倒的なカリスマ性で支配している。

 自主自律を重んじ夢を追いかける生徒たちを応援し、高梨先生とは対立気味。

 生徒が進路で失敗して挫折しようと、その経験こそが真に生徒を成長させるとも考えており、底が見えない人物。


「夢なし先生の進路指導」感想&評価

本当に面白くなるのはまだまだ先か?

「夢を諦める姿は美しい」
「夢は人を殺す」

 中々尖った言葉で目を引く作品ですが、内容としては案外普通。

 別に高望みをするなと夢を諦めさせようとするわけではなく、きちんと現実を見た上で夢と向き合いなさいと指導する教師の物語です。

 それが生徒から「夢なし先生」と呼ばれるのは、子供は夢という現実が見えていないという皮肉でしょうね。

 一つ気になるのは、高梨先生が指導の際にブリッジズとかスーパーとかキャリアの理論家の言葉や理論を多用している点。

 この手の理論ってどうも屁理屈っぽい気がして今一つ好きになれないんですよね。

 できれば高梨先生本人の言葉をもっと語って欲しいのですが……

 ただ高梨先生本人の過去やバックボーンもまだまだ見えていませんから。本当にこの物語が面白くなってくるのは高梨先生の背景が分かってきた後なのかも、という気がしますね。

こんな人におススメ

 そこそこ胸糞展開があり、しかも通しで読まないと意味が分からないところが多いので、休日時間がある時に骨の有る話を読みたいという方向け。

 気軽に読めるタイプの話ではないです。

 しかもスカッと展開とかも特になく、例えばメンズアイドル編の夏野なんかはもっとボコボコにやられちまえと思う方も多いんじゃないでしょうか。

 彼に食い物にされていた女性は刑務所行きですしね。

 ハッキリ読む人を選ぶタイプの作品なので、媚びの無いヒューマンドラマを読みたいという方に是非読んでいただきたい。



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