今回は「F.E.A.R.」の人気TRPG「ダブルクロス」から、おすすめのリプレイを5つ紹介させていただきたいと思います。
ダブルクロスは現代を舞台にしたSFバトルTRPGではありますが、単純なバトルではなく、物語性を重視した独自色の強い傑作ゲーム。
ルールも第3版(3rd Edition)まで出されており、現代だけでなくあらゆる時代、国、異世界にさえ対応した極めて汎用性の高い内容となっております。
なお、「TRPGって何? リプレイって?」という初心者の方は、こちらに初心者向けの紹介記事を書いておりますので、先にお読みください。
TRPG「ダブルクロス」ってどんなゲーム?
ダブルクロスとは、「『レネゲイド』と呼ばれる未知のウイルスで超人的な力を手にした少年少女が、自分たちの日常を守るために非日常の力を駆使して戦う物語」を基本テーマとした作品です。
レネゲイドに感染した人間(=オーヴァード)は「シンドローム」という12~3種類にカテゴリ分けされた超能力を獲得します。
これがいわゆる他のゲームで言うところの職業・クラスに該当し、例えば「キュマイラ」シンドロームなら超人的な筋力や獣化能力、「エンジェルハイロゥ」シンドロームなら光を操る能力を得ると言った感じですね。
一つ一つのシンドロームの効果は弱くなりますが、最大3つのシンドロームを掛け合わせて様々なコンボ、能力を生み出せるところもこのゲームの魅力です。
オーヴァードは強力な能力を使うほどにレネゲイドウイルスの「浸食率」が上昇し、より強力な力を使うことができるようになる半面、行き過ぎれば暴走し日常に戻れなくなります(キャラクターとしての死亡)。
ただ強いだけで、どうにかできるゲームじゃないんです。
そしてこのゲームで特徴的なのが「ロイス」システムです。
ロイスとは日常を象徴する絆を表したもので、これがあることでキャラクターはシナリオの最後に「浸食率」を下げ、暴走を抑えて日常に戻りやすくなります。
反面、ロイスを断ち切り、「タイタス(=失われた絆)」とすることで、キャラクターは爆発的な攻撃力を発揮したり、自身の蘇生を行うこともできます。
日常を守るために敢えて非日常に足を踏み入れる、まさにストーリー性とゲームシステムが見事に融合した傑作TRPGと言えるでしょう。
①「無印」闇に降る雪/聖夜に鳴る鐘
さて、最初に紹介するのは「無印」あるいは「菊池リプレイ」と呼ばれる全2巻のシリーズです。
これはルール第2版と同時に発売されたダブルクロス最初の公式リプレイで、ダブルクロスという作品、そして当時のTRPG人気に火をつけた作品でもあります。
ダブルクロスそのものは「F.E.A.R」というゲーム会社に所属する矢野俊策さんがデザインされていますが、このリプレイを書いているのはその会社の副社長「菊池たけし」という、その筋では有名な「世界の危機」をこよなく愛するリプレイ書きです。
シナリオそのものは、ダブルクロスを紹介するようなスタンダードな内容となっていますが、とにかく菊池さんの手腕と、プレイヤーたちのぶっ飛び具合(特に田中天)が素晴らしい。
「TRPGってこんなことしていいの?」と、ゲームの新たな魅力を開拓した作品。
ダブルクロスのみならず、菊池たけしを知らない方は是非一度手に取って読んでみてください。
②「オリジン」シリーズ
恐らくダブルクロスリプレイの中で最も人気の高いシリーズではないでしょうか。
本作の主人公は一般人ではなく「UGN(ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク)」というオーヴァードを保護・監視する秘密組織に育てられた少年少女。
非日常側の存在である彼らが、任務の中で日常に生きる人々の尊さに触れ、それを守るために精神的に成長していく姿を描いた物語です。
3巻からは、それまで敵役でしかなかった「FH(ファルスハーツ)」というオーヴァードによる犯罪組織に所属する少女も仲間に加わり、どんどんぶっ飛んだ内容になっていきます(オーヴァード空手的な)。
これぞダブルクロス、といった正統派リプレイであると同時に、主人公の脇を固めるプレイヤーたちのぶっ飛び具合が腹筋を襲う、非常に盛沢山な内容となっております。
③「ストライク」シリーズ
イロモノリプレイシリーズです。
ダブルクロスリプレイは非常に多岐に及んでおり、シリアス色の強かった上記の2シリーズと異なる、イロモノリプレイも多数存在します。
「ストライク」シリーズは、その中でも比較的とっつき易い、コメディ色の強いシリーズとなっています。
主人公はハーレム主人公を目指すバカ。そこに未来宇宙や異世界、紛争地帯など様々な世界観からやってきたヒロイン候補がやってきてバカが奮闘するという物語です。
バカ方面に相当突き抜けた内容になっていますので、シリアスなカッコいいダブルクロスを期待している方はご注意を。
ちなみにこの作品のプレイヤーには「レンタルマギカ」などで知られる三田誠先生も(ヒロインプレイヤーの1人として)参加しています。
④「エクソダス」シリーズ
再びシリアスな内容に戻って、このシリーズはFHの人体実験のために絶海の孤島に閉じ込められた主人公たちが、敵の支配から脱出することを目指す物語です。
これまでの主人公たちが「日常を守る」ことをテーマとしているのに対し、本作では「日常を取り戻す」ことに主眼が置かれています。
そしてこのリプレイで特徴的……というか、そうなってしまったのが、ダブルクロスリプレイを通じて、初めて主人公が暴走(=ジャーム化)し、日常に戻れなくなってしまったこと。
ゲームである以上、どうしてもゲームオーバー、シナリオ失敗はつきもの。
本作はその事実を誤魔化すことなく、最後まで丁寧に描き切った内容となっています。
ラストはヒロインの決断もあって、物語として非常に希望の持てる明るい内容となっており、決して「失敗=終わり」ではない良質な物語となっておりますのでご安心を。
⑤「デザイア」シリーズ
FHに所属する、いわゆる悪役側を主人公にしたリプレイシリーズです。
とは言っても、悪いことをやりましょうという内容ではなく、ダークヒーロー的な独特の内容となっています。
主人公たちが百合百合しい女の子たちなこともあって、感情移入もしやすいのも良しですね。
FH、悪役専用のルールなどを紹介する内容にもなっており、ダブルクロスというゲームの広がりを象徴するリプレイでもあります。
この他にも、「トワイライト(=快男児)」シリーズや「春日恭二の事件簿」など、紹介したい名作リプレイは多数あるのですが、まずは読みやすい5作品を、ということでこれらを紹介させていただきました。
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