「バーサス」感想&評価(ネタバレ注意)~「ワンパンマン」原作者ONE先生の新連載、天敵VS天敵~


 今回は「ワンパンマン」のONE先生があずま京太郎先生とタッグを組み月間少年シリウスで連載中の新作「バーサス」について解説します。

 この作品は自分たちでは決して勝てない「天敵」に追い詰められた人類が、同じような境遇にある異世界の人類と手を組み、互いの「天敵」同士を争わせようという物語。

 「ワンパンマン」におけるサイタマのような派手な主人公はおらず、弱い人類が知恵と工夫で強敵に立ち向かう内容となっています。

 本記事では「バーサス」のあらすじや主な登場人物の解説を踏まえ、その魅力(面白い?)について語ってみようと思います。

「バーサス」あらすじ(ネタバレ注意)

天敵には天敵をぶつけるんだよぉ!

 物語の舞台は大魔王とその配下の47の魔王が率いる魔族によって地上の大部分を支配されているファンタジー世界。

 人類はその存亡を懸け、47の勇者による反撃を開始しました。

 しかしその半年後、主人公の第11勇者ハロゥの下に届くのは他の勇者たちが魔王に敗北し死亡したという知らせばかり。

 絶望的な状況の中、ハロゥは覚悟を決めて魔王ジャチに挑みますが、仲間は文字通り手も足も出ず瞬殺され、ハロゥの聖剣の一撃は魔王に傷一つ付けられませんでした。

 敗北し、魔王城から吹き飛ばされるハロゥ。

 左腕を失い瀕死の重傷を負っていた彼を救ったのは、兄である魔導士ゼィビィでした。

 魔王軍の強さに絶望するハロゥに、ゼィビィは勇者たちの戦いの裏で自分たちが別の計画を進めていたことを告げます。

 それは別の世界の人類を召喚し、彼らに魔族を倒してもらおうというもの。

 大規模な召喚陣によって呼び出された銃器で武装した人類は、強力な魔族の軍を瞬く間に殲滅。

 ハロゥたちに希望の光が差した……かに思えましたが、実はその別の世界の人類もまた、別の「天敵」の脅威に晒されていました。

 人類同士協力し合えば「天敵」に勝てる?

 いえ。「天敵」の力はすさまじく、別の世界の人類の攻撃にもあっという間に対応してしまいます。

 召喚によりつながった世界は「13」。

 その全てが異なる強力な「天敵」の脅威に晒されています。

 より絶望的な状況に皆が落ち込む中、ハロゥは「天敵同士を互いに争わせるのはどうだろう?」と提案します。

 今ここに、人類滅亡をかけた命がけの作戦が始まったのです。

登場する13の世界と天敵

 作中で登場する13の世界とそれぞれの「天敵」は次の通りです。

魔勢界「天敵:魔族」
大魔王と47の魔王が率いる異形の軍勢が地上を支配している。

機律界「天敵:ロボット」
人の作った機械生命体が暴走し人類を根絶しようとしている。

寄生界「天敵:パラサイト」
謎の寄生生物により人類が操り人形にされてしまう。

巨人界「天敵:巨人」
巨人が人類を奴隷にしている。

大凶界「天敵:大怪獣」
1頭の大怪獣が世界中を踏み荒らしてやりたい放題。

天鬼界「天敵:宇宙人」
外宇宙から襲来した未知の高度知性体の侵略を受けている。

暴緑界「天敵:大自然」
デカく凶暴に発達した動植物が人類の住処を奪っている。

新虐界「天敵:新人類」
知能や身体機能が大幅に進化した人類の変異種により支配されている。

怒神界「天敵:神」
人々の信仰により顕現した神が(詳細不明)。

呪滅界「天敵:呪い」
穢れた呪いにより大地は腐り、海は濁り、星は冷え終わってしまう。

遊獄界「天敵:ゲーム」
早くゲームに戻らないとペナルティが……?

無法界「天敵:人間」
文明とモラルが崩壊し野盗やギャングなどがのさばっている。

大樹界「天敵:世界樹」
一本の巨大樹が星の命を吸い上げ世界が枯れてしまう。


「バーサス」主な登場人物

勇者ハロゥ

 本作の主人公で魔勢界の第11勇者。

 真面目で融通が利かないところはあるが、芯の強い戦士。

 人類としては間違いなく強く、優秀だったが魔王ジャチに敗北し左腕を失う。

 13の世界が融合する中、「天敵」同士を争わせる案を思いつき、人類に希望を示す。

ゼィビィ

 勇者ハロゥの兄で魔導士隊の班長。

 巨大な召喚魔方陣により異世界を召喚し、別の世界の人類に助けを求めようと計画する。

 結果的にその計画は多くの天敵を世界に招くこととなるが、柔軟に異世界の人間同士をまとめ上げ、共同作戦を実現する。

バネバネ

 ハロゥの補助要請を務めるブタ顔の顔面圧力がキツイ妖精。

 口が悪く文句も多いが、何だかんだハロゥに付き従っている。

ケイラ

 機律界からやってきた女性軍人。

 頬に十字傷のある凛々しい美女で、責任感が強い。

 なお、色事には鈍い模様。

勇者アリオ

 イケメンで軽い雰囲気の第19勇者。

 魔王ニュドーの強さに恐怖し、戦うことなく逃げ出してしまう。

 しかしハロゥと再会し、再び這い上がろうと決意。

 天敵同士を争わせるための囮役を自ら買って出る。


「バーサス」感想&評価

サイタマのいない「ワンパンマン」

 この「バーサス」を読んだ第一印象は「サイタマ先生のいない『ワンパンマン』」。

 多種多様な強敵(=天敵)がいて、勇者とか軍人とかヒーロー的な奴らが頑張って立ち向かうんだけど、絶対に真っ向勝負では勝てない力関係。

 『ワンパンマン』でサイタマ先生が登場しない回が延々続く感じですね。

 人類にもそこそこ強い奴はいて、それなりに奮戦して成果を挙げたりもするんだけど、ボス級にはやっぱりやられてどうしようもない、みたいな。

ワンパンマンならもう絶望。

 サイタマ先生抜きで「ボロス」に勝て、みたいな展開ですが、そこは「化け物には化け物をぶつけるんだよ」ならぬ「天敵には天敵をぶつけるんだよ」。

 ボロスに覚醒ガロウぶつけてやれ、みたいな発想にいたるわけです。

こんな人におススメ(面白い? つまらない?)

 多分、「バーサス」は読む人によって物凄く評価の分かれる作品だと思います。

 というのも、敵の方が圧倒的に強いため、主人公たちは基本的に劣勢。

 展開的に爽快感みたいなものは全くありません。

 強い主人公が敵をズバッと倒して、みたいな展開を期待している方には、正直合わないと思います。

 逆に「ワンパンマン」でサイタマ先生がずっと出て来ずに「ジェノス」や「ぷりぷりプリズナー」あたりがやられながらも奮闘している展開が好きだという方にはおススメ。

 普通に面白くてクオリティの高い漫画だと思います。



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