「ゴールデンカムイ」松田平太(平太師匠)~面妖なる砂金掘り師、その正体は多重人格者!~

 今回は大人気漫画「ゴールデンカムイ」から、面妖なる砂金掘り師「松田 平太(まつだ へいた)」について解説します。

 松田平太はアイヌの金塊の行方を記した刺青を持つ囚人の一人。

 優秀な砂金掘り師として登場し、資金に窮した杉元や白石の欲望を大いに刺激して平太師匠と呼び慕われていました。

 作中ではウェンカムイ(人を襲う悪い神)となったヒグマに付け狙われていた平太師匠ですが、実はそのウェンカムイの正体とは……

 ホラーテイストな叙述トリックで読者を沸かせた松田平太のエピソードについて、彼のプロフィールや過去を交えつつ語ってまいります。

「ゴールデンカムイ」松田平太のプロフィール

基本プロフィール(外見、性格、誕生日、年齢など)

 松田平太はアイヌの金塊の行方が記された刺青を持つ囚人の一人です。

 外見は黒目がちのギョロッとした目つきの小柄な丸っこい男性。

 熟練の砂金掘り師であり、外で歩き回るのに実用的な服装をしていますが、高価な舶来のゴム長靴を履くなど羽振りの良さが見て取れます。

 基本的には(というか平太本体は)面倒見がよく人当たりの良い優しい男で、作中では初対面の杉元白石に自分の砂金掘りの知識と技術を惜しみなく与えていました。

 誕生日は10月17日。

 年齢は不明。回想を見ても昔からそこそこ老け顔で年齢が分かりにくく、推測するための情報も不足しています。

元ネタ(モデル)になった人物は存在しない?

 登場人物に元ネタ(モデル)が存在することが多いゴールデンカムイですが、松田平太についてはそうした人物は存在しないと言われています。

 詳しくは後述しますが、実は松田平太は多重人格の連続殺人鬼。

 多重人格の犯罪者と言えばビリー・ミリガンなどが有名ですが、ビリーは殺人犯ではありませんし、松田平太とでは名前に類似性もありません。

 松田という名字自体がよくあるものですし、有名な砂金掘り師が元ネタということでもないようです。


「ゴールデンカムイ」松田平太の登場回

砂金堀りの師匠として杉元たちを沸かせる

 松田平太は樺太から帰還し、資金に窮する杉元一行の前に現れた砂金掘り師で、その登場回は217~221話。

 1日に50円(現在価値で約100万円)を稼いだこともある凄腕の砂金掘り師であり、危ないところを救ってくれた杉元たちに惜しみなく技術や知識を与え、彼らの欲望を刺激して平太師匠と呼び慕われることに。

 ちなみにその時、平太師匠が狙っていたのは砂金の中でも「ハク」と呼ばれる砂白金。

 白金は硬すぎて加工もしにくく、かつては混ざっていると価値が落ちるとして川に捨てられていました。

 しかし最近になって万年筆の素材などとして価値が急騰。

「これは第二のゴールドラッシュなんですよ!」

 平太師匠の言葉にズキュンと胸を撃たれる杉元と白石が可愛かったです。

彼が恐れるウェンカムイの正体とは?(叙述トリック)

 登場した時点で、松田平太の周囲には4人の家族と、そして彼を付け狙うウェンカムイの姿が描かれていました。

 家族は父親、長男(嵩ニィ)、次男(次郎ニィ)、長男の嫁(ノリ子)。

 そしてウェンカムイとは、アイヌ語で「人を襲う悪い神」という意味で、この場合は人食いのヒグマのことを指します。

 作中では、家族が次々にウェンカムイに殺されていき、自分も殺されると怯える平太師匠をウェンカムイから守ろうとする杉元たちでしたが……

 

 しかし平太師匠が口にした「家族」の名前、そしてヴァシリが描いた「ノリ子」の絵を切っ掛けに杉元たちは平太師匠との認識の違いに気づきます。

 ヴァシリの描いた絵に描かれていたのは女性ではなく平太自身。

 杉元たちには最初から「家族」など見えておらず、「家族」は平太師匠の頭の中にしか存在しませんでした。

 そして杉元たちが目撃したウェンカムイらしき影も、実はヒグマの毛皮を被った平太師匠自身の姿だったのです。


「ゴールデンカムイ」松田平太の正体は多重人格者(過去)

「道東のヒグマ男」と恐れられた男の過去

 結論から言えば、松田平太は6つの人格を持つ多重人格者でした。

 1つは平太自身、そして4つは亡くなった4人の家族、最後の1つはウェンカムイ。

 松田平太が多重人格となったのには、彼の過去が影響しています。

 子供のころからアイヌと共に砂金を掘っていた平太は、家族に金づるとして利用され、酷使されていました。

 強欲な家族に対し、平太はずっとウェンカムイがバチを与えてくれればと願っていたそうです。

 そんなある日、平太はヒグマの食べ残しを見つけ、つい魔が差してそれを家族が寝起きする場所に隠してしまいました。

 その結果、獲物をとられたと怒ったヒグマは家族を殺してしまいます。

 自分がしでかしてしまったことの罪悪感に苛まれた平太は人格が分裂。

 その心に、亡くした家族とウェンカムイを宿すことになったのです。

 その後、心の中のウェンカムイは、まず家族を殺し、最後に平太自身を食って肉体を乗っ取ってしまうようになります。

 ウェンカムイに乗っ取られた平太は現実の誰かを襲い、殺害。

 そして殺害するとその肉体は(平太の脳内で)バラバラになり、再び元の平太に戻ります。

 それを何度も繰り返し、彼は「道東のヒグマ男」と呼ばれる連続殺人鬼となってしまったのです。

自分自身の手でウェンカムイに止めを刺す

 ウェンカムイに肉体を乗っ取られ、杉元に襲い掛かる平太。

 肉体のリミッターが外れてしまったのか、その小柄な肉体からは考えられないほどの膂力で杉元の腕を折り、彼を追い詰めます。

 しかし、その時「松田平太」としての人格は完全に失われてはいませんでした。

 ウェンカムイが杉元の反撃で怯んだ隙を狙い、平太は肉体の支配を一瞬だけ奪取。

 予め仕込んでいた毒矢の罠に飛び込んで、自分の命と共にウェンカムイに止めを刺したのです。

 平太自身は本来真面目で善良な男だったのですが……それが砂金への欲望、あるいは砂金の魔力に人生を狂わされた男の最期でした。



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