「あめつちだれかれそこかしこ」の感想(ネタバレ含む)~高校生、ヒゲとお子様、時々神様~


 今回は「MAGCOMI」で連載中の「あめつちだれかれそこかしこ」を紹介させていただきます。

 この作品はいわゆる男子高校生と神様、妖怪たちが繰り広げる、ほのぼの日常系ファンタジー。ある意味良くあるテーマではありますが、普通そういう作品の神様って美男美女、あるいはかわいいお子さまが鉄板でしょう? しかし本作の神様は冴えないヒゲのオッサン(+三白眼のお子さま)
 そんなビジュアル的には首を傾げてしまう設定ながら、何故か引き込まれてしまう、その魅力を語らせていただきます。

「あめつちだれかれそこかしこ」のあらすじ(ネタバレ含む)

 幼いころに事故で両親を亡くし天涯孤独であった少年、青司は、ある日親戚を名乗る女性から自分に祖父がいたこと、そして祖父が亡くなったのでその遺産と屋敷を相続して欲しいと持ち掛けられます

 その話を承諾し、親戚に連れられて祖父の屋敷に住むことになった青司。しかし、そこで過ごしているうちに青司は周囲に何か気配を感じる様になり、しかもそれはどんどん強くなっていきます

 そしてとうとうクッキリ見えてしまった「ヒゲ面の中年男」
 その男は自らを神様、「年神」と名乗り、古くからこの家のものと代々暮らしてきた存在だと言います。

 自らの正気を疑う青司ですが、周囲の状況にそれを信じざるを得ません。

 そして年神と同じく、この家に住まうもう一人の神様、「納戸」というワガママなお子様系神様も現れ、静かだった青司の周囲は次第に騒がしくなっていきます。

 新しい環境、友人、祖父を訪ねてくる妖怪、神様。
 そして彼らの口から語られる祖父、そして自分の知らない母親の思い出

 自分勝手で迷惑、ワガママな神様たちに囲まれて、青司の日常は少しずつ色づいていきます。


「あめつちだれかれそこかしこ」の主な登場人物(ネタバレ含む)

笹木 青司(ささき せいじ)
母方の祖父の死をきっかけに、祖父が住んでいた田舎の屋敷に引っ越してきた少年。
両親を幼いころに事故で無くしており、ちょうど高校入学のタイミングで祖父が亡くなり、祖父の遺産と屋敷を相続した。
外見は黒髪黒目の寡黙そうな少年で、礼儀正しく素直。
ただし神様や妖怪たちのワガママには時折苛立ちを見せる。
母親や祖父のこと、彼らが霊の見えたことなどは全く聞かされておらず、祖父にいたっては存在さえ知らされていなかった。
因みに母親は相当やんちゃでガキ大将だったらしく、親戚からは「彩ちゃん(母の名前)からこんないい子が」と感涙される。

年神・年男(としがみ・としお)
青司が越してきた祖父の家に古くから住む年神。
外見は背の高いヒゲの中年男性で、性格は一見穏やかで腰が低い。
ただし、時折神様らしく威厳に満ちた振る舞いを見せることもある。
年男は青司がつけた呼び名で、すぐに周囲に定着した。
なお、年神とはお正月などに各家でお迎えする来訪神、あるいは穀物神・豊穣神のこと。
その信仰の根底にあるのは穀物にまつわる死と再生であり、結構格の高い神様。

納戸(なんど)
青司が越してきた祖父の家に古くから住む座敷童っぽい神様。
外見は三白眼の小生意気なお子様。
口調も態度もワガママで尊大、実に神様らしい振る舞いを見せる。
青司の祖父からはお菓子で色々と餌付けされ、かわいがられていた様子。

カレン
青司の親戚のお姉さんで、引っ越してきた青司を色々と気にかけてくれる。
外見は色素の薄い髪をボブカットにしたメガネの女性。
非常にサバサバした性格で、大雑把。
青司の祖父の死後、屋敷を片付けようとして色々と散らかしていったため、納戸に非常に警戒されている。

酒井(さかい)
青司のクラスメイトの少年。
非常に大らかな性格で、よく霊に憑りつかれたり事件に巻き込まれても笑って受け入れている。
青司の屋敷のご近所さんで、子供の頃に青司の祖父から年神のことを紹介されてこともある(当時はからかわれたと思って信じていなかった)。
鈍そうに見えて意外と人のことを見ており、気遣いのできる男。

鳥天(とりてん)
祖父の知り合いだった烏。天狗らしいが基本烏。
非常に尊大な態度でワガママだが、祖父とは良き友人だったらしい。


「あめつちだれかれそこかしこ」の感想と評価

ヒゲ中年の神様という荒野に踏み出した意欲作(wikiも相関図もないんだね)

 2014年から長期間、ゆったりとしたペースで連載されている作品で、その当時のことを考えれば、MAFCOMIでヒゲ中年をメインに据えた作品というのは非常に挑戦的な試みだったでしょうね。

 これだけ長く連載されているのにネット上にはwikiなどの情報はほとんどなく、細く長く、しっかりとしたファンを掴んでやってきたんだろうなぁ、と。

 正直、ビジュアル的にはキャラクターに魅力をあまり感じないのですが、読んでいるうちに次第に愛着が湧いてくるというか、段々味が出てくる作品です。

 類似テーマの作品と比べると、神様とか妖怪は出てくるものの、そこに深く踏み込むことは少なく、日常のウェイトが大きめですから、気軽に読めるところも良いですね。

こんな人におすすめ

 基本的に男女年齢を問わない作品ではありますが、若干雰囲気は女性向きでしょうか。

 系統的には「夏目友人帳」に近く、あれが好きな方は、是非この作品も読んでみてください。
 あちらとは似てはいますが一味違った味のある作品ですから、試してみて決して損をすることはないと思いますよ。

 逆に神様とか妖怪について、凝った設定を期待している方には少し合わないかもしれません。

 正直、合う合わないはある作品だと思いますが、合えばきっとガッツリハマる作品ですので是非是非試し読みからでもご一読をおすすめします。



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