「文豪ストレイドッグス BEAST(ビースト)」感想(ネタバレ注意)~小説に始まるスピンオフ、本編との違い、映画はいつ~


 今回は文豪ストレイドッグスの傑作スピンオフ作品「文豪ストレイドッグスBEAST(ビースト)」について紹介したいと思います。

 この作品は設定そのものは良くある主人公(中島敦)とライバル(芥川龍之介)の立場逆転ものではあるのですが、その背後にある真の物語が実に切ない良作。

 現在少年エースで漫画連載中、実写映画化も決定した人気作の本編との違いや感想、現時点で判明している映画の情報などを中心に深掘りしてまいります。

「文豪ストレイドッグス BEAST(ビースト)」とは?

特典小説から始まったスピンオフ作品、漫画連載、映画化も決定

 もともとこの「文豪ストレイドッグスBEAST」は、映画「文豪ストレイドッグスDEAD APPLE」の特典小説がベースとなったスピンオフ作品です。

 それが、特典小説でこのクオリティは凄いと話題になり、後に加筆修正され角川ビーンズ文庫から完全版がライトノベルとして出版されました。

 現在は少年エースで漫画版が連載中、2020年3月には実写映画化も発表されています。

映画化はどうなった? キャストは? 放映開始(公開日)はいつ?

 映画制作決定から1年以上続報のなかった実写映画ですが、先般ついに放映開始日とキャストが発表されました。

 放映開始日は2022年1月7日。

 主なキャストは、

 ・芥川龍之介……橋本祥平
 ・中島敦……鳥越裕貴
 ・織田作之助……谷口賢志
 ・太宰治……田淵累生
 ・泉鏡花……桑江咲菜
 ・銀……紺野彩夏



「文豪ストレイドッグスBEAST(ビースト)」のあらすじ

芥川と敦の立場を逆転させたIF作品(本編との違い、ネタバレ注意)

 「文豪ストレイドッグスBEAST」とは、もし太宰治が芥川龍之介をポートマフィアにスカウトせず、中島敦をスカウトしていたら、芥川龍之介が武装探偵社に入っていたら、というIFの世界を描いた物語です。

 孤児だった芥川は、かつてポートマフィアに仲間を殺され、太宰によって妹の銀を攫われてしまいます。

 太宰への復讐と妹の奪還を誓いながらも、道半ばで力尽きようとしていた芥川を拾ったのは、武装探偵社に所属する織田作之助(!)でした。

 実力者である織田作之助を慕って武装探偵社に入社し、妹の銀を救うため力を蓄える芥川。
 芥川は武装探偵社の社員たちと、田植えをしたり、子守をしたり、与謝野の治療に怯えたりと和やかな日々を過ごしていきます。

 一方のポートマフィア。こちらは太宰治が首領の座についており、その下には「ポートマフィアの白い死神」と呼ばれる中島敦、そして敦を慕う泉鏡花の姿がありました。

 そして芥川の妹、銀も太宰の秘書として傍らに控えていたのです。

太宰治が願った織田作之助の生きる世界(すごくネタバレ注意)

 太宰から銀の写真と処刑日時が記された手紙が届いたことを切っ掛けに、物語は大きく動きます。

 妹を取り戻すべく、ポートマフィアに正面から乗り込む芥川。

 全てを薙ぎ倒し銀の元へと辿りつきますが、銀は自分を理由に破壊を繰り返す芥川の元へ戻ることを拒否。自分が処刑される代わりに芥川を助けてもらうよう太宰にお願いすると言って去っていきます。

 一方、そのころ太宰はある酒場で織田作之助と対面していました。

 この世界では初対面であるはずの二人ですが、太宰は何故か織田を「織田作」と呼び、楽しそうに知るはずのない様々なことを語りかけます

 織田が困惑しながらも、本題である芥川兄妹のことを切り出すと、太宰は芥川たちが生きてポートマフィアを出られれば、手出しするつもりはないと答えます。

 そして太宰は、「本来の世界」では太宰と織田が友人であったこと、よくこの酒場で語り合っていたことを伝え、去っていくのです。

 また場面は切り替わってポートマフィアに戻ります。

 銀を追う芥川の前に立ちふさがる敦。
 二人の凄まじい激闘が繰り広げられますが、戦いは辛うじて芥川の勝利で幕を下ろします。

 そこに現れたのは太宰治。

 太宰は二人の戦いを称え、全ての真実を語り始めます。

 これから「書いたことが現実になる本」を狙って、多くの敵が押し寄せてくる
 この戦いは「本」を守る人材を育てるため、最初から太宰が計画していたものだった、と。

 そして芥川と敦に「本」、そしてこの世界を守って欲しいと頼みます。

 実はこの世界の太宰は、異能によって「本来の世界」の記憶を受け取っていました。

 そして友人となるはずだった織田作之助が生き延び、小説を書き続ける世界を守るために、裏であらゆる手を尽くしてきたのです。

 全てを語った太宰は「本」のことを同時に3人以上の人間が知ると世界が消滅する可能性が高くなると、芥川と敦に全てを託し、ビルから飛び降ります。

 太宰の心残りはたった一つ。

 いつか織田作之助が書く小説を読めないことでした。


「文豪ストレイドッグス BEAST(ビースト)」の感想と評価

これぞスピンオフと言うべき傑作

 良くあるスピンオフは、脇役に焦点を当て本編をスケールダウンさせたものとなることが多いですが、「文豪ストレイドッグスBEAST」は違います。

 スピンオフでありながら決して本編に劣ることのない重厚なストーリー、そして本編を知っているからこその感動がこの作品にはありました。

 読み始めた当初の印象は単なる主人公とライバルの立場逆転もの。

 しかし終盤で真相が明かされ、立場が逆転したことにはきちんと意味と意図があり、本編とも繋がっていたのだと知って絶句。

 このどんでん返しには「そういう世界線なのね」、と目が覚めるような思いでした。

最初は銀を奪われた芥川が不憫で……ラストはただただ切ない

 序盤はただただ「芥川かわいそ~」といった印象が続きます。

 確かに探偵社で和やかな日々を過ごしてはいるけれど、大切な妹の銀は太宰に奪われて、しかも銀は秘書として少し太宰を慕っている雰囲気さえあります。

 これは最後、銀に拒絶されるフラグなんだろうなと、探偵社の幸せな日々も落とすための前振りにしか見えていませんでした。

 読んでいて「何で銀を攫う必要があるんだよ」と太宰に反感さえ感じていましたね。

 敦は立場が変わっても鏡花とイチャイチャしていましたから、余計に。

 しかし、ラストで太宰の本当の想いを知って評価は一転。

 誰にも知られることなく一人この世界で戦ってきた太宰。
 織田作とは赤の他人で、どれだけ自分が彼のことを知っていても一方通行。

 それでも満足して逝った彼の最期は……ただただ切なく、また読み返したくなるようなお話でした。



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