今回は山口つばさ先生が「アフタヌーン」で連載中の青春アートストーリー「ブルーピリオド」から、歪でかわいい本作の正ヒロイン(?)「高橋 世田介(たかはし よたすけ)」について解説します。
高橋世田介は東京美術学院(予備校)で主人公の八虎が出会った天才少年。
図抜けた絵の才能を持つものの、コミュニケーション能力に難が有り、非常に幼く危なっかしいパーソナリティーの持ち主です。
主人公の八虎とは対照的なキャラクターで、それ故に作中では互いに強烈に意識し合うことに。
本記事では男にも関わらずファンからヒロイン扱いされる高橋世田介のプロフィールや苦悩を中心に解説してまいります。
「ブルーピリオド」高橋世田介のプロフィール
基本プロフィール(誕生日、年齢、身長、声優など)
誕生日 | 9月19日 |
年齢 | 17歳(初登場時・八虎と同学年) |
身長 | 163cm |
所属 | 東京美術学院(予備校、高校は特進コース) →東京藝術大学絵画科油画専攻(学生) |
声優 | 山下大輝 |
高橋世田介は東京美術学院(予備校)で主人公・矢口八虎が出会った天才少年。
図抜けた絵の才能と技術を持つものの、コミュニケーション能力に難があり、作中では非常に幼く危なっかしいキャラクターとして描かれています。
外見は小柄で大人しそうな少年で、両目の下にあるホクロが特徴。
性格は大人しく人見知りしますが、空気が読めず、突然攻撃的に振る舞い周囲を冷や冷やさせることもあります。
嫌な奴というわけではなく、とにかく子供で人前で上手く振舞えない印象。
箸とか鉛筆の持ち方が独特(鷲掴み?)なのも幼い印象に拍車をかけていますね。
主人公の八虎とはとにかく正反対で、それ故に互いに強烈に意識し合うことに。
ちなみに世田介は縦書きすると「世界」とも読むことが出来るため、同じ高校の橋田からはセカイ君と呼ばれることもあります。
絵画はほぼ独学(高校は特進コース)
高橋世田介は幼い頃から絵が上手く、その絵の技術はほぼ独学です。
高校2年の冬に初めて東京美術学院(予備校)でデッサンを学びますが、しかし初めて描いたデッサンは既に完璧。
その絵の才能で八虎たち周囲の者を圧倒していました。
高校は「絵しか描けない」という親の評価に反発して美術コースではなく特進コース。
国語では全国模試7位になるなど、頭の良さも図抜けています。
あまり遊びなどには詳しくありませんが地頭がいいのでボードゲームとかはクソ強く、鉢呂くんをあらゆるゲームでボコボコにしたことも。
非常に才能豊かではありますが、自分の絵に関しては非常に頑固。
東京美術学院も高校3年の夏季講習で行われたコンクールで評価が低かったことを切っ掛けに「つまんない受験絵画押し付けやがって」と反発し、辞めています。
その後、独学を貫いて藝大に現役合格したのですから、世田介の才能は本当に大したものですよね。
しかし頑固すぎるが故に藝大入学後も彼は色々と苦しむことになり……
「ブルーピリオド」高橋世田介は正ヒロイン?
高橋世田介はこの「ブルーピリオド」において、しばしばファンの間でヒロイン扱いされるキャラクターです。
男にも関わらず世田介がそう認識される理由は主に二つ。
①中性的でかわいい容貌
②主人公・八虎の異常な執着
①については高橋がBL向けの容姿、性格をしているということ。
しかし単にかわいい容貌というなら、女装男子の鮎川龍二がいますから、これは決定的な理由にはなりません。
世田介がヒロインとして扱われる決定的な理由は②。
八虎が世田介に対し、執着とも呼べる異常な関心を抱き、世田介の言葉に一喜一憂している点です。
八虎は世田介の絵の才能に劣等感を抱き、憧れ、彼の言葉に異常なくらい喜んだり落ち込んだりしています。
自分にないものを持っている世田介への憧れですね。
逆に世田介は絵しかない自分に劣等感を抱き、何事もそつなくこなす(ように見える)八虎のことを意識しています。
その関係性が非常にBL的でヒロインっぽい、と。
藝大受験の2次試験の朝、八虎が世田介を憧れの女性・森先輩と見間違えたことも、ファンの妄想に拍車をかけているのかもしれません。
ただ個人的に言えば、見た目はともかく性格的には「八虎✖世田介」ではなく「世田介✖八虎」ではなかろうかと思いますので、ヒロインはむしろ八虎では、と。
「ブルーピリオド」高橋世田介と母親
高橋世田介と母親の関係はやや歪です。
元々世田介が内向的な少年だったというのもあるのでしょうが、母親は幼い頃からとにかく息子の世話を焼き、過保護に育ててきました。
「この子は絵しかできないんだから、自分が何でも世話してあげないと」
その結果、世田介は服を買うのも全部母親任せです。
今の幼くコミュニケーションが苦手な世田介があるのは、母親の影響が大きいと言えるでしょう。
ただこう書くと、世田介の母親は息子の可能性を狭めてきた毒親かのように思えますが、決してそんなことはありません。
確かに世田介の認識では、母親が彼を子ども扱いして支配しようとしているかのような描写がありましたが、母親はただ内に閉じこもる息子を否定しなかっただけ。
世田介が自分の手から離れて友達を作ることは素直に喜んでいます。
客観的に見れば、多少面倒くさいところはあるものの、普通に世話焼きで気の良いお母さんと言えるんじゃないでしょうか。
確かに母親は世田介を籠の中で過剰に甘やかしてきました。
しかし、そこから出ようとしなかったのは間違いなく世田介自身の責任です。
「ブルーピリオド」高橋世田介の苦悩と葛藤
絵の才能に溢れる高橋世田介ですが、彼にとってそれは決して誇るようなものではありません。
「事実だから」
「俺の絵が上手いのは」
「矢口さんはご飯食べたり」
「うんこしたりするのを」
「褒められたら」
「ソレに自信持てるの?」
天才過ぎて意味わかりませんね。
多分、絵が上手いというのは彼にとって自分を支える唯一のモノであり、自慢に思う事さえできないということなのでしょう。
絵を描くことを「好き」とすら認識していません。
それだけに予備校を辞めた一件しかり、世田介は自分の絵を否定されることに強く反発します。
それが強く表に出たのが藝大1年目、教授の猫屋敷あもから、もっと頭を使って描けと言われた時でした。
しかもその際、自分が藝大に入学できたのは絵が認められたからではなく、センター試験の成績が一番良かったからだという可能性を示唆され、世田介は激しく動揺します。
絵の才能という自分を支える唯一のモノが揺らいだのですから、それはキツいですよね。
ボロボロになって、流されるまま、猫屋敷先生の言うがままに作品を作ろうとした世田介。
しかしそんな時、八虎に自分が描いたウサギの絵、そこに感じたものを肯定され、初めて絵が描けて良かったと感じ、改めて自分の描きたいものを大切にしようと思い直します。
まだまだ不安定ですが、今後世田介が人と触れ合っていく中でどう変化していくのか、非常に楽しみですね。
「ブルーピリオド」高橋世田介の名言
それでは最後に、高橋世田介の印象的なセリフ・名言をいくつか紹介してシメとさせていただきます。
「なんでも持ってる人が」
「美術にくんなよ」
「美術じゃなくても」
「よかったクセに……!」
世田介にとって、八虎は自分と違って人付き合いが上手で何でも器用にこなせる人でした。
自分の劣等感を刺激する八虎に対して、つい思わずキツイ本音がこぼれます。
八虎はこの言葉にショックを受け、悔しくて泣きだしてしまうのですが、この悔しさがあったからこそ、余計に絵に対して熱意を燃やすようになりました。
そして藝大受験2次試験の昼休み。
たまたま一緒になった世田介が、八虎の絵を見て一言。
「むかつく」
「ちょっと見ない間に」
「上手くなりやがって」
自分の成長が世田介に認められた。
まだ試験は終わっていないのに、八虎はただそれだけで嬉しくなってしまいます。
劣等感を刺激される存在だからこそ、世田介にとっても八虎の言葉は強く響きます。
ボロボロになっている時、自分が描いたウサギの絵を見た八虎が「このうさぎめっちゃ世田介くんのこと好きじゃん」と言ったこと。
ただ自分の感じたことが人に伝わった、それだけのことで。
「俺、今はじめて」
「絵が描けてよかったと思った」
世田介は初めて絵で人と会話できたような気がして、思わず泣きだしてしまいました。
こういうところがヒロインと呼ばれる所以ですね。
藝大1年時の進級試験で、猫屋敷先生に「そのままじゃ君何者にもなれないよ」と否定された世田介の一言。
「何者かになる権利はあっても」
「義務はない……と思います……」
それが良いことなのかどうかは分からない。
けれど、今は自分が感じたものを大切にしたい。
ゆっくりかもしれませんが、世田介なりの成長の証と言えるでしょう。
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