今回はヤングジャンプで連載中の大人気漫画「ゴールデンカムイ」から、極東民族の未来をアシリパに託した男「キロランケ(ユルバルス)」について解説します。
キロランケはアシリパの父・ウイルクと共に樺太から北海道に移住してきた豪快な樺太アイヌの男。登場当初はただの保護者役かと思いきや、その壮絶な過去と正体で読者を沸かせてくれました。
また「ユダ」役としてのキロランケの裏切りは物語の大きな転換点ともなっています。
本記事ではキロランケの正体と目的、ウイルクやソフィアとの過去、その最期(死亡)などを中心に、可能な限り深掘りしてまいります。
「ゴールデンカムイ」キロランケのプロフィール
基本プロフィール(誕生日、年齢、モデル、声優など)、初登場は5巻
キロランケはアシリパの父・ウイルクと共にかつて樺太から北海道に移住してきた樺太アイヌ。
アシリパとも親しく、彼女からは「キロランケニシパ」と呼ばれ慕われています。
誕生日は8月2日で年齢は1866年生まれの41歳。
既婚者でぽっちゃり系の妻と二人の子供がいます。
外見は豊かな髭と胸毛が特徴の大人の色気溢れる美丈夫(髭は剃ってもすぐに生えてくるそうです)。
性格は見た目通り大らかで快活、豪放磊落な快男児で、杉元一行に対しては優しく包容力のある年長者として振舞っています。
しかしその笑顔の裏には、時に自らが信じる大義のために非常な決断を下す残酷さも……
日露戦争にも第七師団の工兵として参加していましたが、そこでは特に鶴見たちと接点はなかったようです。
実在するモデルは存在せず、強いて言うなら後述の皇帝爆殺犯がそれにあたります。
声優は「てらそままさき」さん。
コミックス9巻81話の「最後の晩餐」パロディでは「ユダ」の位置に描かれる
キロランケは作中序盤、アシリパの父の友人として杉元一行と行動を共にしていますが、その言動には当初から不審な点の多い人物でした。
アイヌの占い師であるインカラマッからは、キロランケこそが金塊強奪時にウイルクを殺した犯人だと裏切り者扱いされたことも。
ただその時点では何の証拠もなく(実際、その時点でウイルクは生きていたわけですし)、キロランケの裏切りについては真偽不明のままでした。
けれどコミックス9巻81話で杉元たちと土方一派が協力関係を結んだ際に「最後の晩餐」のパロディのような食事シーンが描かれており、キロランケが「ユダ」のポジションにあったことから、察しのいい読者は早々にキロランケの裏切りについて予期していたようです。
その正体はかつてロシア皇帝を爆殺したパルチザン
キロランケの正体は、かつてウイルクとともにロシア皇帝アレクサンドル2世を爆殺したパルチザンです。
出身も樺太ではなくアムール川流域。樺太アイヌの血が混じったタタール人で、元々は虎の意味を持つ「ユルバルス」という名前でした。
皇帝爆殺事件後、テロリストとして国を追われウイルクとともに北海道に逃れてきましたが、その後もパルチザンの同志たちとは連絡を取り合っているようです。
その経歴から火薬の扱いと破壊工作に関しては右に出るものがなく、また幼い頃からタタールで馬に親しんでいたため、卓越した騎乗技術を保有しています。
「ゴールデンカムイ」キロランケの人間関係
アシリパの父、ウイルクとは極東民族独立を目指す同志だったが……
キロランケにとってウイルクは、極東の少数民族独立を目指す同志であり、合理的で頼れる兄のような存在でした。
二人の直接的な絡みは作中ではほとんど描かれていませんが、キロランケもウイルクのことを「心から信頼して愛していたよ」と語っています。
キロランケとウイルクは北海道に逃れて以降も、ロシア極東や樺太、北海道の少数民族を中心とした「極東連邦」の成立を目指して共に活動を続けていました。
その二人の目的に齟齬が生じたのは、アシリパの誕生が切っ掛けでした。
北海道で愛する家族ができたウイルクは、ロシア極東や樺太は諦め、守りやすい北海道のみの独立を目指した方が現実的だと方針転換してしまいます。
それは本来救うべきだった故郷の民を見捨てる決断であり、キロランケにとっては決して許すことのできないものだったのです。
憧れの存在、ソフィア・ゴールデンハンド
ソフィア・ゴールデンハンドは、ウイルクとキロランケが所属していた反体制組織の指導者で、皇帝爆殺事件の首謀者だった女傑。
皇帝爆殺事件の後、ソフィアはウイルクやキロランケとともに北海道への逃亡を計画していましたが、その最中に起きたある事件(鶴見中尉の記事を参照)が切っ掛けでロシアに残り、義賊として活動しています。
登場当初は収監され厳しい尋問を受けていたものの、本人は全く意に介さずキロランケを含めた外部の仲間と連絡をとりつつ、脱走の機会をうかがっていました。
キロランケにとってソフィアは昔からの憧れの女性。
若い頃は細身の可憐な姿だったソフィアですが、現在はとてつもなくゴツイ巨漢へと変貌しており、再会したキロランケが「めちゃくちゃいい女になったな」と漏らして惚れ直してしまう様子が描かれていました(……ぽっちゃり好きってレベルか?)。
ロシアで自分たちを信じて戦うソフィアの存在は、キロランケが少数民族独立を目指して戦い続ける大切な動機であり、ウイルクの決断を許すことができなかった最大の理由だったのです。
「ゴールデンカムイ」キロランケの目的とその最期(死亡)
その目的は今もロシアで戦う同志たちを救うこと(ウイルク殺害の理由)
ここまででも何度か触れてきましたが、キロランケの目的は今もロシアで戦う同志たちを救うことにあります。
そのため、強奪されたアイヌ民族の金塊を活動資金として、ロシア極東や樺太、北海道の少数民族を中心とした「極東連邦」を成立させようとしていました。
網走監獄で尾形に命じてウイルクを殺害した理由は、既にウイルクが自分とは志を異にしており、彼がアシリパと接触すればアシリパがウイルクの考えに流されてしまうことを危惧したのでしょう。
また、同時にキロランケにとって現在のウイルクは見るに堪えない堕落した存在と見えていたのかもしれません。
「ウイルクは群れの中の弱くなった狼だ」
「かつてウイルクが憧れていたはずの」
「狼のやり方で彼を殺してあげた」
愛が重すぎる気はしますが、ウイルク自身もかつてロシアで邪魔になった鶴見の妻子を殺害したことがありますし……彼ら(狼)のルールでは間違ってはないのかなぁ?
アシリパに自分たちの未来を託そうと奔走し、谷垣たちとの戦いの果てに死亡
キロランケは網走監獄でウイルクを殺害した後、アシリパを連れ、尾形や白石とともに樺太へ渡っています。
その目的は、アシリパをウイルクの過去に触れさせることで金塊の謎を解くカギを思い出させ、同時にアシリパに自分の使命を理解させること。
かつてウイルクと共に戦い今も彼を信じて戦う同志たちの存在がアシリパを民族独立の大義へ目覚めさせるはずだと信じていたのです。
樺太の旅はある意味キロランケの思惑通りに進みますが、氷原の中、それを阻もうと追いかけてきた杉元たちと激突することに。
死の間際に、アシリパが金塊のカギを思い出したことを知り、ソフィアのことを思いながら満足して死んでいきました。
この後、キロランケを氷葬した白石が彼にかけた言葉こそが、キロランケの生き方を如実に表しているような気がします。
「キロちゃんは真面目過ぎた」
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