「腸よ鼻よ」感想&評価~大腸の無い漫画家・島袋全優先生のリアル闘病ギャグエッセイ漫画、皆マジで面白いから応援して!~

 今回はウェブコミック配信サイト「GANMA!」で大腸の無い漫画家・島袋全優先生のリアル闘病ギャグエッセイ漫画「腸よ鼻よ」を紹介します。

 この「腸よ鼻よ」は国指定の難病を患ったことで始まった先生自身の闘病生活をコミカルかつリアルに描いた作品。

 割とシャレにならない命の危険もあったり、執筆中である今なお「作者取材のため」と称して緊急手術&入院でちょいちょい休載しています。

 しかし作品はそんな悲惨な境遇を描いていながらクソ面白い。

 本記事では今なお病と闘う島袋全優先生への応援の意を込めて、この異色の作品を紹介させていただきます。

「腸よ鼻よ」あらすじ

 ことの始まりは2011年3月。

 当時島袋全優は那覇市の専門学校に通い、漫画家を目指す19歳の学生でした。

 彼女は下痢・血便で病院を受診し、腸炎と診断され薬を処方されたものの、病状は全く改善しませんでした。

 不審に思った彼女は詳しい検査を要望し、内視鏡検査で腸を診てもらうとなんと「潰瘍性大腸炎」であることが判明。

 「潰瘍性大腸炎」とは1万人に1人の病、発症原因不明の難病特定疾患。

 現時点で完治する治療法はなく、投薬や食事療法で症状をコントロールするしかありません。

 しかも最初の診断を誤ったことで症状は中等症まで悪化していました。

 幸い、セカンドオピニオンでドクターSという良いお医者さんに巡り合い、真っ当な治療を受けることが出来た全優。

 しかし彼女の病状は非常に性質が悪く、少し改善したかと思えばすぐまた悪化し、彼女を入院病床へと連れ戻します。

 そんな環境にあっても夢だった漫画家としてデビューを果たした全優。

 しかしその激務が余計に彼女の病状を悪化させることになります。

 入退院を繰り返す苦しい状況、厳しい食事制限に疲れた彼女は、自ら大腸を全摘出し小腸を肛門へと繋げる根本治療を選択。

 要は「大腸に炎症が出来て辛いなら、大腸をとっちゃえばいいんじゃない?」というマリー・アントワネットも真っ青な大胆な治療。

 一時的に人工肛門(ストーマ)にする必要があり、便もれなど様々なリスクをはらんだ手法です。

 手術の際に腸の長さが足りなくて腸が壊死しかけたり色々あったものの、ストーマも閉じて治療完了。

 全優は健康を取り戻した……かに思えました。

 しかしその後すぐ、彼女は縫合不全が原因で腸内に難治性瘻孔を発症。

 新たなステージの闘病生活へと突入することになったのです。

 しかも同時期に、デビュー作「アンクルフロッグ(実際の本のタイトルは「蛙のおっさん」)」の連載打ち切りが告げられ、通っていた沖縄の病院に専門医がいなくなったりと状況は悪化の一途。

 と、そんな踏んだり蹴ったりの中で担当編集者から「腸よ鼻よ」の企画が提案され、彼女はこの闘病ギャグエッセイ漫画を描くこととなったのです。

「腸よ鼻よ」作者・島袋全優とは?

 作者兼主人公の島袋全優先生は、沖縄県出身の女性ギャグ漫画家です。

 「現在の全優=バブル期のボディコン」と「過去の全優=三つ編みおさげの美少女」の二パターンが存在し、物語は「現在の全優」がバーでマスターと軍人(ボブ)相手に昔語りをする、という形で語られています。

 国指定の難病「潰瘍性大腸炎」を患い、その後「難治性瘻孔(腸だけじゃなく膣にも繋がって死にかける)」、「腸閉塞」など様々な病に悩まされる病弱な女性。

 しかし「病弱=大人しい」ではなく、リーゼントで気合いを入れたりデーモン閣下スタイルでメディア露出するなど、その言動は中々にファンキー。

 根っからの漫画家であり、手術の度に作画資料として自分の内臓の撮影を医者に強要しています(モザイクかけないといけないので意味ないですけど)。

 調子に乗ると顔が「北斗の拳」風になり、筋肉好きオフ会では横山三国志風になったりと、作風が一定しません。

 「作者取材のため」と称して何度も緊急手術&入院で休載しており、物語が進み休載時の病状が明かされると、そのヤバさに読者がドン引きすることも多々。

 作画が荒れると読者から病状を心配する声が上がります。

 現在は通っていた沖縄の病院に専門医がいなくなってしまったため、お姉さんと共に三重県に移住して治療を行っているそうです。


「腸よ鼻よ」主な登場人物(主人公以外)

全優一家(父・母・姉・兄・祖母)

 島袋全優先生のご家族。

 作中では全優先生が(ガチで)大好きな仲良し家族として描かれており、名前は明かされていません。


キラキラおめめの巨漢。
ちょいちょい入院しており、実はホテルのシェフ。


娘離れができてない優しいお母さん。
いつも娘の病気に泣かされている。


全優を「全くん」と呼び溺愛するシスコン。
全優と正反対の人見知りで大人しい女性。
妹のためにあっさり仕事を辞めて三重に移住している。


眼鏡のお兄さん。
作中で結婚し、子供もできている。

祖母
あまり登場しない祖母。
物凄く勘が鋭い。

最初の担当医(ヤブ医者)

 全優を最初に治療し、「潰瘍性大腸炎」をただの「腸炎」と誤診したヤブ医者。

 ネットで治療法を調べたり、セカンドオピニオンのための内視鏡写真を白黒で出したり(全然症状が分からない)、数々のやらかしをしている。

 ナルシ―系のイケメンとして描かれているが、この男に対する全優の溢れ出る恨みは抑えきれていない。

ドクターS(S先生)

 全優のセカンドオピニオンを担当し、その後主治医となった初老の男性。

 右目の眼帯とバンダナがトレードマークのハードボイルドかつダンディーな男として描かれているが、ものすごく頼りがいのある常識人であり、内科医。

 人気投票ではぶっちぎりの1位を獲得した。

山田先生(研修医)

 ドクターSの下で修業を積む研修医。

 眼鏡の大人しそうな見た目だが、ツッコミは鋭い。

 後に立派な内科医となって再会する。

 ちなみに人気投票2位。

ドクターZ

 全優の大腸を摘出した外科医。

 物腰柔らかで人の良い先生だが、激務のためか頬がやせこけ常に血を吐いている(口内炎)。

 頑張り過ぎたのか、体調不良により休職することになる。

ドクターA

 三重の専門病院で全優を担当した医者。

 メカメカしいモノクルをかけた、ある意味一番ドクターらしい男。

ワダ(精神科医)

 医療用麻薬の離脱症状に苦しむ全優を担当した精神科医の女性。

 ヤマンバギャル風の見た目と言動だが、発言内容自体は至極まっとう、

 全優の座右の銘を「死ぬ事以外かすり傷」から「生きてるだけでめっけもん」に変えさせた。

マタヨシ(看護師)

 沖縄の病院で全優と仲の良い女性看護師。

 美少女好きのオタクで課金額はヤバめ。

S里(看護師)

 沖縄の病院で全優と仲の良い男性看護師。

 オルタナティブロック好きで見た目はヤバめだが、真面目で優しい。

編集M

 全優を見出した初代担当。

 エヴァっぽい見た目で、気に入ったネームは食べる習性がある(原稿は食べない)。

編集K

 他誌の副編集長になったMから全優を引き継いだ2代目担当。

 良く分からんが仮面の犯罪者っぽい設定でやたらノリが良い。

スーさん

 全優の専門学校時代からの友人でシナリオ専攻。

 ちょい役のはずだったが何故か人気となり、水着姿まで披露した女性。

 卒業後もちょいちょい全優を遊びに誘ってくれる。

アラキ

 全優の専門学校時代からの友人でマンガ専攻。

 見た目は特徴のない普通の男だが、情に厚いいい奴。

 ちょいちょい全優のアシスタントをしてくれる。

ナカマ

 全優の専門学校時代からの友人でマンガ専攻。

 プロデビューし調子に乗った(聖帝サウザー化した)全優のくつの中にカブラペンを仕込んだこともある。

 後に和解し、アラキとともにちょいちょいアシスタントをしてくれる。


「腸よ鼻よ」感想&評価

過酷な闘病エッセイなのにクソ面白い!

 久々にぶっ飛んだギャグを読みました。

 内容自体はギャグテイストに加工されてはいるものの、かなり過酷な闘病生活を描いたエッセイ漫画で、普通に考えればとても笑えるような内容じゃありません。

 年に何度も入院しなければならないほどの腹痛とか食事制限だけでもキツイのに、それを改善しようと大腸を摘出したら今度はそれが原因で別の病気を発症。

 その後、普通に死にかけてます。

 人工肛門(ストーマ)も非常に大変そうですし、薬(医療用麻薬)の副作用もドン引きするレベル。

 どう考えても笑える内容じゃないんですが……なのにクソ面白い!

 全優先生のギャグセンスによるものか、陽の気によるものなのか、読んでて久々に大笑いしました。

 というか、腸内洗浄セットを「BLセット」と呼ぶ言葉選びの秀逸さは何なんでしょうね。

マジで島袋全優先生を応援してください!

 読んでいてマジで応援したくなるのが全優先生のお金事情。

 流石に今はもう少し改善しているのでしょうが、治療費にお金が吸い上げられる中、デビュー作「アンクルフロッグ(蛙おじさん)」が打ち切られたり2巻の発行部数が減らされた時のエピソードには、思わずうめき声をあげてしまいました。

 漫画家の印税って1万部とかそのレベルじゃしょっぱいんですね。

 今なお治療を続けておられ、作者取材(緊急入院&手術)による休載が避けられない全優先生。

 先生が安心して治療を受けられるように、安心して良いストーマ(人口肛門)関連用品を使えるように、是非皆さま、先生の本を買って、読んでください!

 頑張れ島袋全優!

 負けるな島袋全優!

 




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