今回はその強烈すぎるストーリーとキャラクターで話題を攫った傑作漫画「チェンソーマン」より、アホの子主人公「デンジ」について解説します。
デンジはチェンソーの悪魔「ポチタ」と契約し、チェンソーマンに変身して戦うダークヒーロー。
その過去も含めなかなか悲惨な境遇の少年ですが、本人が途轍もないアホの子であり、そうした暗さをほとんど感じさせません。
本記事ではデンジのプロフィールや強さ(正体)に加え、彼の人間関係、そして第一部のラストで選んだ衝撃の結末(マキマ定食)、第二部での再登場などを中心に語ってまいります。
「チェンソーマン」デンジのプロフィール(過去・正体)
チェンソーの悪魔・ポチタと契約したアホの子主人公
デンジは父親の残した多額の借金を返すため、チェンソーの悪魔・ポチタと契約し、悪魔を狩るデビルハンターとなった本作の主人公です。
外見は金髪のチャラくてバカっぽい雰囲気の少年で、年齢は(大体)16歳。
危険な悪魔退治の仕事をしても稼いだ先から借金やら諸々の支払いに取り立てられ、幼い頃から日々の食事もままならない極貧生活を送っていました。
性格は極めて能天気かつ前向きで自分の欲望に忠実なアホの子。
その欲望も実体験が伴わないため「食パンにジャムを塗って食べたい」とか「死ぬ前に女を抱きたい」とか、非常に些細なものに過ぎません。
デンジはある日「ゾンビの悪魔」に操られたヤクザに襲われ斬り殺されてしまいますが、ポチタが自らをデンジの心臓へと変え、デンジと融合することで彼を蘇生。
それによりチェンソーの悪魔(=チェンソーマン)に変身する能力を手に入れたデンジは、ゾンビの悪魔を倒し、その現場を訪れたマキマによって公安にスカウトされました。
その後デンジはマキマの魅力につられ、彼女の立派な犬となるべくバディとなった魔人パワーや先輩デビルハンター・早川アキと共に悪魔と戦っていくことになります。
アニメでの声優は戸谷菊之介、新人さんが抜擢されました。
その過去と正体、父親は自殺or他殺?(ループ説)
デンジというキャラクターは、父親からネグレクトを受けて育った少年です。
当初、デンジの父親は多額の借金を残して自殺した、と言われてきました。
しかし82話において、実はデンジが父親を殺したことが明らかになっています。
酔った父親に襲われ、仕方なく返り討ちにした。
周囲の借金取りは、デンジから借金を取り立てるために自殺扱いにしてくれた、と。
デンジ自身も自分の心を守るため、ずっとその記憶を封印していたのです。
作中でデンジはマキマにその事実を突きつけられ、完全に心を折られていました。
しかし、これには回想シーンの細かな矛盾などもあって異論も存在しています。
違和感はデンジの記憶改竄によるもの、と言われればそれまでなのですが、それらを合理的に説明できる考え方。
実はチェンソーマンではファンの間で「ループ説」がまことしやかに語られてきました。
この作品には「現在の世界」と「ループ前の世界」、二つの時間軸が存在するという説です。
ここで注目したいのが、物語の中でデンジがポチタと結んだ3つの契約。
①ポチタに血をやる対価として自分を助けて欲しい。
②ポチタに自分の身体をあげたい。
→代わりに普通の暮らしをして普通に死ぬ、自分の夢を叶えて欲しい。
③ポチタの心臓をデンジにやる対価として、デンジの夢を見せて欲しい。
さて、①によってデンジはデビルハンターとなり、③によってチェンソーマンとなりました。
では②の契約は?
ここで一つの推論が成立します。
「現在の世界」のデンジは「ループ前の世界」のポチタがデンジの身体を乗っ取った存在。
「ループ前の世界」で父親は自殺していたが、「現在の世界」ではデンジ(=ポチタ)が普通の生活を送るという「契約」のために殺してしまった、というものです。
こう考えれば、現在のデンジに恐怖が欠落していること、そしてマキマが82話など要所要所で彼のことを「デンジ」ではなく「キミ」と呼んでいる違和感にも説明がつきます。
さて、この説について第一部完結時点では何も語られていませんが、真相やいかに……(まあ、そういう考察をしてる人もいるよ~、ぐらいに思っていただければ)
「チェンソーマン」デンジの強さ(覚醒)
全身から刃を生やした不死身のごり押し系主人公
デンジはチェンソーの悪魔と融合した人間で、その戦い方は悪魔の力を使ったものとなります。
デンジの胸にはチェンソーのスターターロープが生えており、それを引いてエンジンを吹かすことでチェンソーマンに変身。
頭部はチェンソーっぽく変貌し、腕や足から刃を生やして敵を切り裂きます。
ほとんど不死身に近い再生能力を持っており、戦闘技術もくそもなく、チェンソーの威力と不死性によるごり押しパワータイプの戦い方を得意としています。
一応、物語が進むにつれてチェンソーのチェーンだけを取り外して拘束具として活用するなど、色々小細工も覚えてはいきますが、最終的にはごり押しが一番強いですね。
弱点は全身から生やしている刃がデンジ自身の肉体を切り裂いて生えてくるので、変身や戦闘には血液が消費され、貧血状態になってしまうこと。
血さえ飲めれば死んででも復活するのですが……
その真の姿は悪魔を消し去る地獄のヒーロー
そもそもデンジが契約したチェンソーの悪魔(=チェンソーマン)とは、悪魔を消し去る力を持つ地獄のヒーローです。
完全覚醒したその姿は、基本フォルムこそ同じですが腹部から腸が飛び出してマフラーのように首に巻かれるなど、より悪魔らしいものに変化しています。
ポチタの真の姿とも言えるわけですが、マキマの口から語られたその正体は次の通り。
・地獄で助けを叫ぶと現れ、叫ばれた悪魔も叫んだ悪魔もバラバラに殺してしまう。
・何度も殺されているが、その度エンジンをふかして復活する。
・天使の階級の名を冠した眷属悪魔が存在する。
そしてチェンソーマン最大の特徴は「チェンソーマンが食べた悪魔は、その名前の存在がこの世から消えてしまう」こと。
そもそもチェンソーマン世界の悪魔とは、人間が抱く特定の存在や概念に対する恐怖によって生まれたもので、死んだとしても輪廻転生し(地獄⇔人間界)、その存在が消えることはありません。
しかしチェンソーマンが食べた悪魔は消えてしまい、その悪魔が名を冠した概念そのものが消滅、この世から忘れ去られてしまうのです。
・ナチス
・第二次世界大戦
・エイズ
・核兵器
これらの言葉はチェンソーマンが悪魔を食べた結果、この世界に存在しません。
また、我々の世界にも存在しませんが、次の言葉の悪魔もチェンソーマンに食べられてしまったそうです。
・アーノロン症候群
・租唖
・比尾山大噴火
「チェンソーマン」デンジの人間(?)関係(パワー、マキマ)
血の魔人「パワー」~バディであり友であり家族~
デンジのバディであり友であり家族であったのが、血の悪魔が人の死体を乗っ取った存在、魔人パワーです。
パワーは公安に飼われているデビルハンターで、マキマによってデンジのバディに任命されます。
外見はピンク色の髪の可愛らしい美少女ですが、中身はとんでもない見栄っ張りで傲慢で自分勝手でナルシストで臆病者で虚言癖のあるダメ人間(悪魔?)。
よくこんな奴をメインキャラに据えたなと呆れてしまうほどの問題児ですが、ある意味で裏表のない性格をしており、(パワーほどではないにしろ)同じダメ人間のデンジとは、当初こそ衝突はあったものの彼女なりの友誼を育んでいました。
ただそれでも、ヒロイン枠というよりは、せいぜい手のかかる妹枠(長男・早川アキ、次男・デンジ、末っ子・パワー)。
いくら見た目が可愛くても言動がエキセントリックすぎてヒロイン昇格はあり得ないだろうと思われていました。
……が、何と第一部ラスト直前では、その身を呈してデンジを守り、自分の血を与えてデンジを復活させるというヒロインムーブをかまし、下馬評を一気に覆します。
パワー自身はデンジに血を与えて死亡しますが、その対価にいつか転生した「血の悪魔」を見つけ出し、もう一度友達になるようデンジと契約を結んでいました。
転生したパワーは記憶を失っているはずですが……第二部での再登場が期待されますね。
マキマ~恋愛対象ではなく母性を望んだ女性、最期は自ら食べてしまう~
マキマは公安にデンジを引き込んだ存在であり、デンジの憧れの女性。
第一部の黒幕と呼べる存在ですが、そこを語り出すとキリがないのでここではデンジとマキマの関係に内容を絞って語らせていただきます。
デンジは彼女にぞっこんで、彼女と結ばれるために奮闘するわけですが、デンジがマキマに求めていたのは「異性」ではなく「母性」。
デンジ自身もそのことを理解していませんでしたが、親から虐待を受けて育ったデンジはマキマに母親としての愛情を求めていたのです。
これについてはインタビューで作者の口から語られており、「マキマ」の名前の由来は「キ(木)」をチェンソーで切ると「ママ」になるところからきているのだとか。
一方でマキマは「デンジ」に対して何の興味も抱いていません。
「支配の悪魔(=マキマの正体)」であるマキマが見ていたのは「チェンソーマン」だけ。
デンジに優しくしていたのも、彼に幸福を味合わせた上でその全てを奪い去り、絶望させ、チェンソーマンとデンジの契約を破棄させ、その力を自分が手に入れるためだったのです。
最終的に対立することになったデンジとマキマですが、内閣総理大臣との契約により自分への「攻撃」を適当な日本国民の死に変換できるマキマを倒す手段はありません。
最終的にデンジがとった手段が「切り刻んだマキマを食し一つになる」というもの。
ファンの間で「マキマ定食」と呼ばれるこのエピソードは、マキマを生姜焼きや味噌汁、ハンバーグやカツ、もつ味噌煮込みなど、様々な料理に変えて食べつくすという驚愕のラスト。
編集からNGを出されながらこれを強行した作者でさえ、流石に当時は身の危険を感じていたそうです。
デンジの「食べる」という行為は「攻撃」ではなく、マキマへの「愛」の表れだったため、マキマた内閣総理大臣と結んだ契約は発動せず、そのまま滅んでいきました。
……愛だって言われたら、そりゃ何も言い返せないですよね。
ちなみに、その後ほどなくして新たな支配の悪魔「ナユタ」が中国で発見され、彼女はデンジの元に預けられます。
一方通行だった彼らの関係が、どのように変化していくのかも第二部の注目ポイントの一つです。
「チェンソーマン」第二部でのデンジ
チェンソーマン第二部は当初数話はデンジが登場しないまま物語が進行していました。
デンジが本格的に再登場したのは103話(チェンソーマンとしては102話に登場)。
第一部終了後、何らか成長や変化があったかのかと心配(?)されていましたが、デンジは変わらずアホの子。
自らがチェンソーマンであることが人々にバレて、自分がモテようと計画していたのです。
もう、第一部ラストからの流れ、そのまんまですね。
一方、目に見える変化としては同居人・ナユタの存在。
デンジはナユタを大学に行かせるためにコツコツお金を貯めており、ナユタに対してだけは良きお兄ちゃんとして振舞うようになっています。
「一番大事なのはナユタだよ……」
デンジがナユタに甘いのは家族だからか、それとも彼女にマキマの影を見ているからなのか……
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