今回はその強烈すぎるストーリーとキャラクターで話題を攫った傑作漫画「チェンソーマン」より、第1部ラストに登場した支配の悪魔の転生体「ナユタ」について解説します。
ナユタとは第1部の黒幕であったマキマ(=支配の悪魔)がデンジに(意味不明な手段)で倒され、全ての記憶を失い転生した存在。
第1部ラストではかつてマキマが飼っていた犬たちと共にデンジと暮らし始めます。
マキマとは既に別個体とされるナユタ。
本記事ではナユタ誕生に至る経緯やマキマとの関係性、第2部にどのように関わってくるのかなどを中心に語ってまいります。
「チェンソーマン」ナユタとは?
第1部最終話で登場した「支配の悪魔」の転生体
ナユタとは第1部最終話(97話)で登場した支配の悪魔(=マキマ)の転生体です。
マキマだった時の記憶は残っておらず、支配の悪魔ではありますがマキマとは既に別人。
マキマと同様のぐるぐるおめめが特徴で、小学生ほどの少女の見た目をしています。
まだ生まれて間もないためか、感情の動きが少なく無口で無垢。
デンジに食べたいものを(肉以外で)尋ねられ、「食パン」と答えるなど、悪魔にしては非常に安上がりな嗜好の持ち主です。
第2部では119話で登場し、その(ヤバイ方向に)成長した姿を見せてくれました。
ナユタ誕生に至る経緯
第1部ラストで、デンジの意味不明な手段によって倒されたマキマ(支配の悪魔)。
悪魔は現世で死ねば地獄に、地獄で死ねば現世へと転生するため、支配の悪魔もまた地獄へと転生したのでしょう。
しかし、転生後間もなく地獄でも殺されてしまった支配の悪魔は、再び現世へ転生することになります。
そうして中国で発見され、国家機関に確保されていた支配の悪魔。
そのまま国に育てさせてしまえば、再びマキマのようになってしまうと判断した岸辺は、支配の悪魔を盗み出し、その身柄をデンジに託します。
新たな支配の悪魔は「ナユタ」と名乗りました。
デンジ、そしてかつてマキマが飼っていた犬たちと一緒に暮らし始めたナユタ。
第1部ラストでは、デンジに抱きしめられ、抱きしめ、よだれを垂らしながら幸せそうに眠るナユタの姿が描かれていました。
「チェンソーマン」ナユタはマキマではない?
マキマの記憶は残っていない(?)
「マキマは死んだ」
「そいつには記憶も何も」
「残ってないだろう」
悪魔は死んでも生まれ変わることが出来ますが、転生の際には記憶を失い別人となってしまいます。
ナユタも「支配の悪魔」という枠組みこそ継承されていますが、前世で「マキマ」として積み上げた記憶や経験は残されておらず、基本的には別個体。
見た目も、年齢だけでなく髪色やホクロなども変化しており、マキマだったときの要素はあまり残っていません。
しかしかつて天使の悪魔が地獄での記憶(=死ぬ前にチェンソーの音を聞いた)を語ったように、必ずしも前世の記憶全てが失われるわけではない様子。
ナユタにもマキマだった時の名残を感じさせるものが存在します。
マキマとの共通点
ナユタとマキマの共通点は大きく4つ(細かいことを言い出せば多分もっとたくさんあります)。
①ぐるぐるおめめ
ナユタとマキマの外見上の共通点と言えば、特徴的なぐるぐるの目。
これはマキマだけでなくヨル(戦争の悪魔)やキガちゃん(飢餓の悪魔)とも共通しており、恐らくは黙示録の四騎士を象徴する悪魔全員に共通する特徴なのでしょう。
ただ、ナユタはマキマと比べ髪色が黒く、左目の下に泣きボクロがあるなど、それ以外の見た目にはほぼ共通点がありません。
②犬好き
ナユタもマキマも犬好き。
マキマはたくさんの犬(ハスキー犬)を飼っており、デンジのことも「犬」呼ばわりして可愛がっていました(?)。
そしてナユタもデンジが引き継いだマキマの犬たちに一瞬で懐いています。
③嚙む力
「デンジくんの目が」
「見えなくなっても」
「私の噛む力で私だって」
「わかるくらいに覚えて」
ある意味で、マキマとナユタ最大の共通点。
第1部12話でマキマに指を噛まれ、その噛む力を覚えさせられたデンジ。
ナユタに指を噛まれ、その噛む力で「ナユタ=マキマ」だと認識していました。
④願い「対等の関係」
ナユタとマキマ、そして支配の悪魔に共通する願い。
それはポチタが語った「他者と対等の関係を築くこと」でした。
それ故に、マキマは映画で2人の男が抱きしめ合うシーンで思わず涙を流し、ナユタは眠りながらデンジに足を絡めて抱き着き幸せそうにしていました。
マキマから受け継がれた願いをナユタが叶えた形ですね。
「チェンソーマン」ナユタの元ネタ(オマージュ)
藤本タツキ自身の読み切り「予言のナユタ」のセルフオマージュ
ナユタの元ネタは、藤本タツキ先生自身が以前描いた読み切り作品「予言のナユタ」に登場する、世界を滅ぼすと予言された少女「ナユタ」だと言われています。
あちらのナユタはツノが生えていますが、ぐるぐるおめめや左目下の泣きボクロなど、見た目はそっくり。
加えて世界の脅威となり得る力を持っている点も共通しています。
恐らくは古くからのファンを喜ばせるための演出なのでしょう。
ちなみに「予言のナユタ」は「藤本タツキ短編集 22-26」に収録されています。
弐瓶勉氏の「ABARA」
また、ナユタのもう一つの元ネタと言われているのが、弐瓶勉氏の「ABARA」。
「チェンソーマンは『邪悪なフリクリ』『ポップなアバラ』を目指して描いています」
藤本先生がこう語ったように、チェンソーマンはかつてウルトラジャンプで連載されていた「ABARA」に影響を受けています。
弐瓶勉氏は「シドニアの騎士」や「人形の国」の作者としても知られていますね。
「ABARA」とは「ガウナ」と呼ばれる異形に変身して怪異に立ち向かうダークSF漫画で、主人公の名前は「駆動電次(くどうでんじ)」。
そしてそこには「那由多(なゆた)」という少女も登場します。
ナユタと那由多は、強力な力、情緒面が欠けている点など共通点が多く、大きく影響を受けていることがうかがえます。
「チェンソーマン」ナユタ、第2部に再登場
ナユタ、ヤンデレへと成長す!?
119話ではついにチェンソーマン第2部に本格登場したナユタ。
第1部ラストの時から比べると髪が伸び、三つ編みにして若干マキマに似た雰囲気を漂わせていました。
デンジの「同居人」として暮らしており、現在は「人間」として小学校に通っている模様。
流石元マキマということか非常に頭が良く、デンジは何とかお金を貯めてナユタを大学まで行かせてやりたいと父親のようなことを考えています。
デンジの影響か馬鹿っぽい所もあるようで、デンジとの部屋には今月何回オナラをしたかが記録されていました。
デンジ曰く「性格がヤバい超問題児」へと成長しているらしく、ナユタの前でデンジとイチャイチャすると、最悪ナユタに殺される可能性もあるのだとか(ヤンデレ!?)。
作中ではデンジを誘惑しようと彼にキスをしたヨルが、ナユタに「泥棒」扱いされ指から飛び出した鎖で頭を貫かれていました(第1部76話でアキたちを操ってたあの鎖でしょうか?)。
殺されはしなかったものの、精神を操られ犬にされてしまったヨル。
その理由は、
「私のモンに唾つけたから!」
う~ん、デンジに育てられて大分染まってますね。
支配の悪魔としての力はどうなった?
元々「支配の悪魔」の能力は自分より下と認識したモノを支配する力。
ナユタはマキマと違いデンジという対等の存在を得ていますから、かつてほど自由に他者を支配することができなくなっている(弱体化した)と考えるのが自然です。
それを抜きにしても、マキマがあれほど理不尽な存在だったのは、内閣総理大臣との契約により「マキマへの攻撃は適当な日本国民の死へと変換」されてしまったから。
その契約による不死性を失っている以上、現在のナユタは「殺せば死ぬ」普通の悪魔(?)に過ぎません。
ただ「戦争の悪魔(弱体化中)」をあっさり支配してしまったことを考えると、支配する能力そのものは健在。
むしろデンジに執着した結果、「格下」と認識する範囲が広がっている可能性さえあります。
岸辺たち公安が黙認しているということは、マキマと比べるとまだマシ、ということなのでしょうが……
コメント
・マキマほどの者の記憶に残っていそうな「地獄での死の直前の状況」
という点と、
・「指を噛む力」という伏線があの程度で回収されたことになるのか?
という点が引っかかります。
幸せが当たり前になってしまい新しい欲望が湧くのは人間だけではなさそうな気もしますし、何者かに入れ知恵をされるなどの外的要因でまずい方向に成長してしまう可能性もあります。
何より、人々が支配への恐怖を克服できない限りは(歴史的にもそれは不可能なので)、いずれは…と思います。
支配の悪魔があそこまで強力になったのは、なにもマキマ個体だけではないでしょう。
そこそこの強キャラにまで再成長しないように支配を押さえつけることができるとは思えません。