今回は荒川弘先生が少年ガンガンで連載中のダークファンタジー「黄泉のツガイ」から、主人公ユルたちの故郷「東村」について解説します。
東村は現代文明から隔絶された山奥の集落。
多くのツガイ使いを関係者に持ち、数百年周期でユルたち「夜と昼を別つ双子」を生み出しています。
最初期から登場していながら、その根本的な部分については未だ謎の多い東村。
本記事ではこの東村の概要やモデル、その関係者(影森家・西ノ村)を中心に解説してまいります。
「黄泉のツガイ」東村とは?
東村とは主人公のユルが生まれ育った山奥の集落です。
現代社会からは隔絶した環境にあり、文明水準は戦国時代並。
村人たちは畑作や狩猟など原始的な暮らしをしていて下界での戸籍も存在しません。
不思議な結界によって隔離されており、「出稼ぎ」の名目で村と下界を行き来している番小者(後述)以外は基本的に出入りすることは不可能。
具体的な場所は不明ですが、描写ですと東北地方(「遠野物語」の舞台である岩手県がモデル)のどこかにあるようです。
その正体は「ツガイ」と呼ばれる超常の存在を知る者たちの隠れ里。
実際にツガイを使役できるツガイ使いはごく少数のようですが、村の大人たちは皆その秘密を知っています。
数百年周期で「夜と昼を別つ双子」あるいは「運命の双子」と呼ばれる存在を生み出しており、その双子こそがユルとアサ。
直近では400年前の関ヶ原、それ以前だと南北朝の時代などに現れ、その力を狙う者たちが争いを繰り広げてきました。
言い伝えでは、
「東の村で夜と昼が等しい日に生まれた男女の双子は、世のあらゆるものを強制的に解く事ができる『解』と、世のあらゆるものを強制的に閉じる事ができる『封』と呼ばれる力を手に入れる」
と伝わっていますが、何故”東村で生まれた”双子にそのような力が宿るのか明かされていません。
「黄泉のツガイ」東村のモデルは高取城
東村のモデルは荒川先生が奈良県にある高取城であると語っています。
高取城は岡山の備中松山城、岐阜の美濃岩村城に並ぶ日本三大山城の一つ。
戦国時代以前の野面積という、自然にある石をそのまま積み上げた石垣がある村で、南北朝時代に越智氏の支城として築城されました。
非常に堅固な要塞で、戦国時代には当時の大名たちにとって最大の敵であった一向一揆衆の侵攻をも跳ねのけています。
今は天守閣などは残っていませんが、CGによって再現された当時の高取城の姿を観光ガイドなどで見ることができます。
「黄泉のツガイ」東村の関係者
東村の関係者は大きく「村人」と下界に住む「番小者」に分けられます。
村人は「ヤマハ」と呼ばれる謎めいた老婆をトップに実際に東村で暮らしており、大人たちはツガイや村の秘密について知っていますが、子供の内は何も知らされずに育ちます。
秘密を守る為に村人たちは原則下界に下りることを許されていません。
ただ中には村の因習や暮らしが合わない者もいて、そうした者たちは下界に下りて東村の活動をサポートする「番小者」と呼ばれる協力者になることも。
番小者たちにはそれぞれ役割があり、ハナの「墓掘り」やヤマの「祈祷師」、「山賊」など二つ名で呼ばれることもあります。
彼らは必ずしも東村に忠実なわけではなく、デラのようにユルを守る為に東村に背く者もいれば、ユルを殺してその力を手に入れようとする「過激派」も存在しています。
「黄泉のツガイ」東村と影森家
元々東村の住人でしたが、村を出て下界で地位を築き、考え方の違いから決別したのが影森家。
下界でツガイ使いを集め、裏の社会で力を持った怖い一族です。
東村から逃げ出したアサを庇護しており、影森ジンなどはアサに非常に親身に接していますが、当主の影森ゴンゾウなど腹に一物抱えていそうな人間もいて、彼らもまたその真意が読み切れない一族。
東村とは明確に敵対しており、第一話では東村を特殊部隊と共に襲撃していますが、東村やユルたち双子に対するスタンスは一族内でも少し違いがあるようです。
「黄泉のツガイ」東村と西ノ村
東村と対を為す存在として登場したのが「西ノ村」。
その名称や、リーダーである御陵(みささぎ)の「今度は西が勝つ」という発言から、恐らく400年前に双子を巡って東村に敗れた一族の末裔と思われます。
ただその存在は東村関係者にもほとんど伝わっていないようで、デラやハナたち番小者、影森家の人間もほとんど彼らのことを認知していませんでした。
その目的はユルたち双子の力を手に入れること。
西ノ村陣営には与謝野イワンを始めとしてかなり強力なツガイ使いが揃っており、東村陣営以上に深く重い執念を抱えた一族と思われます。
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