「税金で買った本」角野光~図書館教育への情熱が溢れて暴走気味な元司書教諭・学校司書、選書会議と選書基準へのこだわり~

 今回はヤンマガ本誌で連載中の図書館お仕事コメディ「税金で買った本」から、図書館教育への情熱溢れる資料係チーフ「角野 光(かどの ひかり)」について解説します。

 角野さんは主人公の石平くんたちが働く図書館の女性職員であり、白井の直属の上司。

 司書教諭・学校司書勤務を経て現在の市図書館員となった経歴の持ち主で、図書館教育に並々ならぬ情熱を抱いています。

 作中では選書基準を巡り選書会議で揉めている角野さん。

 本記事ではそんな彼女のプロフィールや作中でのメインエピソード(何話に登場?)を中心に解説してまいります。

「税金で買った本」角野光のプロフィール

引用元:ずいの Twitter

基本プロフィール

 角野光(以下、角野さん)は主人公の石平くんたちが働く図書館の女性職員です。

 外見は四角い眼鏡と鋭い目つきが特徴のおカタイ雰囲気を漂わせた女性。

 詳しい年齢は不明ですが、小学生の子供がいる朝野さんと同級生ということから、恐らく30代半ばほどと推測されます。

 性格は真面目で責任感が強く、時に想いが行き過ぎて暴走してしまうタイプ。

 真面目過ぎることを除けば基本公平公正な人格者であり、厳しいながらも周囲から信頼されています。

 ちなみに児童図書係の朝野さんとは学生時代からの友人で、プライベートでは「アサちゃん」「ヒカリちゃん」と呼び合う関係です。

 キャラ名は童話作家の「角野栄子」と小説家の「角田光代」から。

資料係のチーフを務める正規職員

 角野さんは資料係のチーフを務める正規職員。

 白井今村さんの直属の上司にあたり、司書資格も保有しています。

 資料係は主に本にブッカーをかけて貸出できる状態にしたり、廃棄本や紛失本、寄贈本などの対応をしている裏方さん。

 筋肉で迷惑な利用者を威圧する白井や、気弱で問題を抱え込む今村さんが部下ですから、見た目以上に大変なポジションですよね。

 特に白井は筋肉が原因で間違った方向に自信をつけてしまった問題児。

 角野さん相手にも「選ぶ本が古臭い」など言葉を選ばずズケズケもの申しています。

 しかし角野さんはそんな白井の言葉を窘めつつも、特に怒ることなく受け入れており、互いに独特の信頼関係があることが見て取れます。

 白井本人も「角野さんを図書館員として信頼も尊敬もしている」と語っており、この二人は意外と相性が良いのかもしれませんね。


「税金で買った本」角野光と選書会議(VS梨原)

「良書主義・角野」VS「貸出至上主義・梨原」

 角野さんの初登場は21~23話の「マンガでわかる最高の会議」三部作。

 この回は選書会議において漫画の選書基準を巡って激論を繰り広げる二人の女性と、選書会議を軟着陸させようと四苦八苦する今村さんの奮闘を描いた内容となっています。

 そして選書会議で激論を繰り広げる一人が角野さん。

 角野さんは利用回数より社会的価値や有益さを基準に選ぶ「良書主義」で、きちんとした選書基準を定めたいと考えるタイプ。

 一方、相対する梨原さんは「貸出至上主義」。

 貸出傾向から感じた利用者のニーズを最優先に本を選び、選書基準を定めることに関しては自由に本が選べなくなると反発しています。

 どちらの言い分にも理があり、互いに認めてはいるものの感情的になってまとまらない二人の争いに、どう落としどころを与えるのか、という話ですね。

 会議の内容は実際に読んでいただくとして、とりあえず無事に選書会議を乗り切り、一人渾身のガッツポーズを決める今村さんは、思わず石平くんが涙ぐんでしまうほど可愛いかったです。

角野さんが選書基準に拘る理由

 角野さんが選書基準に拘るのにはキチンとした理由があります。

 そもそも作中で議論になっていたのは漫画の選書基準でしたが、角野さんは必ずしも漫画を図書館に入れたくないわけではありません。

 自分の考える「良書」もあくまで主観、漫画というだけで区別しては良書を見落とすと考えています。

 元々図書館は何人かで選書し、職員も入れ替わるもの。

 であれば、どんな本をどこからどこまで買うか、ものさしとなる選書基準を定め、水準を保つべきというのが角野さんの考えです。

 ただそうやってガチガチに決めて「ためになる」本ばかり買うのではなく、もうちょっと柔軟に「おもしろい」本も買って利用者のニーズに対応していこうというのが梨原さん。

 どっちが正しいって話じゃないんですが、だからこそ感情的になって揉めているわけです。


「税金で買った本」角野光は元学校図書館勤務

司書教諭 → 過労で退職 → 学校司書 → 市図書館員

 67~69話の「かいけつゾロリ」シリーズでは、角野さんの過去が語られています。

 実は角野さんは最初から市の図書館職員だったわけではなく、元々は中学校で「司書教諭」として働いていました。

 学生時代から学校図書館へ情熱を持ち、学校司書になるのが夢だったそうですが、学校司書は正規の枠がほとんどないため、司書教諭の道を目指した角野さん。

 彼女は在学中に「司書教諭」「教諭」「司書」の三つの資格を取り、卒業後は中学校に国語の教員兼司書教諭(※)として採用されました。

 教員業務の傍ら図書館業務に励んでいた角野さんですが、彼女と一緒に図書館を運営する「学校司書」は3校兼任のパート雇用。

 図書館は最低限の業務しかできていない状況で、それでも角野さんは何とか理想の図書館に近づけようと無理をし過ぎてしまいます。

 結局2年後ようやく書架が整ったタイミングで心身が限界を迎えて休職。

 そのまま司書教諭を退職、その後交流があった学校司書から誘われ、今度はパートで小学校の学校司書として働くことになります。

 その小学校は前任の学校司書によって環境が整えられており、児童に親しまれよく利用されていた、角野さんが思い描く理想の学校図書館でした。

 角野さんも非常に楽しく働いていましたが、ある時生徒から、かつて自分が働いていた中学校の図書館について聞かれ、途端に強い不安を覚えることになります。

 あの中学校の図書館は今どう運営されているだろう、再び放置され荒れていないだろうか、と。

 学校図書館の運用は働く人に左右され過ぎている、人が変わっても質が保たれる基準を作らなければならないと思い詰める角野さん。

 しかしそんな角野さんを、友人の朝野さんは「理想に固執するのは大人のすることじゃない」、今の考えのまま学校図書館で働けばまた倒れてしまうと窘めます。

 結局、角野さんは情熱を胸にしまい込み、学校司書を辞めて現在の市の職員(図書館員)として働き始めました。

 

(※)「司書教諭」は教員と司書両方の仕事をこなす職員で、「司書教諭」「教諭」両方の資格が必要なものの、12学級以上の学校は必ず置く義務があるため正規の枠が比較的多いポジション。

 対する「学校司書」は司書専任の職員で、資格については制度上の定めはなく採用する自治体裁量ですが、必ず置かなければならないわけではないため、大半は非正規。

石平くんを見てかつての情熱が暴走する

 市の図書館員となり、選書基準には相変わらず固執しまくっていたものの、それでも今まではある程度「大人の対応」が出来ていた角野さん。

 しかし彼女は最近また情熱が燃え上がり暴走気味、つい先日の選書会議でも児童図書係の小池さんを責めるような発言をしてしまいます。

 角野さんが暴走した背景にはヤンキー・石平くんの存在がありました。

 石平くんは公教育が取りこぼした子供。

 義務教育に馴染めず振り落とされてしまったものの、元は本が好きで学習意欲が知りたい気持ちがあったはずの子供です。

 彼のようにキラキラした目で本を見る子供を見て、義務教育・学校図書館が芽生えた意欲を上手く育てられず、どれだけとりこぼしてきたのかと、改めて責任を感じ、暴走してしまっていたのです。

 作中ではその想いを朝野さんと白井に吐き出したことで冷静さを取り戻す角野さん。

 暴走気味ではありましたが、その行動の裏には子供たちと教育に対する強い情熱があったのです。

【まとめ】「税金で買った本」キャラクター一覧



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