「ゴールデンカムイ」チカパシ~エノノカ・リュウと共に生きることを選んだ少年、谷垣源次郎との別れ、祖父の秘密~

 今回はヤングジャンプで連載中の大人気漫画「ゴールデンカムイ」から、谷垣から〇起の魂を受け継いだアホの子「チカパシ」について解説します。

 チカパシは家族を疱瘡で失った北海道アイヌの少年。

 作中では谷垣源次郎を慕ってインカラマッ、アイヌ犬のリュウと共に旅立ち、遠い樺太の地で自分の居場所、家族を手に入れました。

 本記事ではその名前の由来や谷垣たちとの旅路、新たな家族・エノノカを中心に語っていきたいと思います。

「ゴールデンカムイ」チカパシのプロフィール

基本プロフィール(外見、性格、誕生日、年齢、声優など)

 チカパシはアシリパと同じ、小樽のコタン(集落)出身の北海道アイヌの少年。

 外見は髪をひっつめてちょんまげのようにし、顔はいつも泥だらけで汚れ、やんちゃそうな雰囲気を漂わせています。

 性格は好奇心旺盛で、割と何も考えず「トカプ(おっぱい)」と叫ぶアホの子。

 ただし、いざという時は機転が利き、度胸も据わっている将来有望なアホの子です。

 家族を疱瘡で亡くして天涯孤独の身の上であり、コタンの子供たちとはあまり遊ばず、一人立ちを望んでか狩猟に興味を抱いていました。

 そんな中、作中ではコタンで療養するマタギ・谷垣源次郎と出会い、狩猟を通じて交友を深めていくことに。

 誕生日は8月8日、年齢は樺太でホホチリ(樺太アイヌの男の子が10歳ぐらいまで額に付ける飾り)を付けていることから、8~10歳程度と考えられます。

 声優は渡辺明乃さん。

名前の由来(意味)

 チカパシの名前は「チカプ(=鳥、陰茎の暗喩)」+「アシ(立つ)」を組み合わせたもので、作中では「陰茎を立てる」という意味が採用されています。

 これは元々、作者の野田サトル先生が「アイヌ史資料集」で「珍奇な名前」として取り上げられているものを目にとめ、採用した名前で、その本での和訳は「陰茎の怒発」。

 先生は思わず「いい名前だ」と呟き、ぜひ谷垣源次郎と引き合わせたいと、チカパシというキャラクターが誕生したそうです。

 つまりチカパシは名前から生まれたキャラクター。

 生まれながらに勃〇の後継者となることが決まっていたわけですね。


「ゴールデンカムイ」チカパシの人間関係(谷垣夫妻、祖父)

谷垣源次郎とインカラマッとの旅路

 狩猟をきっかけに谷垣を慕うようになったチカパシ。

 天涯孤独の身であるチカパシは、谷垣がアシリパを連れ戻す旅に出る際、インカラマッとともに谷垣についていくことを望み、彼の境遇を知る谷垣もそれを受け入れます。

 こうしてアシリパを追って旅立つことになった谷垣、インカラマッ、チカパシの三人。

 彼らは旅の中で数々のトラブルに見舞われながら絆を深めていき、互いに家族同様の愛情を持つようになります。

 ちなみにアホの子・チカパシは、旅の当初はインカラマッのトカプ(おっぱい)を触りたいと発言するなど無邪気な好奇心全開でしたが、ある夜その好奇心がたたって谷垣とインカラマッのオチウ(男女のまぐわい)を目撃してしまいます。

 そのあまりの迫力に、

「オチウ怖ぁい……」

 と泣いてしまうチカパシ。

 これもまた、彼が大人になるための一つの通過儀礼だったのでしょう。

後に判明した祖父・キムシプの存在

 天涯孤独であると言われていたチカパシですが、チカパシが杉元たちと別れた後、彼の祖父の存在が判明します。

 祖父の名はキムシプ。

 彼は物語の鍵を握る「アイヌ民族の金塊」が、いつ、どうやって集められ、どう使われたか、どこに行ったかを知る人物です。

 金塊を隠したとされていたウイルクも、結局はキムシプが知る情報を後追いして隠し場所を知ったに過ぎなかったんですね。

 キムシプ本人はチカパシの存在を知っていましたが、チカパシの近くに行けば金塊を狙う者たちによってチカパシに危害が加えられると考え、チカパシと共に暮らすことができなかったようです。

 キムシプは最終的にウイルクを含むアイヌの仲間割れに巻き込まれ、命を落としています。


「ゴールデンカムイ」チカパシとエノノカ、別れと一人立ち

樺太で出会った少女・エノノカ

 アシリパたちを追って樺太へ渡った杉元一行、そして彼らに同行していたチカパシは、その地でアイヌの少女・エノノカと出会いました。

 エノノカは祖父とともに暮らすチカパシと同い年ぐらいのしっかり者の少女で、杉元一行の旅に犬ぞりを貸して協力します。

 算盤が得意で、鯉登少尉とは犬ぞりのレンタル料の交渉もしていました(そして鯉登少尉から物凄く気に入られていた)。

 作中では父親の形見のホホチリをチカパシに渡すなど、旅の中で互いにチカパシと好意を深めて深めていきました。

 ちなみにエノノカとは「フレップ(=コケモノ)」の意味で、昔フレップをたくさん食べて吐いたことからついた名前だそうです。

 アイヌ民族の一部には赤子に魔除けとしてわざと汚い名前をつけ、成長してから子供の頃の出来事などにちなんで改名する風習もありますから、恐らくは彼女の名前もそうした類のものだったのでしょう。

樺太で自分の居場所を見つけたアイヌ犬リュウ

 また、樺太の地で自分の居場所を見つけたのがアイヌ犬(北海道犬)のリュウです。

 リュウは元々二瓶鉄造の飼い犬でしたが、彼の死後はアシリパのフチのコタンで保護され、後に二瓶の銃(谷垣が受け継いだ)の匂いを追って杉元らに合流、樺太までついてきています。

 忠義心の強い立派な猟犬ですが、強敵相手だと怯み、大事なところで逃げ出してしまうこともある愛すべき仲間(白石みたいな犬と評されていました)。

 そんなリュウですが、樺太でエノノカが飼う犬たちと犬ぞりを引くうちにその優秀さが認められ、先頭犬(リーダー)へと昇進します。

樺太でエノノカ・リュウと家族になる道を選び、谷垣たちと別れる

 樺太での目的を達した杉元一行は北海道へ戻ることになりますが、それはエノノカたちとの別れを意味しました。

 エノノカと共にいたいという気持ちに思い悩むチカパシ。

 そんな時、谷垣源次郎は涙を流しながらチカパシに道を示します。

「チカパシ……」
「お前はここに残って」
「自分の本当の家族をつくりなさい」

 その言葉を受けて、チカパシは谷垣たちと別れ、樺太でエノノカとともに生きることを決意したのです。

「ひとりで立つ……」
「これも〇起だね? 谷垣ニシパ」

「そうだ勃〇だ! チカパシ!」

 そして、谷垣から〇起の魂と二瓶の猟銃、リュウを贈られたチカパシはエノノカと手を取り、樺太の大地で生きていくことになりました。

 その後、歴史的な荒波にもまれることになるだろうチカパシたちですが、作者・野田サトル先生もきっと彼は幸せになれたと信じている、と語っており、その前途は決して暗いものではないようです。



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