今回は魔物食という異色のテーマを扱う人気作「ダンジョン飯」から、作中屈指の名エピソード「グリフィンのスープ」について解説します。
このグリフィンのスープとは、魔物食のスペシャリストであるセンシの過去ににまつわるエピソード。
センシの過去のトラウマと疑念。かつて食べた「グリフィンのスープ」に使われていたのはグリフィンではなく仲間の肉だったのでは、という「ウミガメのスープ」を示唆させる内容となっています。
本記事ではこのグリフィンのスープの正体やセンシの過去を中心に解説してまいります。
「ダンジョン飯」グリフィンとセンシの過去
センシの過去(48~49話)
「グリフィンのスープ」は原作49話。
48話「使い魔」でグリフィンに攫われたセンシを救出した一行は、自分たちがセンシの過去を何も知らないことに気づき、センシが迷宮で暮らすようになった理由を問いかけます。
若い頃のセンシはイズガンダという地方の採掘場で働いていました。
しかしある時採掘場でいさかいが起こり、センシは自分を拾ってくれたギリンら数名のドワーフ、ノームからなる鉱夫団と共に故郷を離れることになります。
ギリンたちは当時まだ公式には発見されていなかった島の迷宮を探り当て、その探索に挑みました。今から70年以上前のことです。
しかし彼らは興奮のあまり準備不足のまま迷宮に突入。
探索の途中でグリフィンと思しき大きな鳥の魔物に襲われ、仲間の一人が命を落とし、逃げ回っている内に迷宮の出口が分からなくなってしまいました。
仲間が倒したグリフィン肉のスープで生き延びるが……
辿り着いた迷宮内の小部屋を拠点に、食料と出口を探すギリン一行。
しかし探索のたびに仲間たちは命を落とし、生き残ったのはリーダーのギリン、センシ、ブリガンの三人。
ギリンは役に立たなくても若いセンシに優先的に食料を与えていましたが、ブリガンはそのことに批判的で、センシにもきつく当たっていました。
そしてある時、センシが飢えをしのぐため石を舐めているのを、彼が食料を隠していると誤解したブリガンがギリンと衝突。
二人は小部屋の外に出て話し合いを始めたのですが、センシの耳に聞こえてきたのは怒鳴り声と激しい物音、そして悲鳴。
長い静寂の後、帰ってきたのはギリン一人。
ギリンは「グリフィンに襲われた。グリフィンは殺したがブリガンは殺された」と語り、外で解体してきたグリフィンの肉を使ってスープを作り、センシに与えました。
そのスープによって命を長らえたセンシ。
それを見届けたギリンは用を足すと言って外に出て行き、そしてそのまま姿を消してしまいました。
その後、一人になったセンシはオークたちの集落に辿り着き、何とか地上に戻ることに成功します。
しかしセンシの胸にはずっと一つの疑念が渦巻いていました。
あの時食べたスープの肉は、本当にグリフィンの肉だったのか?
「ダンジョン飯」におけるグリフィン
ファンタジー作品によって微妙にグリフィンという魔物には差異が存在します。
センシが食べたグリフィン肉の正体に触れる前に、ここでは「ダンジョン飯」世界におけるグリフィンと、その近縁種であるヒポグリフについて解説します。
グリフィン
グリフィンは獅子の下半身と巨大な翼を有する大型の魔物。
その大きさは180~220cm(尻から胸)。
俊敏性と強靭さを兼ね備えた強力な魔物で、飛翔速度と視力に優れており、空中で狙われたら太刀打ちするのは至難の業。
作中ではセンシがなすすべもなく攫われていました。
馬肉が好物で、しばしば人里を襲っては馬を攫うため、人々から迷惑がられています。
近縁種:ヒポグリフ
ダンジョン飯世界にはヒポグリフという馬とグリフィンの近縁種がいます。
見た目、特に上半身はグリフィンに非常によく似ており、違いは下半身が馬であること。
その大きさは160~210cm(尻から胸)。
さほど狂暴ではないものの、後ろ脚には硬い蹄を持ち、強烈な蹴りはくらうと致命傷になります。
ヒポグリフもグリフィン同様、馬を好みますが、グリフィンと違い捕食対象ではなく交尾の対象として。
一般的なファンタジーでは、グリフィンが雌馬と交尾して生まれるのがヒポグリフだとされていますが、ダンジョン飯世界でグリフィンとヒポグリフにそうした関連があるかは分かっていません。
「ダンジョン飯」グリフィンのスープの正体は?
ライオスの提案でグリフィン肉を食べてみる
辛い過去を仲間たちに語ったセンシは、あの時食べたスープが本当はグリフィンではなく仲間の肉を使っていたのではないかという疑念がトラウマとなり、魔物食を食べる度、そのことが頭をよぎってきたことを告白します。
そんなセンシに対し、ライオスはいつも通りの無神経さを発揮し、そこにグリフィンの肉があるから食べて確かめてみるかと提案。
マルシル、チルチャック、イヅツミは当然ドン引きして非難しますが、センシはそれに応諾。
覚悟を決めてグリフィンのスープを作り、それを口にします。
しかしその味は、かつて食べたスープのそれとは全く異なっており、センシはやはりあの時食べた肉は仲間のものだったのだと絶望するのでした。
かつて食べた肉の正体は?
それでも自分を救ってくれたギリンの想いを背負って生きていくのだと覚悟を決めるセンシ。
しかしライオスはそんなセンシに、ライオスは昔センシが食べたのはグリフィンではなくヒポグリフだったに違いないと、大胆な推理を披露します。
ライオスはセンシの過去話に出てきた魔物の行動から、どうもそれはグリフィンらしくなく、恐らくヒポグリフだったのだろうと推測。
そして近くにあった、生き物を近縁種に変える茸「チェンジリング」を使ってグリフィンの肉をヒポグリフの肉へと変化させ、その肉でヒポグリフのスープを再現します。
恐る恐るセンシが口にしたそのスープは、当時ギリンが与えてくれたそれと同じ味。
「ずっとこのスープをもう一度飲みたかった」
過去のわだかまりから解放されたセンシはそう言って涙を流しました。
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