今回は「週刊少年サンデー」で連載中の大人気ファンタジー「葬送のフリーレン」から、最後にして最強の七崩賢「黄金郷のマハト」について解説します。
黄金郷のマハトとは魔王直属の幹部「七崩賢」の一角であり、その中でも最強と呼ばれた大魔族。
「黄金郷」とは万物を黄金に変える彼の魔法からつけられた異名です。
人類との共存を望む変わり者で、勇者ヒンメル達とは戦うことなく現代まで生き延びていた七崩賢最後の一人。
本記事ではマハトの強さや過去、彼が共存を望みながら人を殺し続ける理由などを中心に解説してまいります。
「葬送のフリーレン」マハトのプロフィール
基本プロフィール
黄金郷のマハトは魔王直属の幹部「七崩賢」の一角であり、その中でも最強と呼ばれた大魔族。
万物を黄金に変える魔法を使うことから「黄金郷」の異名をつけられました。
外見は長い赤髪と太い二本角が特徴的な優美な雰囲気の男性。
魔族としては社会性が高く、物腰柔らかで理知的ですが、本質はやはり魔族であり、その精神構造は人類とは相容れないものとなっています(詳細は後述)。
「断頭台のアウラ」と同様に魔王の死後約80年が経過した現代まで生存。
彼が50年前に黄金郷へ変えた城塞都市ヴァイゼと共に、大陸魔法協会の大結界の中で封印されていました。
人類との共存を望む穏健派の魔族?
マハトは人類との共存を望む穏健派の魔族です。
過去のある出来事が切っ掛けで人類に興味と好意を抱き、人類を理解し、共存したいと考えています。
しかし一方で他の魔族と同様、人を殺し食らうことに何の抵抗感もありません。
魔族にとって「人を殺すこと」は人間の三代欲求と同様に至極当然のことであり、そこに悪意や罪悪感などが介在する余地はないのです。
あまり好戦的ではなく、積極的に戦おうとはしませんが、それは人を殺したくないからではなく、マハトが強すぎて戦いに興味を持てないから。
必要と感じれば見せしめのように人を串刺しにして黄金に変えたり、人間同士殺し合わせたりといった、残酷な行為も平気で行っていました。
マハト(=魔族)が人類に向ける好意とは、言い換えれば人間が虫や玩具に向けるようなものだったのでしょうね。
ちなみに魔族への仲間意識や魔王軍への帰属意識も薄く、勇者ヒンメルらの時代は隠れ潜み、勇者一行と争うことはなかったようです。
「葬送のフリーレン」マハトの強さ
マハトは「七崩賢」最強の存在で、作中でも屈指の力を持つ大魔族です。
その実力は魔法使いフリーレンが600年前手も足も出ず敗北し、今なお勝てるイメージが全く沸かないと匙を投げるほど。
彼の最大の武器は「黄金郷」の異名の由来でもある固有魔法。
万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)
その名の通り万物を黄金に変えてしまう魔法。
人類ではこの魔法を知覚も解析も出来ず、僧侶が使う「女神の魔法」であっても元に戻すことができないとされている。
使用にあたっては何の条件も制約もなく、すさまじい速度で広範囲に効果を及ぼすため、通常の手段では回避も防御も不可能。
なお、一度黄金化したものは決して壊れず、加工もできず、マハトが死んだとしても黄金のまま残り続ける。
普通の手段では防御も回避も回復も不可能なクソチート魔法です。
唯一これを防御可能なのは、ゼーリエが使う「呪い返しの魔法(ミステイルジーラ)」。
魔法の原理を理解できずとも、「呪い」と認識した全てを跳ね返す神代の魔法だけです。
なお、マハトは黄金にしたものを元に戻すことができますが、魔法は理解できないものは実現できないため、元に戻すには対象を正しく理解している必要があります。
そのため、人間だけはマハトであっても元に戻すことができません。
また、マハトは「万物を黄金に変える魔法」以外に、人類が使う魔法や「人を殺す魔法(ゾルトラーク)」なども習得しており、これらに関しても並の人類よりはるかに上手く扱うことができます。
最強の七崩賢の名に恥じぬ化け物ですね。
唯一の隙と言えば、マハトにとって人類が使う魔法はまだ新しい魔法なので、反射で無意識に防御できるほど慣れていないということぐらい。
ほんの誤差と呼べるレベルの遅れが生じることだけです。
彼を真っ向から撃破できる存在と言えば、魔王と神代から生きる大魔法使いゼーリエ、そして七崩賢の中でもマハトと相性最悪と言われる「奇跡のグラオザーム」ぐらいでしょう。
「葬送のフリーレン」マハトの過去(悪意・罪悪感)
マハトが人類との共存を望むようになった切っ掛けは、ほんの些細なことでした。
いつものように街を滅ぼし、人を虐殺していた時、ある神父が「悪意」や「罪悪感」といった言葉をまくしたて、突然黙り込みます。
「そうか……」
「わからないのか」
「なんということだ」
「可哀想に……」
神父を殺した後、マハトはふと疑問を覚えます。
自分は”それ”を言葉としては知っていても理解できない。
「恐怖」「悲しみ」「怒り」「殺意」これらは理解できる。
だが「悪意」とは「罪悪感」とは?
自分の知らない感情、そしてそれを持つ人類を知りたいと思ったマハトは、手始めに目に付いた子供たちを生き残った方を見逃すと言って殺し合わせます。
相手を理解したい。
この感情をマハトは知っていました。
これは好意。
マハトは人類を好きになりました。
「葬送のフリーレン」マハトと城塞都市ヴァイゼ
それから多くの人を殺し合わせ、人類を研究しているという変わり者の魔族・ソリテールにも会いに行ったマハトですが、彼はずっと「悪意」や「罪悪感」を理解できずにいました。
そこで彼は考えます。
「悪意」や「罪悪感」を抱くには、まず殺す相手を良く理解し、親しくなる必要がある、と。
そんな時、マハトが出会ったのが城塞都市ヴァイゼの領主・グリュックでした。
当時のヴァイゼは貴族たちが権力闘争に明け暮れ、上層部は私利私欲にはしる悪党だらけ。
彼らを一掃したいグリュックは、マハトに「悪意」を教えてやる代わり、自分に手を貸せと取引を持ち掛けます。
「親しい人間」を作ろうと考えていたマハトはグリュックの申し出に応じ、彼に仕えることを決めます。
その後、マハトの力でヴァイゼに蔓延る悪党どもを一掃したグリュック。
彼は魔族であるマハトを表舞台に立たせ、良き臣下として取り立て、ヴァイゼを発展させます。
この時、後に一級魔法使いとなるデンケンはマハトの弟子となり、彼から魔法を学びました。
街の住民たちからも慕われていくマハトでしたが、当然魔族である彼を危険視する者も存在します。
彼らは心を操る魔道具「支配の石環」を用意し、マハトに「ヴァイゼの民に仕え」「ヴァイゼの民に悪意を持った行為をしてはならない」という制約をかけようとしました。
マハトはそれを笑って受け入れますが、彼が「悪意」を理解できないことを知る者達からすればただの茶番。
マハトはそれまでと変わらずグリュックに仕えていきます。
そしてグリュックに老いが見え始めたある日、マハトはヴァイゼを黄金郷へと変え、それまで積み上げた全てをぶち壊すことを決めます。
そうすることで「悪意」「罪悪感」を理解できる気がする、と。
「楽しかったよ、マハト」
「ええ。私もです」
「グリュック様」
予期していたその結末を笑って受け入れる主従。
全てを黄金に変えたマハト。
しかし彼は結局、何の感情も理解することは出来ませんでした。
その後、マハトは彼を危険視したゼーリエたち大陸魔法協会の大結界により城塞都市ヴァイゼごと封印されることになります。
「葬送のフリーレン」マハトの最期(死亡)
マハトがヴァイゼに封印されて50年後、彼の前にかつての弟子デンケンと、フリーレン一行が現れます。
デンケンは故郷をマハトから取り戻したいと考え、フリーレンたちはそんなデンケンに協力していました。
故郷を取り戻すためには、ただマハトを倒すだけではなく、マハトの「万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)」を解除する方法を見つけなくてはなりません。
無名の大魔族ソリテールの乱入もあり、一度はマハトの魔法で黄金に変えられてしまう一行。
しかしマハトの記憶を解析したフリーレンは、600年前にマハトに右腕を黄金に変えられた経験をもとにマハトの魔法を解析、黄金化を解除することに成功します。
ソリテールの相手をフリーレンに任せ、かつての師であるマハトに一騎打ちを挑むデンケン。
かつて魔法を学んだ時に盗んだマハトの予備動作、人類の魔法の歴史、それらすべてをフル活用してデンケンはマハトと渡り合います。
その奮闘は強すぎて戦いに興味を持てなかったマハトが「楽しい」と感じたほど。
しかしやはり基本的なスペックの差が現れ、デンケンはマハトの一撃を受け、膝をついてしまいます。
それでも諦めようとしないデンケン。
その時、ソリテールと戦っていたフリーレンが黄金郷の呪いを解除し、マハトはそれに気を取られます。
その一瞬の隙に、デンケンは切り札であった高圧縮のゾルトラークを放ちマハトに致命傷を負わせます。
「本当の切り札は」
「勝てると確信した時に使うもの」
「かつてお前が教えてくれたことだ」
既に自分が助からないと理解していながら、その場から逃げ出すマハト。
自分でも理解できない行動に出たマハトが向かった先は、かつての主グリュックの下でした。
黄金化が解けたグリュックと最期の語らいをするマハト。
マハトがもう助からないと悟ったグリュックは、現れたデンケンにマハトを楽にしてやってくれと頼みます。
「悪友(とも)よ」
「楽しかったよ」
「本当に楽しかったんだ」
最後まで「悪」を「人類」をできないままだったマハト。
彼は悪友の弔いの言葉によって送られていきました。
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