今回は山口つばさ先生が「アフタヌーン」で連載中の青春アートストーリー「ブルーピリオド」から、主人公「矢口 八虎(やぐち やとら)」について解説します。
矢口八虎はDQNそのものの見た目ながら、成績も人当たりも良いインテリヤンキー。
「ブルーピリオド」はそんな八虎が突如アートの魅力に目覚め、東京藝術大学入学を目指す物語です(現在は入学後の大学編が描かれています)。
見た目と違ってピュアで生真面目、心優しく涙もろい八虎。
本記事ではそんな彼のプロフィールや作中での活躍と成長、名言を中心にその魅力を語ってまいります。
「ブルーピリオド」矢口八虎のプロフィール
基本プロフィール(誕生日、年齢、身長、声優など)
誕生日 | 7月5日 |
年齢 | 16歳(初登場時) |
身長 | 173cm |
所属 | 東京美術学院(予備校、高校名は不明) →東京藝術大学絵画科油画専攻(学生) |
声優 | 峯田大夢 |
矢口八虎は金髪ピアスのチャラそうなヤンキー少年。
見た目DQNで飲酒喫煙も嗜む不良でありながら、成績は良く(早慶なら楽勝)人当たりも良い世渡り上手な高校生として登場しました。
しかしある日、美術部の森先輩の絵を見、美術の授業で渋谷の景色を描いたことを切っ掛けに絵にドハマり。
実質倍率60倍とも200倍とも言われる最難関・東京藝術大学を目指して奮闘することになります。
ヤンキーっぽいのは見た目だけで、性格は基本的にピュアで優しく、真面目。
成績が良いのも天才肌というわけではなく、キチンとそこに労力と時間を割いているからこそ。
身体を動かすのは嫌いではありませんが、特別体力があるわけではなく陸上競技は苦手。
酒は平気ですがコーヒーを飲むと酔っぱらってしまう体質です。
高校時代は無趣味でしたが、大学1年の春休みにバイト先の子供に特撮ヒーロー「武装伝記マゲンダー」を勧められ、ドハマりしてしまうことになります。
登場人物との関係性
矢口八虎からみた主な登場人物への関係性は次の通りです。
<高校・美術部関係者>
鮎川龍二 → 悪友
森先輩(森まる) → 憧れの人
佐伯先生(佐伯昌子) → 恩師
<高校・ヤンキー仲間>
<予備校関係者>
高橋世田介 → 天才・憧れ
桑名マキ → 戦友
橋田悠 → 変わり者・博識
大葉先生(大葉真由) → 恩師
<藝大生徒>
村井八雲 → 変人だけど凄い
鉢呂健二 → 大人
柿ノ木坂桃代 → 元気で良い子
<藝大講師陣>
犬飼 → 副学長・怖い
盧生 → 厳ついけどドジ
猫屋敷あも → 頭脳派女性教授
槻木 → 話が分かりにくい
夢崎 → 猫屋敷の助手・面倒見が良い
櫻井 → 盧生の助手・几帳面
「ブルーピリオド」矢口八虎の藝大受験
森先輩の絵と佐伯先生の授業が切っ掛けで、現役での合格倍率は東大以上と言われる東京藝術大学受験を決めた八虎。
美術部でデッサンなど絵の基礎を学んだ後、東京美術学院(予備校)の冬期講習に参加します。
そこで出会った高橋世田介や桑名マキの才能に圧倒される八虎。
しかしそれでも闘志は失わず、高校3年生になってからは、美術部ではなく美大受験に特化した予備校で主に絵を学んでいくことになります。
けれど藝大受験は実力と才能に恵まれた者にとっても荊の道。
高橋世田介は予備校の絵を「受験絵画」と言って予備校を辞め、桑名マキはコンクールで1位を取りながら家族や周囲のプレッシャーに圧し潰されそうになっていました。
そんな厳しい環境下でも足りないものだらけの自分を補うため、身を削るように絵を描き続ける八虎。
試験を棄権した悪友・龍二のために試験直前に冬の海に行くはめになったり、試験日当日に体調不良で動けなくなったりと、ギリギリまでトラブルだらけです。
しかしそうした苦難を乗り越え、八虎は見事藝大に現役合格を果たしました。
(藝大を本命としていた高橋世田介は独学で合格、桑名マキは不合格)
「ブルーピリオド」矢口八虎の大学生活(1年目)
憧れの藝大に入学した八虎。
しかし彼の大学生活1年目は、想像していたそれとは程遠い苦く苦しいものでした。
受験のための絵ばかりを描いてきて、本当の意味で「作品」を作ったことのない八虎は、入学早々周囲の学生とのレベル差に圧倒されます。
絵が「上手い」「下手」とかそんなことを問題にしているのではなく、そもそも「作品」に対する意識そのものが違い過ぎる。
「自画像」がテーマの最初の課題では教授から講評を飛ばされ、八虎は何をどう作れば良いのか、どうして絵を描いているのか分からなくなってしまいました。
そんな時、浪人していた桑名マキと偶然再会し、彼女に励まされ気持ちを立て直した八虎。
続く課題や藝祭の神輿づくりなどを経て、少しずつ藝大に馴染んでいくことになります。
そして迎えた1年の進級製作。
この時、高橋世田介と猫屋敷教授が衝突したことが切っ掛けで、八虎も世田介と一時険悪な関係になっていました。
世田介はウサギの世話をする少女との会話が切っ掛けで自分がいかに未熟な人間かを自覚し、苦しんでいましたが、八虎の何気ない言葉に救われ、八虎との関係も修復。
二人はそれで良いのか迷いながらも自分の中にあるものを素直に絵にすることに決め、進級製作を提出。
見た者から賛否はあったもののそれらを受け入れ、藝大1年目を終えることになりました。
「ブルーピリオド」矢口八虎は天才か凡人か?
ファンの間でよく言われるのが、矢口八虎は天才か凡人かという議論。
作中において何度も八虎は「自分は特別じゃない」「凡人」「天才にはなれない」と自分のことを評しています。
対照的に作中で「天才」として描かれているのが高橋世田介。
八虎は世田介という天才に嫉妬し、憧れ、何とか食らいつこうと奮闘する、というのが物語の構図です。
しかしそもそも、高校2年から絵を描き始めて現役で藝大に入学できた時点で十分すぎるぐらい「天才」だろう、というのが多くのファンからの意見。
確かにそれはその通りです。
八虎は絵に関し決して要領の良い方ではありませんでしたが、短期間で誰にもまねできないほどの数の絵を妥協することなく描き上げ、藝大入学可能なレベルにまでその技術を高めています。
「努力」できることを「才能」と捉えるならば、間違いなく八虎は天才でしょう。
ただ八虎は「努力」はあくまで「努力」、「才能」ではないと捉えているため、自分を凡人と評しています。
作中でも似たような議論はありましたが、これは「努力」を「性質」と捉えるか、支払った「コスト」と捉えるかで「天才」か「凡人」か呼称が変わるということ。
結局のところそれは単なるラベルの違いに過ぎず、どちらであろうとさして重要なことではないのでしょうね。
「ブルーピリオド」矢口八虎の名言・名シーン
それでは最後に矢口八虎の作中での名言・名シーンをいくつか紹介してシメとさせていただきます。
「これは俺の感動じゃない」
サッカーの試合で仲間と盛り上がりながら、どこか冷めた感情を持つ八虎の言葉。
彼が絵を描き始める前に抱いていた葛藤です。
「だったら」
「天才と見分けがつかなく」
「なるまでやればいい」
予備校で世田介という天才と出会い、それでも闘志を失うことなく食らいつこうと決意した八虎。
他の人間は無意識に世田介を自分と切り離して賞賛していましたが、八虎だけが悔しいと思い、戦う意思を持ち続けていました。
「ひれ伏させたい」
「俺の絵で」
「全員殺す」
「そのためなら」
「なんでもする」
世田介に自分のような人間が絵を描くことを否定され、ショックを受けて泣きながら絵を描き続ける八虎。
この悔しさこそが、彼が藝大を受験する上で強い原動力となりました。
「好きなことをやるって」
「いつでも楽しいって」
「意味じゃないよ」
それでも上手くいかないことも多く、悔しさと苦しさに打ちのめされる夜。
周りは「好きなことやってるんだから」と安易に思ってしまいますが、楽しいだけのことなんてありませんよね。
そして迎えた藝大受験当日。
「同時に存在するんだよ」
「絶対受かりたいって」
「気持ちとさ」
「全員倒したいって」
「気持ちとさ」
「合格なんてどうでもいいから」
「この絵を描かせてくださいって」
「気持ちが」
「この世界の誰より」
「俺は」
「俺の絵に期待してる」
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